LIVING LEGEND/聖飢魔Ⅱ
1999年4月、朝日新聞の朝刊に聖飢魔Ⅱの姿が大々的に掲載された。それは「聖飢魔Ⅱ 1999年12月31日 地球征服完了と共に解散」という発表で、同時期に出演した「ミュージック・ステーション」にて、デーモン小暮閣下(Vo)より改めて解散についての告知が成された。デビュー時からの公約とは言え、その内容が正式に決定し発表されるのはショッキングな出来事であり、信者に衝撃を与える事となった。
解散に向かってのカウントダウンが開始された聖飢魔Ⅱは、まず同年5月と7月に、再録音曲を含む極悪集大成盤(いわゆるベスト盤)を2種類発布し、それらに従うツアーを夏に行った。このツアーは、聖飢魔Ⅱの楽曲の魅力を再確認させるべく、「WINNER!」「EL.DORADO」「白い奇跡」「BAD AGAIN~美しき反逆~」「STAINLESS NIGHT」などの定番曲を敢えて外してメニューを構成するという、挑戦的な試みの下に行われた。
そして解散が目前に迫った10月に、最後の大教典である本作「LIVING LEGEND」が発布。前年に発布した「MOVE」(1998年)は、より多くのリスナーにアピールできるポップな作風となっており、バンド活動全般においても様々な音楽性を披露していた聖飢魔Ⅱだが、最終作で提示した方向性はへヴィ・メタルであり、ある意味、世間が思い描く聖飢魔Ⅱの姿を投影した作品となった。ただへヴィ・メタルという枠でありつつ、過去の焼き直し的なものは一切無く、演説や喋るような歌唱法、当時の世相を反映した歌詞など、最後の最後まで新たな要素も存分に取り入れた作品となっている。
①HEAVY METAL IS DEAD
当時の音楽シーンでは既にへヴィ・メタルは過去の産物との見方が強く、メジャーなフィールドで活躍するメタル・バンドは皆無だった。よって聖飢魔Ⅱの解散と共にへヴィ・メタルも死に絶えるといったテーマで歌詞が綴られている。解放弦を使用したリフが印象的な本曲は作詞曲共に閣下で、メインのリフはサビのバックでも使える事を意識して曲を書いたらしい。疾走感溢れるスピーディーな本曲のギター・ソロは、エース清水長官(g)が弾いており、ある意味、長官らしくないソロで新鮮なアプローチだ。
②SILENCE OR VIOLENCE?
ルーク篁参謀(g)のペンによる楽曲。アルペジオのパートから8ビートのアップテンポなメタル・ナンバーへと展開を遂げる構成は、タイトル通り静から動のコントラストを感じさせる。参謀のテクニカルなギター・ソロも圧巻。これほどまでに素晴らしい曲だが、ミサで演奏する機会のないままバンドは解散してしまった。
③ GLORIA GLORIA
同じく参謀の作詞作曲。歌詞の言葉から推測するに、1997年以降に大きな社会問題となりつつあった少年犯罪を題材にしているようだ。楽曲はタメを効かせたスロー・テンポで進行し、主体となるリフの重量感、スライド・バーを使用した粘っこいフレーズなどから、絶望感溢れる独自の世界観を描き出す。この曲はドロップDチューニングで演奏されていたはず。1999年12月30日の解散ミサ2日目に初演奏され、2005年「恐怖の復活祭」の地方公演でも演奏されていたが、千秋楽のミサではセットから外された為に映像作品には収録されていない。解散ミサ時の映像が唯一の映像だ。
④戦慄のドナドナ
スラッシーなリフが疾走するリズムに乗って刻まれるファストな楽曲で、ライデン湯沢殿下(ds)の素早いバスドラさばきが素晴らしい。当時、脳死判定による初の臓器移植がニュース等で話題となり、閣下はそれを題材に歌詞を書いたようだ。本作発布前より既にファイナル・ツアーで演奏されており、その際には手術台に寝かされた閣下の内臓を、医者が取り出すという演出を交えて披露されていた。本曲は、解散ミサの企画段階で初日のメニューに含まれていたものの、結局、本番ではセットから外された為、フルの映像は残っていない。因みにこの曲も、ドロップDチューニング。
⑤20世紀狂詩曲(大教典ver)
作詞・閣下、作曲・参謀で、演説メタルという新たな手法を生み出した楽曲。最終最大小教典として既に発布されていた本曲だが、ここではヴァージョン違いが収録されている。小教典では1番を閣下と長官、2番を閣下と参謀、そしてゼノン石川和尚(b)と殿下も一節ずつ演説していたが、この大教典版では1番を閣下と参謀、2番を閣下と長官が担当している。ドロップDチューニングを活かしたへヴィな楽曲になっており、骨太なメタル・ソングだ。1999年夏ツアーが行われていた時点で既に完成していたが、「教典になって初めて聴いて欲しい曲」との理由で、その時点では演奏されなかった。
⑥THIS WORLD IS HELL
作詞曲共に閣下。重く引きずるようなリフが鳴りスローに進行する1曲で、歌メロでは途中、早口で喋るような新たな手法が採用されている。閣下曰く「陽水メタル」との事だ。絶望感を発散する重い曲だが、中盤ではリズムが変化し、長官の甘美なフレーズと参謀のテクニカルなフレーズをフィーチュアしたギター・ソロ・パートが設けられている。その後、再び曲はスロー・テンポに戻る構成に。
続く・・・。
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