タレント6人の内、4人は2月27日に来日した。全員初めての来日でメロンはその一員だった。
他2人の来日は保護収容された4月12日の3週間ほど前の3月21日だった。
店の近くにタレントの住居としてアパートの二室を賃貸契約していたが、
後から入国した2人のうち一人はタイマー(来日2回目)だったが2年以上前に3ヶ月だけの滞在だったので
改めて日本の生活習慣などの理解と、又タレント同士のコミニュケーションも兼ね
しばらくの間6人一緒の共同生活とした。
アパートの掃除や調理、ゴミ出しなどはタレントの話し合いで当番表を作り毎日交代で
行っていた。
スケジュールを決めたもののやはりサボったり手抜きをする者もいる。
お互いに注意をしあって少しずつルールが習慣となっていくのだが、
このグループについてはルール違反が度重なり言い争いになる事が多かった。
当初一番の年長者だったメロンにリーダーとして皆のまとめ役をお願いしていたが
当の本人が一番だらしなかったようで他のタレントとの揉め事が絶えなかった。
タレントからの相談を受け,幾度か全体ミーティングの場でアドバイスやルールの再確認
等を話し合い、表向きには落ちついたように見えたが、その後も日常生活においてのメロンの協調性の無い言動や行いに
他のタレントとのわだかまりが消える事はなかった。後にメロン対他5人のタレントという構図が出来る
きっかけになった。
又、リーダーという立場も後から来日したタイマー(通称チコ)に譲る事となったが
その事が本人のプライドを傷つけたようでその後のママへ対する敵愾心にもつながっていった。
ライトハウスでは他店との差別化を図るため、タレントによるショータイムを毎晩2~3回行っていた。
このブログを遡ってもらえば分かる様に定期的にショータイムのオリジナル映像をアップしていた。
おおむねお客さんにも評判は良く、付加価値としての役割は充分に果たしていたと思う。
しかし、メロングループ4人でのショータイムは来日以来2週間以上行うことができなかった。
当店では来日の翌日にはダンスの出来栄えやフォーメーションをチェックするのだが
この4人の出来は今までのワースト1.と言ってもいいぐらいひどかった。
2人のタレント(通称・オレンジとライム)はベーシックをほぼクリアーしていたが
メロンともう一人(通称・ベリー)は子供のお遊戯にも劣る内容だった。
本人たちに聞くとフィリピンでまともに練習をしていなかった事がわかった。
タレントはプロダンサー(もしくはシンガー)として興行ビザで申請、来日となるのだが
実は本物のプロのダンサーはほとんどいない。
彼女たちの職業はウエイトレスや日本でいうクラブやキャバクラのホステスだったり
モールの店員や主婦、家事手伝い、フリーターなど様々で、中には売春婦が紛れ込んでいたりもする。
そんな彼女たちを来日前の2週間から一ヶ月をかけ
合同練習をさせ、いっぱしのダンスグループとして日本へ送り込むわけである。
練習場所は現地プロダクションのスタジオなどで行われ、ダンスナンバー5~7曲の振り付けを
覚えさせるわけだが、限られた日数では当然無理も有り、そのままショータイムで披露するレベルには至っていない。
それでも何とか1~2曲は来日後の練習で形になるのだが、今回の4人のタレントについては
それ以前の問題で、にわか仕込みとは言え非常にレベルが低かった。
当店では常に質の高いショータイムを提供する事に力を注いできた。
現地プロダクションには再三その事を伝え、ダンス練習については充分な準備をしてもらえる様に
お願いもしてきた。
しかし内実はダンストレーナーとタレント自身への丸投げで、トレーナーの質や考え方、
タレントの自覚の仕方などでダンスパフォーマンスの出来に大きなレベルの違いが生じた。
今までは来日するグループの中に当店に何度か来ているいわゆるリクエストタレントを一人か2人
一緒にするのだが、今回はそれが出来なかった。
リクエストタレントがいればライトハウスでは実際にショータイムをしている事と更に質の高さを求められる事を
トレーナーや他のタレントに伝える事ができた。又、スタジオでの練習状況なども聞く事ができたし、画像なども送ってもらった。
今回の4人は折り悪く、全員が初めてのタレントだった。
4人そろっての練習は少なく、特にメロンの欠席が多かったという。
そしてもう一人のタレント ベリーは参加しても余り熱心ではなかったようだ。
後でママを憤慨させる事となったのだが、ベリー本人から聞いた事だが、日本から帰国した知り合いのタレントは自分の行った店では
お客さんのテーブルに着くだけでショータイムはほとんどしなかった。という話をしたそうである。
やりもしないショーのために練習に力が入らないのも当然である。
何とか1~2曲だけでもダンスナンバーを仕上げようという事で
しばらくの間午後4時から1時間から1時間30分ぐらいをめどに
自主練習をする事となった。始めの数日はフォーメーションの確認などでママが主導したが
その後は彼女たちに店の鍵を預け、本人たちに任せる事とした。店のオープンは午後7時からだったので
練習後には一旦アパートに戻っていた。
新聞記事には「県警などの発表によると、不法に拘束し、昼過ぎから未明まで無理やり10時間もの接客業務などをさせ、
一日の給料は1,000円程度しか与えていなかった。」とある。
店の営業時間は午後7時から深夜1時迄で、お客さんの入り具合で閉店時間は30分ほど前後する。
長年来店されているお客さんには周知の事実である。
10時間以上も労働をさせた覚えはないし、接客業務を無理強いした事もない。
前回でも触れたがタレントは接客業務を目的に来日するし、店側もホステス要員として
招聘している。当店ではある程度決められた時間にショータイムを行っていたが、
その間はホステスとして従事させていた。
店によっては接客業務だけでほとんどショータイムの無い店も有る。
ショータイムの為だけに毎月高い招聘料を払って、収支が合うはずもない。
タレントのいる店に飲みに行けば普通に接客をしている事は一目瞭然の事である。
プロダクションも百も承知の上で、知らないふりをしているだけである。
又、一日1,000円程度の給料と言うのも有り得ない。
そもそも店舗側はタレントに給料を直接払う事は無い。
これは現にタレントを招聘している店舗やプロダクション関係者にはすぐ分かる話だろう。
店は直接タレントを雇う事は出来ない。
店舗側はタレント招聘業務の出来る資格の有る日本のプロダクションに依頼をしなければならない。
その際、店舗は日本プロダクションと手数料(請負料)の契約をするのだが、
タレント一人に付きひと月30万±5万ぐらいである。
その中から日本プロダクションは契約しているフィリピンのタレント所属先プロダクションへ
決められた取引代金を送金する。
タレントへの給料は原則、所属しているプロダクションから支給される。
(これらの仕組みや請負料の金額、内訳などは後で詳しく説明する。)
自主練習を始めて一週間を過ぎてもなかなか進展がない。
途中、練習時間に見にいくとその度に今は休憩時間だという。
まともに練習をしていないのである。
ショータイムは4人の息の合ったダンスフォーメーションで出来上がるので
4人一緒に練習しなければ意味がない。
真面目に取り組んでいたのはオレンジとライムの2人だが、
4人そろってのフォーメーション練習はほんの10~15分だった。
・・続く
私と妻が釈放された翌日の記事