"Jsut be yourself!" to my dearests | さむの御帰宅日記

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ネットの海の枯れ珊瑚のあぶく



 去年の5月20日は大雨だった。
今日19日は春というよりは初夏の陽気で半袖をなでる外気も暖かい。明日は曇るらしい。

 あれから4年が経った。4年も経つのに思い出しているのは、すこしセンチメンタルに過ぎるのかもしれない。でも、この日の前後にしか思い出さないから、まあ年に一度くらいは思い出してもいいだろう。そう、天使の別荘カフェVillAngeである。

メイドたちの記憶20. 最後の晩餐、そして5月21日(月)へ

 過ぎた一年を思う。また京都に来てから、VillAngeに出会ってから、VillAngeがくれた多くの出会いから始まったかけがえのない、この数年を思う。

 あの日、あの場所にいてくれたメイドさんたちのうち、当時予想していたよりは多くの人々に会っている。そして閉館を知り、時間が量ではなく質となったゆえに、新たに友人となった御屋敷の先輩方、友人たちがいる。

 4年という時間を考える。一般的には中学生は高校生になり、大学生が就職してしまう時間だ。そう思うと、VillAngeでの時間は何か思春期や少年期のようなもの、または青春と呼ぶしかない特別な時間だった。

 きっともう会えない人々もいる。だからメイドさんたちは言わずもがな、旦那様お嬢様が、いま元気でいてくれたらよいなと思う。つつがなく健やかに、なべてこともない、日常を暮らしていてくれたらと心から願う。

 京都に来て8年目となった。

 流されるままに入った大学院での生活もいよいよ終わりが始まった。博士論文を提出せねばならない。そして、この博士論文を出版することで、VillAngeの名前を国会図書館(蔵書量国内1位)と京大図書館(蔵書量国内3位)に残すこと、それが、ぼくのVillAngeへの記念となる。国会図書館と京大図書館は、少なくとも日本が文明国家として残る以上は残り続けるだろう。

 だから、ぼくはこれを完遂しなくてはならない。たしかに多くの人々の記憶には残り続けるだろう。でも、それだけではなくて、ぼくができるせめてもの手向けとして公的記録として残したい。おそらく、それはぼくにしかできない。だから博士論文を提出しなくてはならない。

 VillAngeは、教会にも大学にも居場所を得られなかったぼくの居場所だった。大切な始まりの場所なのだ。VillAngeがなければ、emaidにもFunnyTearsにも接続できなかった。



 過去を回想して、そこに耽溺しているつもりはない。あれから多くの変化があったし、これからもきっと変化するだろう。それにもうemaidに来てからのほうが長くなってしまった。だからいまや中堅となった、うなぴ&ぐみちゃん世代に対しても大きな信頼を寄せている。

 同時にVillAnge以前からお給仕しておられるベテランのメイドさん方もいらっしゃる。皆さんの洗練された所作の中で唯一崩れるもの、笑顔を見るたびに、静かな強い安心を覚えている。

 だから、もうVillAngeは特別ではないのかもしれない。否、特別かどうかというよりは、それは静かに強く、優しく、ぼくの一部となっている。

 オタクのエモい回想といえば、それまでだ。しかし、意図しない所作が誰かの背中を押し、何気ない言葉が誰かを救う。世界はそんな小さな奇跡と優しさで溢れている。

 あれから4年たって、ぼくは25年前の夏、地元で祈ったことがすべて聞かれたことについて気づいた。そして、いま、ぼくには優しさと力のバランスが備わった。そのために、どうしても必要だったもの、じつはそれがVillAngeでありemaidでありFunnyTearsだった。

 もちろん御屋敷関係者にキリスト教の人なんて、ほとんどいないだろう。だから、それは皆が何気なく意図せずして、ぼくにくれた贈り物だったといえる。

 みながいてくれたから、御屋敷があったから、ぼくの今がある。だから、ぼくは出来ることをしなくてはならない。

 京都に来てからの半分近くを共有したVillAnge、そしてemaidとFunnyTearsを静かに思っている。4年前、あのころ何度も繰り返してきいた、わーすた「Just be yourself」を思い出す。

 どうか、あの日、あそこにいた一人一人が、Just be yourselfでありますように。きっとイヤなことがあったり落ち込んだりすることもあるでしょう。でも、どうか、楽しく過ごしていたことを思い出して、そこからもっと楽しく幸せになっていてください。

 あの日の後、4年間を共に過ごしてくれた現行emaidとFunnyTearsのメイドさん方、妖精さん方、御屋敷仲間にも心より感謝を申し述べます。皆さんがいなければ、いまのぼくはありません。

 可能な限り、今後とも場所と人を支えていきたいと思います。金は稼げばいいけれど、場所も人も返って来ない、かけがえのないものだからです。

 そして、けんたろうさん、本当にありがとう。こんなことを背負わせてしまって申し訳ないです。でも、本当にありがとう。いつか何かのかたちで返します。


VillAnge閉館4年目を記念して。

皆さんに、そして、これを読んでくれたあなたに神様の祝福がありますように。十年後、三十年後、過去になった今を笑顔で思い出せますように。

会員番号4548 さむ