【私が手掛けた本】、ご紹介に際して
私が手がけた本をご紹介するコーナーです。
企画のポイントや狙いを、制作上のエピソードを交えてご紹介します。

私が手掛けた本(その1)

エンディングノート

私らしく駆け抜ける、ラストラン


B5判、88頁/定価1,680円/2013年1月1日発行

JPS出版局発行・太陽出版発売


「行列のできる法律相談所」に出演していた丸山和也弁護士(現参議院議員)とエンディングプロデューサ若尾裕之氏の共著です。


エンディングノート/JPS出版局

【企画以前の物語】

数年前「ハッピーエンディングノート」という本を出した若尾さんが訪ねて来た。

『エンディングノート』ブームに乗り、次の本を出したいのだ。


「ダメダメ、前の本は売れたけど、今では類書も多いですよ」

「どこで差別化するの? それに、若尾さんの知名度じゃ、ムリですよ」


数日後、「僕の役割は何ですか?」と、丸山弁護士。

「客寄せパンダです」

「失礼、でも先生の名前が欲しい。それと専門分野でご協力を」

「ハッキリ言いますねー。いや、分かりやすくていい」と、丸山先生ニッコリ。

【で、類書ぜんぶに目を通して、企画・制作】

出版記念パーティでの丸山弁護士のスピーチ。

「いやー、こんなに薄いと思わなかった」

「おまけに余白だらけ」

「それにしては、定価が高い」

「さらに共著者は、胡散臭い若尾さん」


200人以上集まった出版記念パーティは、爆笑の渦に巻き込まれた。

この本の特徴は、丸山弁護士に指摘された通りのことだ。


エンディングノートを買うお客さん、当然買うのは選び抜いた一冊だけ。

それも、長々と解説が読みたいわけじゃない。書き込みたいのだ。


ここまで考えれば、自ずと方針が決まる。

文章を徹底的に削り、余白を大きく取り、頁数も減らした。

幾度も書き込んでみては、書き込みやすいようにレイアウトを変えた。

逆に定価は類書より高めに付けた。

(「安かろう悪かろう」と思う人も多い。だから安いと売れない)


【その後】

「不思議だなー、なんでこんなに売れるの?」と、丸山先生。

「ボクの他の本より売れてるかもしれない……」


もちろん、エンディングノートブームが続いていたせいもある。

でも次々出る類書を見たとき、ひらめいた。

…… 説明が多すぎる ……

…… 読者は、自分のことを書きたいのだ ……


この本、発行後一か月で重版に持ち込んだ。

読者が何を望んでいるかが理解できれば、答は明白なのだ。



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出版屋、高石左京のブログ


半世紀、時計が止まった街


新宿歌舞伎町の片隅に、ゴールデン街がある。

昔は青線地帯(警察が売春に片目をつぶる地域)だった。

小さな飲み屋が軒を並べ、今も昭和そのものの街が連なっている。


戦後日本の芸術・文化は、ここから産声を上げた。

寺山修二さんなど演劇人、新藤兼人監督など映画人、

田辺茂一さんなど出版人、直木賞作家や俳優さんたち。


どの店にも、テレビや銀幕で見かける人たちが屯していた。

ちょっといかがわしくもあり、戦後を代表する人たちの溜まり場でもあり、

なぜか隣に著名人が座っていても、気にもならない不思議な空間。


駆け出しの出版人であった私には、

夢の世界が、まったりと広がっていた。

(「俺もいっぱしの大人なんだ」と、舞い上がってもいた)



そして、数十年後


ひょんなことで、私はゴールデン街の店の一日マスターをやっている。

毎週水曜日は、『○羅治(わらじと読む)』の一日マスターなのだ。


ゴールデン街にあしげく通った40年ほど前、

手当たり次第にハシゴするものだから、『○羅治』の記憶も鮮明でない。

いつも酔っ払っていたし、同じ流しの爺ちゃんが顔を出す。

客だってハシゴしてくるから、別の店でも同じ客に会う。


10数年前からだろうか、ゴールデン街は『○羅治』と決めたのは。

マスターやママが代替わりして、次々と店の雰囲気が変わったからだ。

それでも○羅治だけは、ピタリと時計が止まっていた。



一石二鳥の一日マスター


『○羅治』のマスターだったケンちゃんが亡くなって3年。

元々、映画監督でもあったケンちゃんは遊び人。

女を作って行方不明になるのは日常茶飯事。

だから名実ともに、この店はママの和子さんがやっていた。


「バカ亭主の両親の介護でしょ」

「ジイちゃんバアちゃんを送り出したと思ったら、今度は亭主が倒れてさ」

「その亭主をようやく送り出したら、今度は息子が寝たきりになってさ」

元は売れっ子芸者だったから、ママの和子さんも気丈だ。


「馬鹿な亭主に貢がされ、挙げ句の果てがこれだもの」

なんて言いながらも、後悔はしていないようだ。

「人さまに言っても信じてもらえないぐらい、いろいろ経験させてもらった」


 ↓

  

『一日ぐらい休みなよ。お母さんが倒れたら、息子はどうなるの?』

「それだけが心配でね。助かる命じゃないから、送り出すまではね」

「早く死んでくれないかなーって、ホントのこと思うこともあるよ」

 

  ↓


『週中の一日は、俺に任せなよ。いいよ無給で……』

『本作りの相談が多いんだ。その都度都心へ出なきゃなんない』

『週に一度は相談日に決めて、ここを使えばいいんだもの』


※そんな訳で、毎週水曜日は、ゴールデン街『○羅治』の店長です。



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