LIVE「デーモン閣下 c/w D.H.C 横浜 2023.10.27」④ | PSYCHO村上の全然新しくなゐ話

PSYCHO村上の全然新しくなゐ話

発売より時間が経過したアルバム、シングル、DVD、楽曲等にスポットを当て、当時のアーティストを取り巻く環境や、時代背景、今だから見えてくる当時の様子などを交え、作品を再検証。

デーモン閣下 c/w Damian Hamada's Creatures「地球魔界化計画」 KT ZEPP YOKOHAMA 2023.10.27

・・・続き。

 

D.H.Cのライヴが終了したのが19時25分頃。そのタイミングで10分の休憩を知らせるアナウンスがあった。対バン形式のライヴならセット・チェンジがあるので、通常20分~30分、アーティストによっては40分程度のインターヴァルも経験がある。ゆえに10分という短さは驚きだ。

 

今回のステージは予めドラム・セットが2つ組まれており、舞台やや左側にKAZAMI氏のセット、中央に雷電湯澤氏のセットがあった。ドラムを解体して、次のドラムを組むのは時間を要するイメージが強い。今ツアーはアンプ類のチェンジやドラムの調整など、必要最小限の動きで済むように計算され尽くした段取りだからこそ可能な、10分という離れ業を披露したのだ。

 

予告通り、19時35分頃に再開を知らせる鐘の音が鳴り響いた。聖飢魔Ⅱ「35++執念の大黒ミサツアー」の休憩時間終了を知らせる鐘の音と同じ。D.H.Cのライヴは、携帯電話による写真撮影が可能だったが、デーモン閣下の演目は撮影禁止。注意事項が子どもの声で述べられている。

 

子どもの声というのが、2月の国立代々木競技場第一体育館でのミサを思い出す。幼い声で「発見した場合、つまみ出されても文句は言えません」と繰り返し述べるのが何ともシュール。そこから数分が経過して、場内が暗転した。

 

今期デーモン閣下のツアーは、原田喧太氏(g)、田川ヒロアキ氏(g)、大桃俊樹氏(b)、雷電湯澤氏(ds)、そしてバック・ヴォーカルのayumi氏、MIYAKO氏という編成。MIYAKO氏はキーボードも担当されている。

 

SEとしてシンフォニックにアレンジされた「FOREST OF ROCKS」が大音量で流れる中、メンバーが登場して定位置に就く。セット・チェンジの際に舞台前の幕が再び上げられており、客席からは幕越しにメンバーが見える。

 

やがて爆発音が響き、レッドの照明効果によって場内が真っ赤に染まった。すぐにハイハットのカウントからメタル然としたシャープなギター・リフが始まり、どよめきにも似た歓声が上がった。何と「X.Q.JONAH」だ。

 

幕が上がるとステージ中央に棺桶があり、煙が流れ出している。聖飢魔Ⅱのミサを想起させる光景だ、しなしながら、蓋がバタバタと動いた後、中から登場したのはダミアン陛下。観客にとっては予想外の展開となった。

 

ヴォーカル・パートになるとデーモン閣下が登場して歓声と拍手があった。D.H.Cのライヴ時はKAZAMI氏のドラム・セットが組まれていた左側後方の高台は、転換時間にドラムが片付けられて玉座が置かれている。ダミアン陛下は棺桶からの登場した後、玉座に移動してデーモン閣下のライヴをご覧になる。

 

曲の開始から数十秒であるが、非常に情報量の多いオープニングと言えそうだ。玉座に着いたダミアン陛下は、ヒョウ柄のギターを持ちパワー・コードのリフを弾く。ただし、後のMCによると本曲ではギターにシールドが挿さっておらず、いわゆる当て振りのようだ。

 

1番と2番の間にギター・ソロのパートが導入されたアレンジにも注目したい。御承知のように本曲は、聖飢魔Ⅱのデビュー大教典「悪魔が来りてヘヴィメタる」(1985年)に収録されている。そのスタジオ音源を対象とすれば、今ツアーで演奏されたヴァージョンには、そこに無いギター・ソロのパートが追加されていた。

 

しかしながら、初期 聖飢魔Ⅱのミサを振り返ると実は今回と同様のアレンジに。1番と2番の間にエース清水長官のギター・ソロがあったのだ。つまり今ツアーの「X.Q.JONAH」は、スタジオ音源ではなく、初期のミサ・ヴァージョンを踏まえたアレンジと言える。そういった伝統的な手法がありつつ、演奏は現編成による2023年のサウンドとなっていたのを見逃せない。

 

終了後、ダミアン陛下が「また出て来てしまった!」と言い、客席から拍手と笑いがあった。陛下によると「閣下のバンドを特等席で見ようと彷徨っていたら、ここに辿り着いた」との事。確かに特等席である。以降の演目は「気配を消して見る」と仰り、暗転して照明が点くと玉座にダミアン陛下の姿が無い。去ったのではなく気配を消しているのだ。

 

デーモン閣下の語りに続き「FOREST OF ROCKS」の冒頭部分が場内に響く。先ほどの「X.Q.JONAH」から時代を一気に飛び越え、デーモン閣下のソロ名義での音楽活動を感じさせるサウンド及び色合いとなった。

 

ギターをレスポールに持ち替えた原田氏が、トーキング・モジュレーターを使用した独特の音色でイントロのギター・リフをプレイ。歴代のツアーでも本曲が演奏される際は、原田氏が同パートをご担当。中盤のソロもトーキング・モジュレーターを用いており、本曲のサウンドの鍵を握るのは原田氏と言えそう。

 

サビでは客席が明るく照らされ、拳を突き上げる観客の一体感が見られた。デーモン閣下のヴォーカルに厚みを加える、ayumi氏とMIYAKO氏のコーラス・ワークも素晴らしい。御両名は観客に手拍子を促したり、腕を左右に振って観客が同じ動きを行うなど、客席を先導する点でも重要な役割を果たしていた。

 

次に演奏される曲は、この時期に聴くからこそ特別な意味合いを持つ1曲。作詞:谷村新司氏、作曲:堀内孝雄氏、編曲:矢沢透氏。アリスがプロデュースを担当した「NEO」である。曲前にあったデーモン閣下の「歌は背中を押してくれる。月夜に飛べ、叫べ!」という語りが、ここに込められたメッセージを表現していると解釈できる。

 

谷村氏が亡くなったという報道があったのは、本公演が行われる10日前。本公演において直接的な追悼コメントは敢えてなかったものの、谷村氏とデーモン閣下の関係を理解しているファンは、この日の閣下の歌とパフォーマンスから、その想いを感じ取ったに違いない。

 

煌びやかシンセをバックにNEO、NEO・・・と連呼するパートが緊張感を高める。この部分はサンプリングを用い、雷電氏がスネアの強音を一発鳴らして、デーモン閣下の「You’re THE ONLY ONE」から生演奏に突入した。

 

ロック・サウンドを主体としながらも心地よいグルーヴが渦巻いた。「Wow Wow Wow」というキャッチーなサビは観客も一緒に歌う。サウンド全体を聴くと生演奏とサンプリングを同期させているようだ。

 

曲間にある「do it do it」や「NEO NEO」といったバック・ヴォーカルは、スタジオ音源と同様のもの。よって、生演奏の中にスタジオ音源のパーツをバランス良く配合し、ライヴらしい臨場感とスタジオ・ヴァージョンのイメージに忠実な両方の側面から成り立つ「NEO」となっている。

 

続く・・・。