フィリピンにお世話になって20数年、
公私に渡っていろいろな人々に出会えた。
今も友人として連絡を取り合っている日本人、フィリピン人が数多くいる。
その一人に15年近くの付き合いになる I 君がいる。
現在マニラ在住で観光や仕事で訪れる日本人の
通訳やエスコートなどをして、本人いわく なんとか
食っているそうだ。
俺もフィリピンに行く時はよく世話になっている。
ホテルの手配から携帯の用意や、車の運転はもちろんの事、
同行者がいる時は彼らの夜の観光案内までしてくれる、
非常に調法な優れ者のお友達なのだ。
俺は到着から帰国まで移動はほとんど彼にお任せだ。
フィリピンでは特にマニラでは車の運転だけはしたくない。
慢性的なトラフィック(交通渋滞)とドライバーのマナーの
悪さには時々怒りさえ覚える。
道路事情も悪く、大通りはともかく市街地には
信号も少い。と言うかほとんど無い。
たまに有ってもほとんど無視だ。
その上、フィリピンの庶民の足とも言えるジプニー(乗合ジープ)や
トライシクル(屋根付きサイドカーが付いたオートバイ)が縦横無尽に
走り回っている。
ラッシュ時の十字路で渋滞に巻き込まれると
それはもう大変だ。
普段温和なフィリピン人も人が変わった様に
戦闘モードに切り替わる。
バンパーとバンパーの
せめぎ合いの戦いが 始まる。
アクセルとブレーキ、そしてハンドルを巧みに
コントロールして
いかにぶつけない様に切っ先を制するか。
制した者が前に出る事ができる。
負けた者は次のバンパーとの戦いが待っている。
譲り合いなんか有りえない。
その必死な形相での
つばぜり合いと
寸止めのブレーキングは
まるで、何かスポーツをしているかのように見える。
地の利もなく、まして方向音痴のこの俺が、マニラで車を
そんなわけで我が友ドライバー I 君に世話になるのだが、
それもいつもと言うわけにもいかず、
近場の買い物や用事には、タクシーやジプニーをよく使う。
ジプニーは利用するにはちょっとしたコツがいる。が、
慣れてしまえばなかなか便利で安い。
一乗り、距離にもよるが30円~40円で手を挙げれば
すぐ乗れる。
降りる時は車体を
コンコン叩いて
実際には運転手に日本語は
ほとんど通じないので
「おりまーす。」の後に
「パラ」~止めての意~と付け加える。
簡単な日本語の普及に、日々微力ながら
努めているのだが。?
後ろから乗り込んで左右に有る長座席に座るのだが
朝夕のラッシュ時はもちろん昼間でも座るどころか
すし詰め状態になる時が有る。
支払いは運転手に払うのだが、後ろから順繰り
乗客の手から手のコインリレーで運転手までたどり着く。
外の喧騒の中、何かホッとする場面でもある。
窓は吹き抜けで、後ろはオープンだ。
生暖かい風と排気ガスと騒音と、
いろんな物が混じり合った
匂いと共に
車内を通りぬけて行く。
目を閉じるとその情景と匂いまでもがよみがえる。
未熟だが力強い生命力と
存在感。
そして、何とも言えないなつかしい感覚に囚われる。
いつからこんなにフィリピンが好きになったんだろう。