急性心不全の病態 | リハビリに注ぐ少々のスパイス

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臨床での疑問をもとに、色々なことを書いています。
教育にも興味があるので、少しでも多くのセラピストのためになる記事を書きたいと思っています。

今日は急性心不全についてのお話。
急性心不全でのリハビリとなると、ポジショニングや拘縮予防など、できることは限られてきます。
回復に合わせて少しずつってところでしょう。
それは、言わずもかな生命の維持が第一優先とされるからです。

急性心不全は、心臓の機能的あるいは構造的異常が急激に発症し、その代償機転が十分でないときに招来される病態です。
心不全の代償機転としては

Frank-Starlingの機序

神経体液性因子の活性化

心筋リモデリング

があります。

これらの代償機転が間に合わないくら急速に、劇的に症状が進行するため起こる病態です。
血液がなくなるということは死を意味します。
だから、ヒトの身体ってこの体液の喪失には非常に敏感なんです。
血管系にはいたるところにそのセンサー(高圧系容量受容体)が存在します。
そして、心臓が弱ってきて血液を十分拍出できなくなると、このセンサーが感知します。

『やばい!!血液がなくなってきた!!』

そう。実際は血液はあるけど十分拍出できていない状態なのに、センサーは血液が足りないと勘違いします。
勘違いかどうかはわかりませんが、少なくても心臓とセンサーのコミュニケーション不足です。笑

そうすると、センサーは脳に指令を出します。

『やばいよ、血液が足りないよ!!このままじゃ死んじゃうからもっと血液を全身に送って!!』

まさに緊急事態宣言。
これを冷静に判断できない脳。
脳って実はすごく単純だから簡単に誤解するんですよね。
トリックアートなんかは脳の誤解を利用したもの。

脳は
『そりゃいかん!よし、心臓くんにもっと頑張るように言いなさい』
と指令を出してしまいます。

本当は頑張りたくても頑張れない心臓くん。
そこにさらなる追い討ちが・・・

まず、交感神経から鞭を打たれます。
心臓くんはMじゃないから、さらにのた打ち回ることに・・・笑
つまり、心収縮力、心拍数を増やし、末梢血管抵抗を高める作用が起こります。
末梢血管抵抗が増えるということは、後負荷が増えるということですね。
それは心臓くんには辛い。

もう1つ、液性因子としてRAA系の活性化とバソプレシンの分泌増加が起こります。
すると、体内に血液を溜め込んで循環血液量を維持しようとするわけです。
本当は血液はたくさんあるけど出せないだけなのに・・・

心臓にたくさん血液が帰ってこれば、本来ならたくさんの血液を送り出します。
これがFrank-Starlingの機序ですね。
しかし、心臓くんにはそんな元気はありません。
そもそも、元気がないから循環血液量が足りなくなったのに、センサーの誤認のおかげでえらい目にあっています。

すると、左心室に入りきらない血液が左心房にたまり、左心房に入りきらない血液が肺にたまる。
その結果、肺うっ血から肺水腫の状態になる。
肺性心ってやつですね。

こんな感じが心不全増悪のメカニズム。
代償機転が招いた災難とでも言うのでしょうか。
ただ単に左室駆出率が低いから心不全、というのは違いすぎますね。

あとは何がきっかけでこの症状が発症するのか。
もともと心機能低下があり、風邪を引いて熱が出た。
代謝が上がり酸素消費量が増え、交感神経活動が亢進するけど、それに見合った心拍出量を維持できない。
そこから心不全状態に陥ることもあるでしょう。

または、心筋梗塞によって心筋が壊死。
するとそこの筋肉は動かなくなるわけですから、他の部位が頑張ってカバーする。
でも、カバーしきれず心不全の状態に陥っていく。

など、理由や原因は様々でしょう。

ここまでで、もうお分かりですよね?
心臓くんはどんどん苦しめられていきます。
まさに悪循環、早くこの循環を断ち切らないと心臓くんはいつかはへばってしまいます。

他にももっと様々な因子が絡んでくるし、原因別に考える必要があります。
でも、この考え方は私としてはすごく大事だと思います。