24/02/25 香川宜子 アヴェ・マリアのヴァイオリン | ptureのブログ

徳島に住む女子中学生が手にしたクラシック・ヴァイオリン。アヴェ・マリアのヴァイオリンと呼ばれ、ユダヤ人である持ち主の、過酷な運命と音楽の物語。ドイツによるユダヤ人迫害の話なんだけど、考えてみれば物語としては教科書でみるくらいだったかも。あとは映画か。当然知識はあるけれどあらためて、人の狂気の恐ろしさを思いしった。ドイツ人ひとりひとりは決してそんなことはないのに、なぜあんなにも大勢の人間が狂ってしまったんだろう。強制収容所の職員も、麻痺してるのかすでに収容された人を人として見えないんだろうな。主人公、ハンナは祖父母も父母も姉と弟もすべて失う。彼女だけは音楽が守ってくれた。でもその事実だって彼女を苦しませる。ハンナと強制所内楽団は、収容者を死地に追い込むために奏でる。収容者の最後の絶叫が外部に響かないように奏でる。死して戻った捕虜を迎えざるを得ない陽気な曲を奏でる。絶望しかないじゃないか、そんなの。戦争、争いは絶対にだめと心に刻まれる。アウシュビッツとの対比として描かれる、徳島の坂東の強制収容所。俘虜を人として扱い、尊敬し、そして教えてもらったり、教えたりの交流が始まる。俘虜たちは言う。こここそが天国と。その地にいる日本人は梵天の民。きっとどこの誰でも、狂ってなかったら、そして捕虜だからと人を蔑んだりしなければ、みんな梵天の民になれるんじゃないかというのは期待しすぎか。今、眼の前に大きな争いが2つ。ウクライナ問題とガザ問題。確かにそれを考えると、戦地での尊厳なんざありえないんだろう。だとしたら、戦争に至らない日々こそ大事なんだなあと 考える。 

「文明では決して心は豊かにならない。文明では決して戦争はなくせない。しかし、文化は人の心を豊かにし、戦争をこの世からなくさせるものじゃないかな」文化は音楽に留まらない。パンを焼くこと。誠実に仕事に向かい合うこと。いろいろなこと。響く言葉だな。おもしろかった。