第89回「良質メロディ特集」 | PSYCHO村上の全然新しくなゐ話

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発売より時間が経過したアルバム、シングル、DVD、楽曲等にスポットを当て、当時のアーティストを取り巻く環境や、時代背景、今だから見えてくる当時の様子などを交え、作品を再検証。

今の世の中、音楽のジャンルも細分化し、様々な形態の音楽が世に発表されているが、どういった形態の音楽にしても、やはりメロディは重要になってくる。特にここ日本では、いつの時代もメロディを重んじる傾向が強い。洋楽が好きで、海外のミュージシャンのインタビューを見たり聞いたりしているリスナーの方なら御気付きかもしれないが、現状としてヨーロッパ圏のメロディアスな楽曲を売りにしているバンドの多くは、日本を重要な市場として活動している。


ミュージシャンの多くは、やはりアメリカで成功したいという気持ちを持っているだろうが、ブームの流れが速いアメリカにおいては、メロディアスな音楽は過去の産物であり、80年代辺りに成功した一部のバンドを除いては、相手にされないという厳しい状況だ。それは日本、ヨーロッパ圏のバンドだけでなく、イギリスのアーティストも該当する。更に、アメリカ国内からもメロディアスなロック/ポップ系の音楽を披露するバンドが登場しているが、やはり母国では無く、日本やヨーロッパ圏を市場として活動しなければならない悲しい現状だ。


と、書いてはみたが見方を変えれば、ミュージシャンにもリスナーにもメロディを重要視する方が世界中に居る事は事実であるし、音楽の善し悪しは楽曲そのものの出来であり、チャートに入っていない、何万枚以上売れていないから質が低いなんて事は無いのである。今回は、良質なメロディを全面的に取り入れたバンドに焦点を当て紹介したい。




ハートランド/ハートランド



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・以前、当コーナーで「ムーヴ・オン」(2005年)を紹介したイギリスのバンド、ハートランドだが、今回は1991年発表のデビュー・アルバムを取り上げたい。今は音楽界から引退したゲイリー・シャープ(g)が参加していた時期の貴重な作品でもある。英国特有の気品に満ち溢れた楽曲を、クリス・ウーズィー(Vo)のハスキーな歌声で歌い上げる味わい深い作品。尚、本作は長らく入手困難となっていたが、これを書いている現在は輸入盤で入手可能となっているので、気になった方は廃盤にならない内にゲットしましょう。では本作より「リアル・ワールド」↓↓




http://www.youtube.com/watch?v=7_nL5twZMKo





ブランド・ニュー・ワールド/グランド・イリュージョン



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・アンダース・リドホルムを主軸とするスウェーデン出身のグランド・イリュージョン。シーンに登場して以来、メロディ趣向の洋楽リスナーの間で話題となっていたが、2007年からアンダース氏はデーモン閣下のアルバムを手掛け、ツアーにも参加した事により、これまでグランド・イリュージョンを知る事の無かった新たなファン層にも浸透した。メンバーの意見の食い違いで一度は消滅していたグランド・イリュージョンだが、本作は復活しての第一弾アルバム(2010年発表)。水晶のような透明感に満ちた楽曲を、重層なコーラスと共に壮大に聴かせるのはお馴染みだが、本作は特にハード・ロック色が濃い作品である事も特筆したい。ではデーモン閣下も参加した「サーチ・フォー・ライト」↓↓





http://www.youtube.com/watch?v=OpyBvk1g6_8





パープレクスド・イン・ジ・エクストリーム/エメラルド・レイン



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・カナダ出身のバンドで、本作は2001年発表の3rdアルバム。1曲目「ユー」を筆頭にハードに疾走する楽曲もあるが、核となるのはやはり良質なメロディ。アルバムを通してロック色の濃い曲から、バラード調の曲まで、分厚いコーラスで重ねられた良質なメロディが渦巻いている。また歌を聴かせるだけで無く、ギターも角の立ったリフから、テクニカルなソロまで披露し、歌+バックの演奏ではないバンドとしてのサウンドを展開する。では本作より「イズ・ディス・ラヴ」↓↓





http://www.youtube.com/watch?v=BCO-a59lWnc





コーポレート・ホイール/ディパーチャー



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90年代以降、メロディック・ロックバンドの多くは、ヨーロッパ圏から登場したが、このバンドはアメリカ出身のバンド。本作はヴォーカリストがティモシー・ルイスに交代して発表された3rdアルバムである(2002年発表)。ポップでキャッチーな楽曲、キーボードも取り入れて煌びやかに音色を彩る質の高い楽曲を披露。ロックであるが、ハード・ポップという言葉が一番合いそうな音楽性である。では本作よりリッスン・トゥ・ホワット・アイ・セイ↓↓





http://www.youtube.com/watch?v=6rgKSxdPxyQ&list=PL85AE640B283B638F






アドレス・ザ・ネイション/ヒート



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・将来の音楽シーンを担うスウェーデンの若き6人組、ヒート。本作はエリク・グロンウォール(Vo)が加入しての3rdアルバム。北欧ならではの透明感に満ちた1st「ヒート」、音楽性の幅を広げ軽快なロックンロール・ナンバーも取り入れた2nd「フリーダム・ロック」と、作品を重ねていたヒートだが、本作はそれらの要素を踏まえ更に一歩、前に進んだ高い次元でのサウンドを披露している。良質な歌メロ、時にテクニカルに、時に美しく奏でられるギター、キーボードを敷き詰めた洗練されたサウンド、バンドを支えるリズム隊と、細部まで作り込まれた楽曲が共鳴する名作。紹介するのは、本作から取り入れられた新たな要素が満載の「イン・アンド・アウト・オヴ・トラブル」。サックスによるリフが印象的。↓↓





http://www.youtube.com/watch?v=iQj-CoGbMjs






こうして数組のバンドを続けて聴いてみると、良質なメロディとひと言で言っても、国によって組み立て方や解釈が異なり、その地方独特のサウンドが存在している事に気付く。その国に根付いた音楽性や、その国で生まれ育った人間だからこそ可能なサウンドの形成。メロディは元を辿れば、ただの「音階」であり「音」であるが、それに生命を与え、聴き手に訴え掛ける楽曲として形にするミュージシャンの才能に改めて敬意を表したい。