終末期ケアにおけるリハビリテーションスタッフの役割(シンポジウム発表資料) | Pretty TanakaのPowerful Teacher!

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例え僕の正体がわかっていても「おまえ○中だろ!」とか言ってはダメですよ!
「お前平田だろ!」とマイクで叫ぶ○波さんのような空気の読めない(KY)ことをしてはいけません(`ε´)!!
(ワカさん、ネーミングありがとうございました~)

裸王の部屋です、こんにちは(・∀・)!


平成21年2月に、神奈川県老人保健施設協会主催の六部会(介護・看護・リハ・栄養・相談・事務)合同シンポジウムが開催されました。テーマは「終末期ケアにおけるチームアプローチ」で、僕田中はリハビリテーション部会代表としてシンポジストとして参加してきました。
その時の反響などは、懇親会時に既に酔っていたので分からなかったのですが、最近になってあちこちから「あの内容は良かった」「もう一回聞きたい」といわれていると耳にするようになりました。本当に感謝です!
そこで内容が良かったか悪かったかは、僕自身では判断は付きませんが、せっかくまとめたものですので、この場を借りてその発表内容を紹介させていただきたいと思います。終末期リハビリテーションの一つの在り方として一例として考えていただければ幸いです。


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Pretty TanakaのPowerful Teacher!-シンポ1

リハビリテーション部会副部会長(当時)の田中です。老健港南あおぞらに勤務しております。よろしくお願いいたします。

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さて、介護老人保健施設で働く私たちは、終末期への関わりがあるのでしょうか?実際に看取りケアまで実施している施設も、最近は増えてきている、と聞いています。また、看取りまでは実施していなくても、病院へ搬送されるまでの間は、終末期の関わりをしている施設は多いのではないでしょうか?他にも、最近は老健から訪問リハを行っていて、そのときに終末期に関わっている、というリハスタッフも多いのではないでしょうか?

Pretty TanakaのPowerful Teacher!-シンポ3

今回、リハ部会総会時に、終末期に対して、このような意識調査をアンケートで行いました。55.3%の有効回答率でした。

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内容は、

① 皆様の施設では看取りを行っていますか?行っている(19.2%)、条件ありで行っている(15.4%)、行っていない(65.4%)でした。やはり、「行っていない」と回答した施設が圧倒的に多かったのですが、「行っていない」と答えた65.4%の施設の中で、急変したり退所先がなく、病院搬送のギリギリまでケアを行っている施設が26.9%ありました。「行っていない」と答えた施設の3分の1強ですね。施設として看取りは行わない方針としても、事情によってギリギリまで終末期に関わっている施設が多い、という現状がわかりました。
② 老健で看取りを実施する必要はあると思いますか?必要ある(38.5%)、状況によって必要ある(38.5%)、必要ない(19.2%)、わからない(3.8%)でした。多くの施設のリハスタッフは、老健の本来の役割を考えれば、看取りを行うのはおかしい、と思いながらも、現在の需要に応えていくためには、実施は必要と考えているようです。
③ 看取りにリハビリスタッフの参加は必要と思いますか?必要(73.1%)、条件ありで必要(15.4%)、必要なし(3.8%)、わからない・回答なし(7.7%)でした。老健であるということは関係なく、いざ終末期や看取りに関わるとすれば、リハビリスタッフの参加は必要と考えているようです。中には「最期の思い出作り」というのもありました。

今回のアンケートから、老健で看取りを行うことの是非はともかくとして、終末期の対応が現実には必要になってきており、リハスタッフもそれを感じている、ということがわかりました。

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結果アンケートをまとめますと、リハビリテーションの流れは急性期、回復期、維持期、終末期、と分けられますが、主に維持期に関わる老健リハビリスタッフは、終末期ケアや看取りを行うか?行わないか?の是非にかかわらず、常に終末期への対応を意識しておくことが大切だと思います。

Pretty TanakaのPowerful Teacher!-シンポ6

しかし終末期において、リハビリテーションが難しいと言われています。その理由として、まず、リハビリ養成校で終末期についてほとんど習わないこと。他には維持期と終末期の境界がはっきりわからないことです。最初は維持期リハ対象者として老健に入所してきても、状態が少しずつ悪くなり、気がついたら終末期に入っていた、ということが多いからだと思われます。最近は厚生労働省からいくつかの、高齢者の機能低下の流れが提示されているので、ご利用者様がこの図に表されているように脳卒中モデルなのか?廃用症候群モデルなのか?よく時系列で経過を調べ、予後予測していく必要があります。

Pretty TanakaのPowerful Teacher!-シンポ7

老健の良いところは、前年度の身体拘束についてもそうですが、すべてのことについて全職種が関わっていく、そしてチームケアが行いやすい、というところだと思います。

しかし、チームケアを行っていくためには注意しなくてはいけない点があります。それは施設の方針・理念に沿いながら、全職種の方向性が一致していること。しかも具体的な内容で決めていかないと、結果としてアプローチがばらばらになってしまい、結果ご利用者様の不利益になる可能性が高くなると思います。たとえば身体拘束では「ご利用者様のため」という方向性は一致していても「ご利用者様のために安全を優先して身体拘束する」と主張する人もいれば「ご利用者様のために身体拘束をせずに廃用症候群を起こさせないようにする」という場合もよくあります。

Pretty TanakaのPowerful Teacher!-シンポ8

終末期ケアにおいて、全職種が向かう方向とはどうしていけばよいのでしょうか?リハビリテーション医の大田仁史先生の言葉を借りますと「最期まで人間らしく、①人間として見苦しい姿でないこと、②苦しまさないでほしいこと、③人間らしく丁寧に扱ってほしいこと、が大切である」と言われています。たとえば大田先生がよく「最期にきれいに送り出すこともリハビリの大切な仕事である」と言われます。私は理学療法士になる前に葬儀屋でバイトをしていたことがあるのですが、拘縮があまりにもひどいと棺桶のふたが閉まりません。ではどうやってふたを閉めるのか?私がバイトをしていた十数年前は関節を折っていました。こういうことは、はたして人間らしいと言えるのでしょうか?
私たち老健のスタッフは職種を問わず、終末期に関わるスタッフはこの3点を目標にしていくことが大切なのではないでしょうか?

Pretty TanakaのPowerful Teacher!-シンポ9

では実際に終末期にリハビリテーションスタッフは何ができるのでしょうか?リハ医の大田先生は様々な書籍の中で、主に8つの実践を提示されています。


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もう少しまとめると私たちができることが見えてきます。少し具体的に説明します。

関節可動域の維持は清潔にも更衣にも、様々なケアで重要な要素になります。ちなみに今回スライド・動画に移られているご利用者さまには、すべて講演での使用許可は得ております。

Pretty TanakaのPowerful Teacher!-シンポ11

ポジショニングは終末期で動きにくい方には拘縮予防、褥そう予防として欠かせないものです。長く寝たきりになるとどんどん全身の筋緊張が更新して拘縮は進行します。今回は目的が違うので、詳しい手法の説明は割愛します。

↑最初は全身の緊張が高い

↑適切なポジショニングで緊張の低下がみられる


適切に行えばこれだけ緊張の低下が得られます。

Pretty TanakaのPowerful Teacher!-シンポ12

シーティングは全身の筋緊張を低下させるだけでなく、あとに出てきますが、嚥下リハなどにも影響させることができます。この写真ではあまりにも緊張が強く、ずり落ちや、両膝同士が強く当たってしまい、発赤ができてしまうといった状態でしたが、このように変化しました。このご利用者様の場合、使用しているのがタオルという是非はあるのですが、車いす調整はほとんど、バスタオルだけでこの写真のようになりました。

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嚥下リハはセラピストによるアプローチだけでなく、他職種と協力し合って援助していくことが必要だと思います。当施設ではSTはおりませんが、良い座位姿勢が嚥下にも影響しますので、PT・OTが積極的に関わっています。このスライドは介護職員向けに作成した、ご利用者様の特徴に合わせたセッティングの資料です。

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浮腫療法も関節可動域維持に重要ですし、浮腫のあるご利用者様は蜂窩織炎にもなりやすいので、積極的な対応が必要と考えます。終末期のご利用者様は、循環状態も低下していることが多い、と思われるので、浮腫療法により循環改善のお手伝いができればよいと思います。

また、排痰を促して換気を楽にすることで、息苦しさを軽減し、緩和ケアとしても呼吸療法は必要だと思います。



↑上3つは状態・状況に合わせて全介助の移乗方法を使い分ける


中にはどうしても、ベッド上安静臥床しなくてはならないご利用者様もいらっしゃるとは思いますが、できる限り離床して起こさないと、より重度化することはすでに多くの方々がご存じだと思います。ですからなるべくは残存機能活用を考えた介助法が望まれますが、終末期に既に入っており全介助でなくては離床が不可能なご利用者様のために、全介助のトランスファーなど、介助法をスタッフは可能にしておく必要があると思います。PTは得意ですので、どんどん相談してほしいと思います。

Pretty TanakaのPowerful Teacher!-シンポ16

リハビリスタッフも終末期において、ご利用者様のためにできることはたくさんあるということです。しかし、PT、OT、STが終末期に関われる知識・技術を持っている、ということは意外と知られていないことが多いと思います。せっかく老健は多くの職種でチームを組んでいくのですから、老健に勤務するPT、OT、STなどは、「うちのリハはこんなことができますよ!」というアピールをもっと行っていかないと、他職種から「あの人たちに何を頼んでいいのかわからない」ということになってしまい、良いチームケアができるとは思えません。そのため、今回この場を借りて、私たちができることを紹介させていただきました。

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リハビリテーションは全人間的復権と言われます。老健の役割として、看取りや終末期に関わることの是非はありますが、実際にその場面に関わることになった場合、これは私の私見も入ってしまいますが、「最期まで人間らしく」、「人間として見苦しくないように」、生活の質・QOLを維持するためには、じつは終末期に入ってから、その対応にあわててもすでに悲惨な状態になっていることが多いと思います。専門家として先を見据えた、予後を予測した対応を、維持期の段階から行っていくべきだと思います。また、そのための知識・技術は決して特別なものではなく、難しいこともほとんどない、とも考えています。

Pretty TanakaのPowerful Teacher!-シンポ18

ご静聴ありがとうございました。


質問への対応
Q:何か付け加えたいことはありますか?
A:実際に「終末期ケア」とテーマが決まった時に、「リハビリはこのテーマでは大変でしょう?」とか、専門学校の教員に聞いてみても「そのテーマでは大変だね」とか言われました。本当は他部会のように自分の施設の事例を挙げることもよいと思ったのですが、周囲ではあまりにもリハビリ職種が「終末期ケア」と無縁と思われている。チームアプローチとして考えたときに、これは非常に大きな問題で、リハビリスタッフの役割・能力が認識されていないということですから、今回はこの場を借りて「終末期ケアにおいてリハスタッフはこれだけのことができますよ!リハスタッフも積極的に参加しなさいよ!」ということを訴えさせていただきました。