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角川文庫 

椹野道流著 

最後の晩ごはん ゲン担ぎと鯛そうめん


 小説の内容に触れていくのでご了承下さい。誤字脱字等ありましたらごめんなさい。


 最後の晩ごはんシリーズ18作品目となる作品です。このシリーズは好きで読み続けている作品。今回の主役は、主人公の五十嵐海里と兄貴分である夏神留二のお話。「最後の晩ごはん」というタイトル通り料理が出てきます。美味しそうな料理が毎回登場します。最後には料理レシピも記載されています。この作品は五十嵐、夏神、五十嵐に付き添う付喪神であるロイドが登場します。このロイドのおかげでこの世に未練を残す幽霊が現れます。この最後の晩ごはんは、この幽霊にまつわる話。そして幽霊が消える時の最後のごはんがテーマとして出てきます。

 この作品に出てくる五十嵐にしても夏神にしても過去に大きな傷を抱えています。

 五十嵐は人気のある若手俳優として活躍するさなかとあるスキャンダルにより芸能界を引退せざる終えなかった過去を持っています。そんな彼がとある女優との出会いにより「朗読会」という形でスポットライトを浴びることになります。(この流れはシリーズを読んで頂けるとより楽しんで頂けると思います)タイトルの鯛そうめんは、そんな五十嵐の葛藤を誰よりもわかっていながらあえて何も言わず五十嵐を励ます為に夏神が主人公に作る料理です。

 今回は夏神の話が「最後の晩ごはん」に関わる話になります。夏神は今は定食屋を営む料理人。夏神は山での事故により友人と恋人を亡くしてしまいます。ただ唯一の生き残りとして彼の精神的な混迷のさなか放った発言により彼は周りからバッシングを受ける事になります。それがきっかけで大きな心の傷を持つことになります。そんな彼の前に幽霊の形で何十年ぶりかの時を経て亡くなった当時のままの姿で恋人が現れます。そんな彼女とのやり取りと夏神の過去にまつわる話。今まで夏神の過去に関する話は深く描かれていなかったので、ここで彼の話が読めたのはとても嬉しく読ませて頂きました。いつもの大人な彼の言動とは思えない甘々で未練がましい姿をみせます。そんな彼女との別れに作ったのが、付き合っている彼女に初めて作った思い出の一品。オープンサンドを料理人として彼は彼女との最後の食事として作ってみせます。彼女との思い出を消さないためにも。

 作品には話の鍵を握るロイドという五十嵐が神社の境内で拾ったメガネの付喪神が出てきます。五十嵐をご主人として付き添います。その結果として、五十嵐は元々霊感はあったようですが幽霊の存在を認識できるようになります。普段はメガネなのですが人間の姿にも。そして彼はかなり年代物のメガネゆえにその時代と現代とのギャップ。ロイドの五十嵐、夏神との関係とやり取り。そしてロイドの進化というか順応性には毎回笑ったり泣かされたりと。いい味を出すキャラクターです。

 毎回過去をたっぷりと引きずりながらも前を向く五十嵐、夏神の姿には笑ったり、泣いたり、励まされてます。そしてロイドの存在。二人を懸命に支えながらも時として現代の言葉への適応能力、現代の食や物事には子供じみた好奇心という反応を隠そうともしない姿のギャップには楽しませてもらっています。この三人の関係が今後どのように展開していくのかとても楽しみです。