なるほど、金貸し業ってこういう仕事をするのか。闇金とか犯罪まがいのはネタとしてよくあるけど、サラ金が小説の中で主人公の仕事としてでてくるのを読むのは初めてだ。回収と貸出の両方にノルマがあって、常に追われてる。それでも主人公は頑張る。奥さんと息子のため。環境は最悪。上司は何にもしないで責任逃れ。会社の雰囲気はひたすら締め付けと根性論ばかり。うん、これはつらいですね。となれば。逃げようか。いや、これまでの人生、逃げるせいで中途半端というか、満足なんか何も得られない。それでも。逃げ出しちゃうことが癖になってる主人公。変われない。でもなんとしても奥さんと息子は幸せにしたいという強い意志はある。だから逃げる自分にほとほと呆れる。その描写がつらく、そしておもしろい。奥さんがいいじゃないか。旦那のことをよくわかってる。逃げさせてあげてる。こんな妻、普通いるか。でも、無理強いさせれば旦那はきっとおかしくなるてわかるんだろうな。結局ひものような生活に。毎日1,000円をもらい、家事をして、小説を書く。ちょっと文章が褒められたことがあるから程度。これって自叙伝的なのかな。奥さんのために書いた小説が文中に収められてる。美大生が卒業して、鉄工所で働き腕の良い溶接工になる。ボーナスをもらえた。自動洗濯機が変える。あのままアーティストを目指してたら奥さんと自分のうちに洗濯機はなかったろうなってあたりが、なんとも子供的発想にも感じるんだけど、しみじみとしていて、そこに誇りみたいのがあってなんとも清々しい。ちょっとぐでぐで部分が強い気もしたけど、初期の作品なのかな。おもしろかった。