ご縁とは不思議なものだ
外出先から店に向かう途中、家内から電話が入った。
先日、ポスティングを行った地区からお客様がお越しだと。
どうやらアンティーク品をお持ちになっているようだった。
店に戻ると、高級車がその存在感と共にデンと座っていた。
家内から連絡のあったお客に違いない。
僕は緊張気味に店内に入った。
と、家内の笑い声が聞こえる。
お客の横顔には見覚えがあった。
その横顔がこちらを向いた。
僕が「あっ」と言うと
「覚えてくれてましたか」と、ニコニコなさっている。
以前、お越しになった時はおかしな店が出来たなあ、と思ったそうだが、
それもいつしか忘れてしまっていたと。
お客は今回のポスティングチラシを見て、
唐突に何点か持って行ってみるか、と思い立ったそうだ。
人の行動とはそんなものだ。
物事を決定づけるのは、80%以上が人の感情だ、と行動心理学の本で読んだ事がある。
僕はそれは強ち間違っていないと思う。
兎も角そのお客はそのようにしてやって来た。
お話が一段落した時、お客が「人が喜ぶ事をしなはれや」と。
そして、続けた。「何でもかんでも仕事に結びつけようと思うたらあかん。
見返りを求めずに人の為に一所懸命動くことや」
・・・何度、同じような事を聞いてきたか。
長い人生を乗り越えてきた方々の言う事だ。
純粋に信じればよいのだろうが、僕などはどうしても生活の為の日銭稼ぎを考えてしまう。
人間とは弱いものだ。
だけど、そんな事と葛藤しながらでも、ひたすら前向きに生きようとする人たちが僕は好きだ。
僕に出来る事があれば、何でも言っておくれと思う。
その前に、自分の地盤をしっかりせーよという情けない話もあるが・・・
お話の中で、お客は5年前まで、ある優良企業のトップに座した方だったという事が分かった。
企業トップに立つ方は、さぞかしビジネスライクなものの考え方をしているのだろうと思っていたが、
案外、人情もろくて家族思いでといった面もお持ちなのだと思った。
色々苦労もなさったようだが、今はのんびり生活だとか。
多分、何の不足もなしに過ごせる人生なんてないのだろう。
帰り際にお客が、「ポスティングチラシはまだ残っているか?」と言う。
「数百枚ある」と言うと、「散歩がてらに配るから持って帰る」と。
僕はよい町に店を持っているのだ、とつくづく思う。
数え切れないほど多くの人たちの助けを得て今日がある。
どんな形にしてもこの方々に恩返しをしたい。その日が来るまで頑張るぜ!