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[粒子線治療][陽子線治療][菱川良夫] 名誉センター長のこばなし ~がんから学ぶこと~

一般社団法人 メディポリス医学研究所
メディポリス国際陽子線治療センター 名誉センター長
菱川良夫による講演からの小話。

先日、大学祭で講演をする機会をいただき、
2日間で計3回、各30分の時間でお話しさせていただきました。

色々な場所で講演していると、土地の違いや人の違いを感じられるようになります。
この違いを感じることが、私の楽しみの一つです。


学祭ということもあり、講演後にパネルディスカッションがあり、医師、芸人、事業家、政治家の人たちと意見を交換させていただきました。

その中で、私が言った意見が次です。

『格差社会は、お金だけではなく、元気や幸せにも格差があります。
 「元気になる」「幸せになる」のは自分自身の事です。
 自分で自分を変えましょう』


聴衆の中で、何人もが頷いているのが見えました。
同じように感じ、考えていた人がいたことを実感し、嬉しく思いました。


元気になるにも、幸せになるにも、まず自分がその気にならなければなれません。

これは「がん治療」ともよく似ています。
即ち、がんの治療を受ける前には、必ず治る気になることです。



今回の講演では、主に乳がんの自己検診についてお話ししました。


乳がんが早期がんとして発見されるまで、がんが出来てから約10年経っています。
そして、その早期がんを放っておくと約3年後には死に至ります。


それらを示す1枚のスライドを見せたところ、みなさん衝撃を受けた様子でした。


体の内側(臓器など体の深い部分)にできるがんは、なかなか自身で気づくことが難しく、発見が遅れがちです。
一方、乳がんのように体の外側(体の浅い部分)にできるがんは、気をつけていれば、早期の発見が可能です。


私たちには、生まれながらに心も体も自分自身で守ることができます。

女性の方は、月に1度の自己検診を奨励して下さい。

自分の体とゆっくり会話し、自分の体は自分で守りましょう。
先日、仙台で講演を行いました。

その日は朝の便で伊丹から仙台に行くことになっていました。

いつも通り6時前に起床して、飛行機の写真を撮る為に早めに飛行場に到着。
寒い日でしたが、飛行機の写真を撮っていると あっという間に時間が経ちます。

他の飛行機に夢中になって搭乗予定の飛行機に乗り遅れてはいけないと考え、
早めにチェックインを済ませ、ラウンジでゆっくりと過ごしていました。

...

「仙台行きが出発するので急いでくださ~い!」

大きな声のアナウンスで目を覚ましました。
不覚にも暖かいラウンジが心地よく、居眠りをしていたのです…。


えええ!!!

充電中の携帯をポケットに押し込み、コートとかばんを抱えて一目散に走りました。

「お近くの係りに声をかけて下さい」という放送もあったので、ラウンジのフロントの方に声をかけてからゲートへ走ったのですが、時既に遅し。

ドアは無情にも閉まっていました。


飛行機に遅れて乗ってくる人を見る度に「迷惑だなぁ…」と感じていたのですが、
今回は私がその「迷惑なやつ」になってしまいました。しかも、乗り遅れです。

ご迷惑をおかけした同便の方々には大変申し訳ないことをしました。


次の仙台行きの便を調べると、3時間後。
すぐさまその便を予約し、講演スケジュールを確認しました。

講演は2部構成で、私の講演は1部目でした。
その時間には全く間に合わないので、すぐに電話を入れました。

幸いにも2部にお話しされる先生が、1部開始前に仙台に到着するとのこと。
また、3時間後の便で行けばギリギリ2部目の講演時間にも間に合います。

その先生にお願いし、2部と1部を入れ替わってもらうことにしました。



日本中を飛び回るため、バス感覚で飛行機を利用していると、
「今日は飛行機に乗るんだ!」という、独特の緊張感が失われてしまいます。

緊張感がなくなり、出発案内の再確認もおろそかになり、このような結果を招いてしまいました。

複数日にわたって照射する陽子線治療を受けている患者さんの中には、何度も照射されているうちに治療に慣れ、治療台で寝てしまう方が現れます。

「慣れ→安心→気の緩み」今回の私もそれとよく似た状態でした。


これらの事件を受け、慣れても緊張感を忘れてはいけないことを再確認しました。

また、これからは飛行機に遅れて乗りこんで来る人を見ても
「間にあって良かったね」と思えるようになりそうです。優しくなれました。


本当に多くの方に迷惑をかけた一日でした。
迷惑をおかけした皆さん、申し訳ありませんでした。


翌日、鹿児島に帰る際、飛行場内ではチケットを何度も何度も確認し、無事に乗り込むことができました。

チケットの見直しを今後の習慣にします。
先日、京都で講演を行いました。
有難いことに100人をこえる方にお集まりいただき、会場はほぼ満席でした。

私の講演の後、2人の女性が 自身の経験されたがん治療やその後についてお話しされました。

2人の話、仕草に共通したのは

 1)がんと宣言された後に強いトラウマを持った
 2)そのトラウマに負けず、主治医の話をよく聞いた
 3)その後、説明に納得して前向きに治療を受けた
 4)治療後には、患者さん同士のサークル活動や自分の趣味を楽しんでいる
 5)2人の笑顔が素敵


「治療前の悪い生活習慣を治療中に見直して、治療後には変えるようにしましょう。」と、私は講演で常々言っています。
2人の話を聞いていると、自然にそのようにしているのだと感じました。


昨年、上海がんクラブを訪問した際、クラブに参加する条件は「ニコニコできること」だと教えられました。(がんクラブについては以下をご参照ください)

第116回 雑誌の表紙を飾りました
http://ameblo.jp/ptrc/entry-11636174497.html


2人を見ていても、このニコニコとした笑顔が印象的で、
がん治療の後には「笑顔」が大切であるということを再認識させられました。

がん治療体験者の明るい話を聞くことは、がん治療をこれから受けようとしている患者さんや治療中の患者さんにとって、良い影響を与えるような気がします。


日本人の3人に2人ががんを経験する時代です。

「がん治療は、多くの人が経験して乗り越えていくもの」だと捉え、明るく治療を受けていただきたいと思っています。
私は忘れ物をよくします。

以前は忘れた自分を責めていましたが、
最近では開きなおって、「忘れたことに意味があるのだ」と考えるようになりました。


例えば今回のポジティブオフ。

センター長という立場故、毎日様々な方より絶えずメールで報告を受けており、
そのメールはiPadで受信し、指示を必要とするものは、即座に対応することがほとんどです。

今回のポジティブオフでは、この必需品とも言えるiPadを忘れました。
早朝に指宿の家を出発し、徒歩10分ほど行ったバス停に着く直前に思い出しました。

往復してもギリギリ間に合いそうな時間の余裕があったので、以前の私なら慌てて取りに帰っていたはずです。

しかし、冒頭でも紹介したように
「忘れ物をしたということは、忘れたことに意味があるのだ」と考え、あえて取りに走ることはしませんでした。


そして、バスの中で今回忘れた「意味」を考えました。

このまま忘れないでiPadを旅先に持っていっていたら…
旅行中に何処かで忘れ、探し回ることになったのではないか。
忘れたことで、慣れない旅先でのトラブルが回避できそうだ。

そのように思うと「自宅に忘れてきてよかった…」と感謝の気持ちが溢れてきました。


仕事の指示はというと、同じく普段から持ち歩いているiPhoneで対応し、
お陰様で、iPhoneの新しい使い方も覚えることができました。

忘れ物をしたおかげです。


と、ここまで都合よくポジティブに考えている私ですが、
「忘れ物をしない」というのが理想であることは間違いありません。

皆さんは、メモや合言葉を利用して、忘れ物をしないようにしてください。
それでも忘れてしまった時は自分を責めないで、意味を見出してください。


一つの事象を取っても、見る角度によってネガティブに見えたりポジティブに見えたりします。

一度きりの人生。
生き方は皆さんの自由ですが、楽しく生きて下さい。
無理せず楽しく生きる人生で一日一日を楽しみましょう。

人生を楽しむ秘訣は、どんなことが起こってもポジティブにとらえること。
芸術の秋です。感性磨いて、ポジティブにとらえる心を身につけて下さい。
陽子線治療に特有の回転ガントリーを自由自在に使いこなすことで、粒子線治療 創出期では適応にならなかった難治がんの患者さんにも陽子線治療を安全に提供できるようになりました。

第127回 回転ガントリー
http://ameblo.jp/ptrc/entry-11739066718.html

第150回 回転ガントリー第4世代
http://ameblo.jp/ptrc/entry-11874072871.html



治療の難しいがんの1つに、「進行肺がん」があります。
そんな進行肺がんでも、今の時代では十分な抗がん剤治療を受ければ、治療効果が期待できます。

抗がん剤治療を1~2年頑張った後、回転ガントリーを利用した陽子線治療を受ける進行肺がんの患者さんも増えてきており、期待以上の効果を得て元気に過ごされている方も少なくありません。



「回転ガントリーを使った陽子線治療の効果を知り、是非治療をと考えています…」
90歳近い、進行肺がんの患者さんのご家族から相談がありました。

資料を見ると、確かに進行しており、
陽子線治療だけでの寛解は難しく、抗がん剤治療を先行して行う必要がありました。

しかしご本人は超高齢であり、抗がん剤治療に耐えられるだけの体力はありません。
そこで、ご家族には無理をしないで、自宅で生活していただくことを勧めました。


ご家族は私の講演を過去によく聞いて下さっていたので、すぐに意図を理解して下さいました。
そして、もともと一人住まいであった患者さんと一緒に生活することを選択されました。


「死」を意識することは、本人にとっても家族にとっても怖いものです。
しかし、生を受けた以上、死を避けることはできません。

高齢の患者さんの場合、無理をしないで、静かに側に居続けてくれることが一番嬉しいのではないでしょうか。

あなた方が生まれてきた時、ご両親は静かに側にいて笑いかけてくれたはずです。
今度は恩返しの番。最後の親孝行です。


僅かな延命のため、自然に抗い、意識のない患者さんに必要のない薬を投与したり、人工呼吸器等で手を加えたりすることは、患者さん本人に鞭を打つような行為です。

逆に無理をしなければ、患者さんを痛めつけません。



最近、このご家族からメールがきました。一部抜粋します。

「いつもお世話になり感謝しております。父が昨晩息を引き取りました。
先生が仰られたように最後は安らかに永眠しました。

最後を父と一緒に同じ時間を過ごせて本当に良かったです。
先生には父の画像のご診断から、看取り方のご教授をいただき、
父も苦しまずに長年暮らした自宅から旅立つことが出来ました。

本当にありがとうございました。心から感謝しております。」


合掌!