第671回「続々々・聖飢魔Ⅱ全曲紹介」① | PSYCHO村上の全然新しくなゐ話

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発売より時間が経過したアルバム、シングル、DVD、楽曲等にスポットを当て、当時のアーティストを取り巻く環境や、時代背景、今だから見えてくる当時の様子などを交え、作品を再検証。

1999 BLACK LIST[本家極悪集大成盤]/聖飢魔Ⅱ

「1999年12月31日 聖飢魔Ⅱ 地球征服完了と共に解散」。1999年春のある日、聖飢魔Ⅱの姿が朝日新聞に大きく掲載された。4月16日の朝刊だったと記憶している。当時は今のようにインターネットが個人個人に普及している時代ではなかったため、聖飢魔Ⅱの解散発表はこのような形で行われた。

 

デーモン閣下が80年代に出版した本「我は求め訴えたり」の中にも、聖飢魔Ⅱは1999年をもって解散する事が書かれている。ある種の公約ではあったものの、解散が正式な形で発表されると信者の中に衝撃が走った。因みに著書の中には「1999年7月をもって解散」と書かれているが、1999年当時のスタッフがそれを知らず、年末までスケジュールを組んでしまったため年内一杯は活動する事になったそうだ。

 

同日の夜、テレビ朝日系「ミュージック・ステーション」に聖飢魔Ⅱが出演し、デーモン閣下(Vo)の口より改めて解散についてのコメントが述べられている。解散を発表した聖飢魔Ⅱは、5月に本作「1999 BLACK LIST[本家極悪集大成盤]」、7月に「1999 BLOOD LIST[元祖極悪集大成盤]」を発布(厳密に言うと発布予告は解散発表より先にアナウンスされていた)。人間界で言うところのベスト盤を解散発表のタイミングで発布したとなれば、これまでの集大成、活動の締め括りをイメージさせる。

 

しかし聖飢魔Ⅱは、活動の締め括りとして極悪集大成盤を発布したのでは無く、ここから解散に向かって突き進むためのアクセルを踏む意味合いで、本作を世に送り出している。「蝋人形の館」を再録音し、最大小教典「蝋人形の館’99」として発布したのも、今一度、原点に立ち返る意味合いではないかと思う。

 

この度、その極悪集大成盤の2作品が一連のBlu-Spec CD2による名盤復刻シリーズとして再販される事となった。盤がBlu-Spec CD2である他、音源は2020年にリマスタリングされているようだ。1999年当時の初回盤にあった銀色の厚紙ケースは再現されていないものの、CD盤のデザインから歌詞カードの写真に至るまで、中身はオリジナルと限りなく同じ。違いと言えばライナーが追加されている事で、それに伴いケースが分厚い。

 

期間限定再集結時に発布された各種教典を合わせると、今では極悪集大成盤も種類が多い。その中でも本作は、名刺代わりと言えるほど聖飢魔Ⅱの音楽的魅力が凝縮されている。初心者入門編にも最適で、これから教典を入手しようと考えている方は、今回の再販を機に本作を手にしてみるのも良いはず。

 

更に今回はCDのみならず、レコードという形態で発布されるのも見逃せない。近年、レコードはその価値が見直され、大きなマーケットとなりつつある。実際、東京都内のCDショップにはレコードを販売するフロアが設けられたり、市場を見てもレア盤は価格が上がるなど、過去の産物のような扱いではなく生きた商品として人気を博している。アナログの音で本作に接してみるのも面白い。

 

本作の特徴は何と言っても、代表曲群をデーモン閣下(Vo)、ルーク篁参謀(g)エース清水長官(g)、ゼノン石川和尚(b)、ライデン湯澤殿下(ds)、そして怪人松崎様(Key)という1999年当時の構成員で再レコーディングしている点だ。再レコーディングについては、名曲を最新(当時)のバンド・サウンドにアップデートするだけで無く、実は権利の問題をクリアするためという理由も含まれる。

 

聖飢魔Ⅱは1985年にCBS SONYより大教典を発布し、地球デビューを飾った。その後、大教典「PONK!!」(1994年)まで同レコード会社に属して、次の「メフィストフェレスの肖像」(1996年)からBMGに移籍している。本作「1999 BLACK LIST」のオリジナル盤はBMGからの発布だった。つまりレコード会社が違うため、SONY時代の楽曲を使用するには権利の問題が絡んでくるのだ。

 

解決策としてBGM移籍後に発布した楽曲+新曲+SONY時代の楽曲を再録音した「1999 BLACK LIST」、SONY在籍時の音源を中心とした「1999 BLOOD LIST」と2種類の大教典を2つのレコード会社より発布した。今回の再版盤は両作品ともSONY MUSICであるが、双方のオリジナル盤を見比べると、「1999 BLACK LIST」がBMG、「1999 BLOOD LIST」がSONYと、それぞれ違うレコード会社から出ている事が判る。

 

こういった事情があるので、「本家極悪集大成盤」「元祖極悪集大成盤」と表記されている。改めて1999年の事を振り返ると、30周年期間限定再集結の際に発布された「XXX-THE ULTIMATE WORST-」(2015年)は全ての時代の楽曲を同じ作品に網羅した画期的な極悪集大成盤だったと言える。

 

さて、一般的に聖飢魔Ⅱはヘヴィ・メタル・バンドというイメージが強いが、実際には音楽性が幅広い。極悪集大成盤の2作品は、「本家」に初期と後期、「元祖」に中期と、奇しくも時代が分かれているため、ストロングなヘヴィ・メタルを中心とした「本家」、様々なジャンルを吸収しバラエティ豊かな楽曲を収録した「元祖」と、それぞれに色合いが異なる。まずは、本家である「1999 BLACK LIST」収録曲から紹介して行きたい。

 

続く・・・。