第474回「インヴェイジョン」 | PSYCHO村上の全然新しくなゐ話

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発売より時間が経過したアルバム、シングル、DVD、楽曲等にスポットを当て、当時のアーティストを取り巻く環境や、時代背景、今だから見えてくる当時の様子などを交え、作品を再検証。

ヴィニー・ヴィンセント・インヴェイジョン/ヴィニー・ヴィンセント・インヴェイジョン

ヴィニー・ヴィンセントと言えば一流のギター・テクニックを持ち、ソング・ライターとしても超一流のセンスと才能を持っているが、人間性が災いしバンド活動が長く続かないギタリスト。人々が思い描くヴィニーのイメージと言えば、このようになるのではなかろうか。勿論、ヴィニーと付き合った事があるわけではないので本当のところは不明ではあるが、ヴィニーと音楽活動を共にしたミュージシャンが皆、口を揃えて人間性を指摘し、実際に短期間で去っている辺りを見ると、難しい性格の持ち主なのではないかと思えてくる。

 

ヴィニーを一躍、有名にしたバンドと言えばキッスである。アルバム「地獄の回想」(1983年)でリード・ギターとして参加しているが、既にエース・フレーリーはその数年前からキッスの活動を離脱していた事もあり、「暗黒の神話」(1982年)の時代からヴィニーは実質メンバーのようなものだった。

 

80年に入り、時代はハードロックからヘヴィ・メタルへ。テクニカルなギター・フレーズとエッジの効いたギター・サウンドをキッスに持ち込んだヴィニーは、80年代初頭のキッスには適任のギタリストだった事は間違いない。しかしながら、キッスでの活動は長く続かず、ポール・スタンレー曰く「彼の中に住む悪魔が表に出て来て害を及ぼす。仕方ないから辞めてもらった」との理由でバンドを去る事に。

 

ジーン・シモンズも「あれほど自滅的な人間は見た事が無い。この先に幸せが待っていようが自ら首を吊るような男だった」と後に発言していた。ただヴィニーについてもフォローしておくと、キッスではジーンやポールから「エースみたいなフレーズを弾け」と言われていたそうで、それ即ち自分のギター・スタイルを消して他の奏者のように弾けという意味であり、納得が出来なかったのは仕方ない。

 

とにかくヴィニーはキッスを去り、新しいバンドを結成すべく動き始めた。そして、ヴィニー・ヴィンセント・インヴェイジョンとしてアルバム「ヴィニー・ヴィンセント・インヴェイジョン」(1986年)でシーンにカム・バックしている。メンバーはヴィニー(g)の他、ロバート・フレイシュマン(Vo)、デイナ・ストラム(b)、ボビー・ロック(ds)という顔ぶれだ。

 

LAメタルを筆頭に派手なヴィジュアルとバブリーな楽曲が世を制していた時代性もあってか、本作のジャケットに掲載されているメンバーのヴィジュアルも少なからず、その時代性を取り入れているとも言えそうだ。今になって本作を改めて聴いてみると、メンバーのグループ・ショットから収録された楽曲、アルバム全体のイメージも1986年らしいアルバムと呼べそうな作品となっている。

 

ギターのフィードバックからリフが切り込む「ボーイズ・アー・ゴナ・ロック」、2曲目の「シュート・ユー・フル・オブ・ラヴ」を始めとし、派手でゴージャスなサウンドでありながら歌メロはポップで非常にキャッチーだ。「ノー・サブスティテュード」のようにポップでありながら、ギターのアルペジオやコーラス・ワークから若干の哀愁を感じさせるような絶妙な作りの曲もある。

 

「アニマル」「トゥイステッド」「ドゥ・ユー・ウォナ・メイク・ラヴ」「アイ・ウォナ・ビー・ユア・ヴィクティム」「ベイビー・O」と、基本的には躍動感のあるハードロック、ヘヴィ・メタルを中心とした楽曲が多い一方、バラードの名曲も収録されており、それが「バック・オン・ザ・ストリーツ」である。バラード系の曲と言っても単に静かな曲という意味ではなく、ゆったりとしたリズムの中にパワーと哀愁が宿るような仕上がりに。

 

多くの曲でハイ・トーンを駆使したヴォーカルを聴かせているロバートであるが、本曲の歌い出しのように切々と歌う声も魅力的だ。因みに本曲、ジョン・ノーラムがヨーロッパ脱退後に発表したソロ・アルバム「トータル・コントロール」(1987年)で取り上げられ、カヴァーもされている。「インヴェイジョン」はアルバムの最後を飾る曲だけあって、ポップな他の楽曲と比較すれば非常にドラマティックで厳粛な空気感も内包する1曲と言えそうだ。サビではコーラスというより、もはやヴォーカルと呼べるほどヴィニーが一節を歌うパートもある。この声が非常に印象的だ。

 

また本曲、エンディングでギターのフィードバックが続く演出となっており、LPレコードの時代は手動で針を上げるタイプのプレイヤーで再生した場合は、針を上げるまで延々とギターのフィードバックが鳴り続けるというアルバムとなっていた。CDでは収録時間の関係もあるので果てしなく鳴り続けるような事は無いが、それでも曲が終了しても3分少々、ギターの音を入れ続けている辺りが面白い。

 

収録曲はどれも素晴らしく、派手でありながらもキャッチー、そしてポップなメタル作品となっている。まだ各曲のギター・ソロも超絶的でヴィニーのテクニカルなプレイが存分に堪能できる。しかしながら、ロックでもバラードでもとにかく弾いて弾いて弾きまくっているため、ギター・ソロが目立ち過ぎているのは否めない。そういった点ではバンドのアンサンブルを重視しているとは思えず、アルバムの仕上がりからもヴィニーの性格が浮き彫りになっているのかも知れない・・・。

 

ではドラマティックな「インヴェイジョン」↓↓

 

 

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