LIVE「デーモン閣下 c/w D.H.C 横浜 2023.10.27」⑥ | PSYCHO村上の全然新しくなゐ話

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発売より時間が経過したアルバム、シングル、DVD、楽曲等にスポットを当て、当時のアーティストを取り巻く環境や、時代背景、今だから見えてくる当時の様子などを交え、作品を再検証。

デーモン閣下 c/w Damian Hamada's Creatures「地球魔界化計画」 KT ZEPP YOKOHAMA 2023.10.27

・・・続き。

 

演目が進行するに従い気付くが、今期デーモン閣下の選曲は、惑星、宇宙、月、空といったコンセプトでセット・リストが構成されている。これは曲前の語りにも反映されており、歌詞のテーマに合わせた流れに。

 

次に演奏が開始された曲は太陽。そう「太陽がいっぱい」である。メタリックなギター・リフに続いて、煌びやかなキーボードの音色が重なる。雷電氏がビートを叩き始めると場内が一気に熱くなった。

 

2002年春に行われた「SYMPHONIA」ツアー以降、ソロのデーモン閣下を代表する1曲となっているが、各時代によってアレンジが少しずつ変化している。今ツアーでは、ヴォーカルのバックで鳴るギター2本のうち、片方がディストーション・サウンドでパワー・コードを弾き、もう片方がクリーン・トーンでアルペジオを弾く味付けだ。

 

エンディングでは原田氏と田川氏によるギター・バドルがあり、両名がステージ中央でソロを繰り広げる。テクニカルなプレイが激突し火花が散る中、田川氏は「地獄の皇太子」や「STAINLESS NIGHT」のメロディを取り入れたフレーズを弾き、観客を楽しませている。

 

曲への導入として明日が訪れる事への希望を語り、やがてデジタル・ビートが流れる。客席はリズムに合わせて手拍子の嵐となった。雷電氏のカウントからバンドの生演奏に突入し「NEW DAY COMES」がスタート。これが本編最後の楽曲だ。

 

歌詞に「トレンディー・パンツ」や「テディ・ベアー」と出て来るパートでは、原田氏の衣装やギターに着けられた縫いぐるみを指差しながらデーモン閣下が歌う。これも長年に渡る伝統的な演出に。ステージまでの距離的にはっきりとは確認できなかったが、今ツアーのグッズ「ベアーキーボルダー」の可能性が高い。

 

サビではayumi氏とMIYAKO氏が先導し、手を頭上に掲げて左右に振る。観客も同じ動きを行い、場内の一体感を生み出した。本曲は客席が明るく照らされる場面が多いため、その一体感がよりダイレクトに伝わる。

 

先ほど「Just Being-ここにいる そこにいる-」について、スタジオ音源にあったデジタルの風味が徐々に薄れ、ロック・バンドとしてのサウンドに移行していると書いた。それは本曲「NEW DAY COMES」にも当てはまる。

 

アルバム「ASTRODYNAMICS」(2000年)は今で言うところのEDM(エレクトロ・ダンス・ミュージック)を先取りしたような音作りが特徴的な作品で、2000年から2001年にかけて行われた「ASTRODYNAMICS」ツアーでは、そのイメージを忠実にライヴでも再現している。

 

以降、デーモン閣下のアルバムはハードロック寄りの音楽性が多くなり、本曲も各時代のサウンドに合わせて色合いを変化させていた。今ツアーも完全にロック・バンドとしての音作りを全面的に出したサウンドとなった。

 

曲はエンディングへ向かい、バンドの音が拡張される。デーモン閣下が「明日の君は、きっと今日の君より素敵になれる!」とメッセージを贈り演奏が終了。場内が暗転した。アンコールを求める手拍子が沸き起こる。

 

が、すぐに「ご苦労である!諸君もずっと手拍子を打つと疲れるだろうから、ここで諸君らからの質問に答えたい」と、デーモン閣下の声が流れた。これは事前に収録されたもので、聖飢魔Ⅱ「35++執念の大黒ミサツアー」の休憩時間にも同様のコーナーがあった。

 

この日は、幼少期をニューヨークで過ごしたデーモン閣下が、文化や考え方の違う現地の子どもと、どのように接し打ち解けたかを中心にトークが進んでいる。10分弱が経過しただろうか。再びステージが明るくなり、Tシャツに着替えたバンド・メンバーが登場した。

 

最後に登場したデーモン閣下が「秋葉原で行われている、清水、大橋、石川のライヴに乱入しようと思ってるのに、何べんも何べんも呼び戻しやがって!嬉しいぜ!」と述べた。続いて、ギターを持ったダミアン陛下も登場し、大きな拍手で迎えられた。

 

デーモン閣下が「ギターを弾く気、満々ですね」と言うと、ダミアン陛下が「私の場合、ギターを持っているから弾くとは限らない」と返した。それに対し「でもシールドが差し込まれてますよ」とデーモン閣下。

 

そこから会話の語尾にジャガーというワードを付けるやり取りがあり、デーモン閣下の「ジャガー!」という曲フリから「野獣」を開始。ダミアン陛下、原田氏、田川氏というトリプル・ギター編成による演奏だ。

 

1995年「サタンオールスターズ」時の「殿下(当時)がそれほど「野獣」に思い入れがあるのなら、次回ミサに起こしの際は「野獣」をプレイしていただかなくては」という会話が、令和の今に再び実現するとは驚きだ。

 

ジャガー!というシャウトで始まる小教典ヴァージョンでは無く、大教典「メフィストフェレスの肖像」(1996年)に収録された方のイントロで始まる。聖飢魔Ⅱが地球デビュー前に制作したデモ音源も同様のイントロであり、こちらが本来の形の「野獣」と言える。

 

アップテンポに発展するパートから重なるキーボードは、聖飢魔Ⅱとは似て異なるメロディをMIYAKO氏が弾いている。本曲ではスペシャルな演出が設けられているのを特筆したい。1番をデーモン閣下が歌い、2番になるとシエル伊舎堂氏が登場。デーモン閣下とのツイン・ヴォーカルとなった。

 

ダミアン陛下が弾く、間奏のギター・ソロにも注目したい。1999年12月30日「THE SATAN ALL STARS DAY」において、陛下は地球デビュー前のデモ音源に忠実なソロをステージで披露した。時を経て今回のツアーでは、新たなフレーズでソロを弾いている。

 

これによって「野獣」は聴き手のノスタルジーの中に存在する楽曲では無く、現代という舞台上で凄みを放つ楽曲としての色合いを強くした。D.H.Cのダミアン陛下によってアップデートされたフレーズに続くツイン・ギターは、陛下と田川氏によるハーモニー。このパートはオリジナルを踏まえたメロディだ。

 

続く・・・。