ネーミング ホーカータイフーン | simonのブログ

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前の記事のホーカーつながりで・・・

 

少し前のお話しだが、秋晴れの一日 老母に付き添い大学病院へ。

 

どこの大病院の例にもれず大混雑。

 

特に今回は初診ということもあり、会計が終る時には5時間半!が過ぎていた。

 

 

この5時間半を過ごすのに本でも持ってくれば、と多少の後悔もあったが少し前に友人が送ってくれたこのニュースをネタにいろいろと調べて時間をつぶす。

 

先の大戦後初めてドイツ空軍が行っているアジア地域への大規模展開訓練「ラピッド・パシフィック2022」の一環で来日した。

 

今回の来日の眼玉が初お目見えのユーロファイター

 

富士山をバックに空自のF2とのランデブー

 

このユーロファイターとは英 独、伊、スペインの4ヶ国が共同開発した戦闘機である。

 

一般的に機体後方についている水平尾翼が前方についているカナード翼を備える機体

 

今回親善の意味を込めて合同訓練を行う国の国旗(日本、韓国、オーストラリア、シンガポール)が描かれた特殊カラーリング。  なかなか粋なことをやるもんだ。

 

もちろんこのユーロファイター自体でも書きたいことはあるのだが、今回はこの「ユーロファイター」というネーミングについてである。

 

この年寄りの記憶、認識では「ユーロファイター」ではなく「タイフーン」であったが今回の飛来の記事には「ユーロファイター」のみだ。

 

そこでこの病院の長待ち時間を使ってweb調査。

 

以下 wikiより抜粋

 

1998年には輸出市場向け名称として名付けられたタイフーン(Typhoon)が愛称となった。

ただしこの愛称は、第二次世界大戦において対ドイツ戦に活躍したイギリス空軍の戦闘爆撃機「ホーカー タイフーン」を想起させることから、ドイツでは採用されておらず、単にユーロファイターと呼ばれている。なおBAEシステムズ日本語公式ウェブサイトでは、ユーロファイター・タイフーンと表記されている

 

結果的に 一般的には「タイフーン」、イギリスメーカーの日本呼称は「ユーロファイター・タイフーン」そしてドイツは「ユーロファイター」と3種類の呼び方があるのであった。

 

それにしてもドイツが先の大戦で戦った英国機のタイフーン名を使わない、というのは個人的にも納得納得である。

 

ただこのwikiの記述にある「対ドイツ戦に活躍した」という部分についてあくまで個人的偏見での補足をしたい。

 

この大戦機 「タイフーン」というのはもちろん「ホーカー タイフーン」である。

 

 

ホーカー ハリケーンの後継と目されてて開発が開始された戦闘機であるが、この完成までが大難航。

 

機体設計も「沈頭鋲」という機体表面をフラットにする技法を日本が九試単戦(ジブリ風立ちぬで登場した機体)で採用され、初飛行したのがタイフーンの試作機が飛行する5年も前であることから日本がいかに(技術的に)進歩的であったかを物語るエピソードである。

 

この機体設計も酷かったのであるが、もう一つの難関はエンジンにあった。

当初は二種類のエンジンを搭載する機体として2種が開発された

ひとつはネピア社のセイバー H型24気筒(!)エンジンを搭載した「タイフーン」

 

水平対向12気筒エンジンを上下2段に組み合わせた!!もの

 

正面からみるとこんな配置  wikiより拝借

 

 

もう一つはロールスロイス(RR)社のヴァルチャー X型24気筒(!)エンジンを搭載した「トーネード」

 

コイツは水平対向ではなくV型12気筒エンジンを上下にくっつけたエンジン

 

正面から wikiより

 

どちらとも2000馬力越えの高出力(因みに我日本は940馬力の零戦で太平洋戦争突入!)

先に「日本は技術的に進歩的」と書いたが、基礎工業力は別物である。

日本はこのX型の半分の液冷V型12気筒エンジンすら完全にものにできなかったのだ。それを上下Wにつなぎ2000馬力越えを発生させるエンジンというのは技術的にもバケモノというにふさわしいエンジンであろう。

 

ちょっと脱線するが、「スカイクロラ」というSFアニメ映画に登場する「スカイリィ」という架空の航空機はこのX型エンジンを搭載しているのではと思っている。

 

 

閑話休題 m(_ _)m

 

結局のところX型RR ヴァルチャーエンジンを搭載したトーネードは性能不良で脱落し「タイフーン」が生き残った。

 

しかし なんとか生き残った「タイフーン」であったが機体、エンジンとも数々の不良が発生した。胴体の強度不足、方向不安定、エンジンにいたっては当初は10時間ごとの点検が必要であり(改良後でも25時間)なおかつエンジンからコックピットに漏れてくる一酸化炭素によりパイロットはエンジン始動後すぐに酸素マスクを着用しなければならなかった。

そして最初に軍に引き渡された142機中135機(95%!!)が機体あるいはエンジンの事故を発生させたという。

 

武装にいたっては防空戦闘機なのに20mm大口径機銃の開発遅れから始めは7.7mmの豆鉄砲を12挺も装備していた。 たとえは乱暴だがおもちゃの銃100挺でBB弾を撃たれても人は殺せない(?)ということだ。

 

迎撃機として開発されたのに、攻めてくる独FW190フォッケウルフとは高度6000m以上では勝負にならない、などと散々のデキなのだ。

 

佐貫亦男先生によると、翼の付け根で400mmもあるというスタイルから「600km/hを狙うには主翼が厚すぎ、まるで布団の上に座ったようだ」と評されてしまう。

 

 

そんなこんなで、もう駄作機といわれても仕方がないタイフーン。

 

だからと言ってロイヤル空軍もそのままにしておけず、苦肉の策として翼下にロケット弾を搭載して対地攻撃の任務に当たらせた。

 

 

当時のロケット弾の命中率などしれたものでwikiによれば4%ほどだったというが、爆発力、破壊力は強力で地上兵にとっては恐怖感を与えるには十二分であったことだろう。

 

 

見方によっては弱い者いじめに転向して名をあげたタイフーンであるが、駄作でも運用によっては効果的に使用できる、という好例でもある。

 

そんなタイフーンという名前を現ドイツ軍が使わない、というのはもちろんである。

もしドイツが勝っていたらわからないが、敗戦国である誇り高きドイツ民族にとってかつての敵国の機体名を使うという選択肢はないのだろう。

 

さて、振り返って我日本はどうであろうか?

 

敗戦後、自衛隊の主力戦闘機はアメリカ製を多く使用してきた。

F86F/Dセイバー、F104スターファイター、F4ファントム、F15イーグル 

 

航空自衛隊創設期には導入されていたF86、F104にはそれぞれ旭光、栄光という愛称がついていたが以降F4やF15というようにしか呼ばれていないようだ。

 

 

ファントムやイーグルという名前は先の大戦で使用されていないので、特段日本人には嫌なイメージはないだろうが、これがコルセアだったりしたら日本人として嫌な思いをする人も少なからずいるのではなかろうか?!

 

大戦末期というか敗戦間際、米空母から発艦し帝国空軍の弱体化を尻目に基地攻撃ばかりでなく、民間人相手に地上機銃掃射などをしたチャンスボート F4Uコルセア 

 

戦後20年がたつ1965年 開発された艦上攻撃機 コルセアⅡ

 

今のところ日本は空母をもたないのでこの手の機体の導入はないだろうが・・

 

そういう意味でやはり「駄作機ではあってもかつての敵国の呼称は意地でもつかわない」というドイツ人の心情はとても理解できる。

 

そこでふと頭をよぎった 空自に導入かが開始されたF35B

 

なんと愛称はライトニング LIGHTNING である。

 

ライトニングとなればもちろん頭に浮かぶのは P38 ロッキード ライトニングである!

 

あの山本五十六大将(死後元帥)の乗機一式陸攻をブーゲンビル島上空で撃墜(待ち伏せ暗殺)した機体である。

 

もともと飛行機自体に罪があるわけではなく、純粋にその国を代表する工業製品であるのだが戦争という人間の愚かさによって勇者になったり、悪者になったりするのはある意味かわいそうではある。

  が、しかし! 自衛隊のF35Bをライトニングとは呼ばないでほしい年寄りだ。