LIVE「D.H.C 横浜 2021.11.28」③ | PSYCHO村上の全然新しくなゐ話

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発売より時間が経過したアルバム、シングル、DVD、楽曲等にスポットを当て、当時のアーティストを取り巻く環境や、時代背景、今だから見えてくる当時の様子などを交え、作品を再検証。

Damian Hamada's Creatures 「1st LIVE 魔界小学校入学式典~Devilish Hell Ceremony~」 KT ZEPP YOKOHAMA 2021.11.28

・・・続き。

 

演奏が終わると、「危ない、危ない」と言いながらダミアン陛下が再登場。玉座に着く。何が危ないのかローズ氏が尋ねると「演奏に感動して、泣いてしまうところだったではないか!」との事だ。ここでダミアン陛下がマーケティング・リサーチを行った。「今回のライヴは1回しかないので、遠方から来ている者もいると思う」と前置きし、「6km以上離れた所から来た者」、「66km離れた所から来た者」、そして「666km離れた所から来た者」と質問。観客が拍手で回答した。

 

本公演はマスクメガホンを使用して声出しができるので、どこから来たのか訊くと「北海道!」「香川!」と数名の観客が回答。しかしながら「私は魔界から来ているので、私が最も遠いのだ」とダミアン陛下が述べ、場内からは拍手と笑いがあった。トークが進む中、シエル氏がダミアン陛下に「ギターを弾きませんか?」と提案。「私はブランクが長いのだ!」と答えるも、その間にスタッフがギターを準備して演奏できる状態に。

 

登場したギターは、古くから信者にお馴染みのヒョウ柄のギターである。準備が整い、ダミアン陛下が試しに音を出すと大きな拍手が沸き起こった。ハーモニクスを鳴らした後、低音弦を弾きアームでグォォ~ッ!と鳴らす。これぞダミアン陛下のギターである。続いて「創世紀」「DEAD SYMPHONY」「X.Q.JONAH」「蝋人形の館」のギター・リフの一部を弾くと、観客は興奮状態に。まさか令和の時代に、これらの曲がダミアン陛下のギター演奏で聴けるとは驚きだ。

 

「じゃあ、次行ってみよう!」という言葉を合図に「Running like a tiger」がスタート。イントロのリード・ギターはダミアン陛下で、主旋に対するハーモニーをジル氏、バッキングのパワー・コードをRENO氏というパートの割り振りだった。先ほどの「Lady into Devil」と同じく、本曲もまたシエル氏のヴォーカルがスタジオ・ヴァージョン以上にパワフルである。間奏のツイン・リードはダミアン陛下とジル氏が担当。その後、ソロの後半になるとダミアン陛下がバッキングを弾き、ジル氏とRENO氏がリードを担当していた。

 

22年ぶりにステージでギターを披露したダミアン陛下に、大きな拍手が贈られた。その場のノリでギターを弾いたような演出だったが、本当はこの日に向けて相当なリハーサルを行ったに違いない。D.H.Cを結成した当初は表舞台に一切出るつもりは無かったというダミアン陛下だが、侍従をはじめとする人間に誘導されて、遂にはステージでギターを弾くまでに至った。これについて「楽しいからいいのだ!・・・おっとバカボンのパパみたいになってしまった!」とコメント。

 

トークの中で「もう1曲、ギターを弾いて下さい」という流れに。ダミアン陛下曰く「疾走曲は無理だが「魔界美術館」なら弾けるかも知れない」との事で、最新聖典のタイトル曲「魔界美術館」をプレイ。開始前に説明があったが、本公演での「魔界美術館」は元々ダミアン陛下が弾いていたオリジナル・ヴァージョンのギター・ソロで演奏されている。これは非常にレアだ。

 

演奏が終わるとダミアン陛下による曲フリのナレーションが流れる。カウントに続き「Which Do You Like?」が勢い良く始まった。冒頭からシエル氏の渾身のシャウトが炸裂する。スタジオ・ヴァージョンでは一部のヴォーカル・パートがEDM風に加工されているが、この日はシエル氏の力強い生声で歌い上げられている(厳密に言うとマイクを通しているので、生声という表現は語弊があるかも知れないが)。バトラー氏が叩く怒涛のドラミング&ツイン・ペダル連打に乗って、間奏ではジル氏とRENO氏が難易度の高いフレーズを完璧に再現した。本曲で本編は終了。改臓人間の方々はステージを去った。

 

アンコールを求める手拍子が場内に響く。暫く経ったところで改臓人間の方々が再登場。そして、ダミアン陛下もギターを持ってステージに登場した。シエル氏が観客にお礼を述べた後、バンドがイントロダクションをプレイ。始まった曲は何と「魔王凱旋」だ。本曲でもダミアン陛下はリードを担当。これまでの歩みを踏まえると、このステージは正に「魔王凱旋」と言えそうだ。1小節ごとに鐘の音が鳴ってゴージャスなヴァージョンとなった。

 

「魔王凱旋」からメドレーのような形で「怪奇植物」に流れ込む。聖飢魔Ⅱのヴァージョンよりも、全体的にテンポを落として重量感のある仕上がりに。サビの「ダーリア」の部分は、唸るように歌うシエル氏の低音と、悲鳴のように響くローズ氏のコーラスのコントラストが楽曲に摩訶不思議な色合いを与えている。間奏のソロはダミアン陛下が担当。

 

休符の部分も含め、大教典「THE END OF THE CENTURY」(1986年)に収録されたアレンジというよりは、聖飢魔Ⅱが地球デビュー前に制作したデモ・テープに収録された初期の「怪奇植物」に近い気がする。それが時空を超えて蘇り、D.H.Cの味付けを加えてステージで披露した印象が強い。

 

演奏が終わると、ダミアン陛下より「怪奇植物」の制作エピソードが披露された。この曲は女性ヴォーカルのバンドに提供するため「魔女ダーリア」というタイトルで制作していたらしい。だが「バンドのイメージに合わない」とあっさり却下されてしまい、その後、聖飢魔Ⅱとして発表した流れがあるそうだ。よって当初は女性ヴォーカルを想定して書かれた曲が、シエル氏のヴォーカルで披露される事となった。

 

「ダミ満足!」の陛下は玉座へ戻り、シエル氏が観客に感謝の気持ちを伝える。感極まって涙する場面もありつつ、「今日は本当にありがとうございました!」と力強く挨拶。アンコールのラストは「Babel」で締め括られた。本曲は改臓人間のプレイであるが、ダミアン陛下もステージの玉座に残り、ビデオ・クリップの如くギターを撫でていた。

 

全ての演奏が終わると、ダミアン陛下が改臓人間を1名ずつ紹介。感謝のコメントを添えてステージを送り出した。全員がステージを去った後、ダミアン陛下が観客にお礼を述べ、「次回は、他の地域にも行きたい」といったコメントを残した。今後の活動の展開を予感させる言葉だ。

 

ダミアン陛下がヘヴィ・メタル・シーンに築いたものが、「スタイル」ではなく「本物」である事を改めて感じるライヴだった。聖飢魔Ⅱの結成はB.D.17(1982年)である。地球デビュー後は、デーモン閣下を始めとする構成員がダミアン陛下の築き上げた世界観を継承。更には新たな要素を取り入れて音楽性を発展させ、伝説のバンドとなった。そして2020年にD.H.Cが誕生し、この日、初ライヴが行われた。ダミアン陛下が築く、もうひとつの伝説の始まりである。

 

尚、このレポートはパコソンとリフトを使用して作成しています。

 

セット・リスト

 

①聖詠

②嵐が丘

③謝肉祭

④天使と悪魔の間に

⑤Lady into Devil

⑥Deepest Red

⑦Angel of Darkness

⑧Tears in the Rainbow

⑨Running like a tiger

⑩魔界美術館

⑪Witch Do You Like?

 

アンコール

・魔王凱旋

・怪奇植物

・Babel