第819回「BLOODIEST 初回盤B DISC2紹介」③ | PSYCHO村上の全然新しくなゐ話

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発売より時間が経過したアルバム、シングル、DVD、楽曲等にスポットを当て、当時のアーティストを取り巻く環境や、時代背景、今だから見えてくる当時の様子などを交え、作品を再検証。

BLOODIEST/聖飢魔Ⅱ

・・・続き。

 

⑤PANDEMIC CARRIERS

再録大教典「悪魔NATIVITY~SONG OF THE SWORD~」(2009年)の通常盤のみに新曲として収録された1曲。

 

実は同作が発布された当時は、25周年再集結の発表はされておらず、直後に行われたデーモン閣下の「GIRL’S ROCK~Tiara~」に従うツアーでも再集結に関する情報は一切なかった。もちろん、水面下では再集結に向けての準備が進行していたと思うが、表向きは飽くまでも音源だけの発布。半年後の2010年3月、正式に再集結がアナウンスされている。

 

さて、話を楽曲へ。「悪魔NATIVITY」はギタリストの編成がルーク参謀とジェイル代官になってから世に出た最初の大教典。ジェイル代官が持ち込んだロックな要素がサウンドの変化に多大な影響を与えたのは間違いない。それに加え、同作はリアルなバンド・サウンドを真空パックしたかの如き音作りが印象的だった。

 

つまり、スタジオ音源でありつつも必要以上の加工をせず、ライヴ感のある生々しいサウンドに仕上がっていた。同じ作品に収録された曲であるため、本曲もジェイル代官の骨太なギター・サウンドを軸にワイルドな音作りになっている。

 

作詞がデーモン閣下、作曲がジェイル代官。2009年の時点で既に「パンデミック」という単語が使われているのが興味深い。ただし本曲はウィルスを歌った内容では無く、生活が機械化され、便利さと引き換えに人間の能力がどんどん衰えて行く様を「無知という名前の見えない病」と表現しているのだろう。それが世界的に蔓延するという訳だ。

 

本作や先に挙げた「悪魔NATIVITY」通常盤の他、極悪集大成盤「XXX-THE ULTIMATE WORST-」(2015年)にも収録。今のところ、ミサで演奏された事はない。

 

⑥DESERTED HERO

再録大教典「悪魔RELATIVITY」に新曲として収録された1曲。作詞作曲は、ルーク参謀。聖飢魔Ⅱのミサでは演奏された事はないが、2016年に行われたルーク参謀のソロ・アルバム「篁」25周年記念ライヴで演奏された。その際のヴォーカルはルーク参謀が自ら担当。

 

デーモン閣下が歌うCANTAの曲と表現するのは語弊があるが、本曲は極めてCANTA色の濃い1曲と言える。ヘヴィ・メタル然としたパワー・コードのリフではなく、コード・ストロークを多用したギター・パート、「春の嵐」のようにギター・ソロが無い曲構成、当時のルーク参謀が紡ぎ出すヴォーカル・メロディなど、その要因が幾つも挙げられる。

 

本活動時のルーク参謀は、特にギター・ソロにおいて自分を表現するパートとして力を入れている印象が強かった。だがCANTAは、歌で表現する、歌を通して詞の内容を伝える比重が高くなり、曲によってはギター・ソロがないものもある。

 

聖飢魔Ⅱの楽曲で考えるなら、ギター・ソロが無い曲構成は異例であり、この辺りからも本曲はCANTA的アプローチの1曲と言えそう。ただし歌詞に出て来る「向き合え」「お前」といった言葉の選びは、デーモン閣下が歌う事を想定して書かれた気がする。CANTAでは、あまり使われないワードだ。

 

⑦俺様はアナニマス

同じく再録大教典「悪魔RELATIVITY」より。アナニマスとは匿名の意味。2000年代に入ってインターネットが急速に普及。それに伴い、無記名による誹謗中傷の書き込みが増えた。本曲は、それに対する問題提起とも言え、悪魔流の皮肉を込めた1曲とも解釈できる。

 

スローで重く引き摺るようなテンポで進行。はっきり言って大衆受けする曲調ではないが、これは明確な意図があって、こうなったと思う。「悪魔RELATIVITY」に収録された4曲の新曲のうち、最初に出て来るのが本曲だった。

 

誰もが注目する聖飢魔Ⅱの新曲。期待に胸を膨らませ、本曲が始まるとスローでルーズな演奏が始まる。誰もが「?」となり、誰が書いた曲だ?と歌詞カードを見ると作詞作曲者の欄は「匿名希望」と書かれている。

 

つまり、この何とも言えないモヤモヤした気持ちこそ「あなたが普段やっているのはこういう事です」という悪魔流の演出と思える。曲調は聖飢魔Ⅱらしくないかも知れないが、ここに込められた精神性こそ、正に聖飢魔Ⅱらしいと言えまいか。

 

匿名希望であるため作者不明でありつつ、音楽的にはブルーズ色を感じるのでジェイル代官が中心となって作られた気が。歌詞は、デーモン閣下ではなかろうか。2011年に両国国技館で行われた「Tribute to JAPAN」の開演前陰アナウンスのBGMとして本曲が使用されていた。

 

続く・・・。