御墓の前で、手を合わせ眼を閉じる
娑婆での報告を済ませ、心の不安をこっそり打ち明ける。
眼を開けて、綺麗になった石の上に、燃え尽きた線香の灰を
見つめていると、改めてこの世に生かされている事に感謝する。
どんなに哀しくても辛くても、此処にいたいと願う
永遠の命が欲しい、太古の昔から人が望んで止まないもの。
それが近い将来現実となって行く。
「IPS細胞」の開発によって、何でもありの世界がやって来る。
再生医療が目的ではあると研究者は言う。
素晴らしい事だと思う、否定するわけではないが
人間の欲ほど始末に負えないものはない訳で。
肉体をリセットしてくれる誘惑に、皆我慢出来るのだろうか
性交渉無しでも子供が作れる恐怖。
あんな幸せなひと時を感じない上に、自分の知らないところで
自分の遺伝子が増殖して行くなんて考えたくもない。
すでに、デザイナーズ出産なるものが存在する事が驚きだ。
両親となる遺伝子の、いい所どりで生れて来る、作られた人間。
容姿端麗で頭脳明晰で運動能力も長けているそんなヒーローは
学校の中で一人いればいい筈だ。
トカゲの尻尾は、切られても何度でも生えて来る。
この事実は周知であるが、実際は一回のみの限定らしい。
生まれ変わるチャンスは、一度きり
そう思って生きる事が、娑婆の歩き方だと思う。
