第77回「伝説の創始者」 | PSYCHO村上の全然新しくなゐ話

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発売より時間が経過したアルバム、シングル、DVD、楽曲等にスポットを当て、当時のアーティストを取り巻く環境や、時代背景、今だから見えてくる当時の様子などを交え、作品を再検証。

照魔鏡/ダミアン浜田


PSYCHO村上の全然新しくなゐ話-ダミアン

御承知のように、ダミアン浜田殿下は1980年代前半に聖飢魔Ⅱを結成し、地球デビュー前の活動においてバンドの主導権を握り、初期の楽曲の作詞・作曲、編曲のほとんどを手掛けている。しかし、デビュー直前にバンドから離れる事となり、殿下の残した楽曲は、地球デビュー後の構成員に受け継がれ演奏され続けて来た。



実際、初期の聖飢魔Ⅱの教典類に収録された楽曲は、「悪魔組曲 作品666番二短調」「蝋人形の館」を筆頭に殿下の名前がクレジットされた楽曲がほとんどで、地球デビュー後に聖飢魔Ⅱを知った信者の方にとっては、名前やデータは残っているが、その姿、そのプレイは見た事が無い、またはもう見る事の出来ない伝説の構成員として長きに渡り語り継がれていた。



時は流れ、B.D.4年(1995年)。地球デビュー10周年を記念し行われた、歴代の構成員中4名がゲスト出演するという大黒ミサ「サタン・オール・スターズ」にて、ダミアン殿下は遂に信者の前に登場する事となった。正に一大企画である。その黒ミサにて、殿下は自身が生み出した楽曲を、久々に自らステージで演奏し、ミサは大盛況のうちに終了。その余韻は、聖飢魔Ⅱの大教典「メフィストフェレスの肖像」(1996年)に、殿下が新たに書き下ろした楽曲が収録される形で投影された。また、同教典にはデビュー前に演奏されていたが、正式なスタジオ版としては世に出ていなかった「野獣」も収録された。そして、同じく1996年に発表されたのがダミアン殿下のソロ・アルバム「照魔鏡」である。全収録曲がダミアン殿下によって書かれ、ゲストとして聖飢魔Ⅱの構成員も参加している。



本作でダミアン殿下は、ギターのみならずヴォーカルも自らが担当している点を特筆しておこう。本作のオープニングを飾るのは、インストゥルメンタル曲「世界破滅への序曲」で、この曲は信者にもお馴染みの曲であるはず。本曲は、聖飢魔Ⅱの期間限定再集結時のミサで、構成員が去って行く際にバックで流された曲であり、2010年の「ICBM」ツアー最終日、2011年の両国国技館ミサを収録した教典類のエンディングでも聴く事が出来る。2曲目「SORCEROUS KINGDOM」は、短いドラムのフィル・インに続き3連譜で進行する楽曲で、歌詞は正にダミアン殿下の作りだす世界観が渦巻いている。



透明感溢れる美しいイントロから、一転して疾走する「灼熱の蜃気楼」は、ストレートなへヴィメタル・ナンバーで、中間部のソロではマイナー・スケールを駆使した殿下のギター・フレーズとキーボードのソロの掛け合いがフィーチュアされている。ムード感のある鐘の事から、重低音及びキーボードのメロディが続き、ミドル・テンポの曲へと流れ込む「ANOTHER…」は、ゾッド星島親分が歌を担当。楽曲そのもののへヴィだが、親分ならではの渋い歌声が、その印象を更に深める仕上がりである。5曲目「嵐が丘」は、様式美へヴィ・メタルの決定版とも言えるアップテンポな楽曲で、ギターやベースの低音と、キーボードの煌びやかさが融合したサウンドが特徴的。間奏部のライデン湯沢殿下(ds)による派手なドラミングも聴き所。嵐が吹く丘での、悲劇の恋愛を歌ったような歌詞が綴られている。



6曲目「TEARS IN THE RAINBOW」は、エース清水長官のヴォーカルをフィーチュアした楽曲。宙を舞うような美しいピアノのイントロから、リズム・インと共に暫し殿下の泣きのギターを全面的に押し出したソロが聴ける。その後、曲は一転し、ピアノの演奏をバックに長官が切々と歌い上げるバラード系の曲調へと展開して行き、サビではエース長官とダミアン殿下のデュエット的なパートが登場する。7曲目「月光」は、中世のバロック音楽を想起させる厳粛なメロディから、重低音が響くへヴィ・メタルへと展開する楽曲。中間部では、3連譜や4ビートをはじめリズムが複雑に変化するドラマティックな構成が特徴的。



8曲目「失楽園はふたたび」は、デーモン閣下が歌う楽曲で、本作発表当時、ダミアン殿下御自身も、「やはり私の曲の魅力を、100%引き出してくれるのはデーモンだな」といった感じのコメントを寄せていた。アルバム・タイトルにもなっている「照魔鏡」は、本作中で最もへヴィなリフが骨格となる楽曲で、「月光」に続き本曲も中間部でリズムが変化するパートが設けられている。ラストを飾る「LONESOME ANGEL」は、3連譜主体で進行する楽曲で、歌詞の世界観と楽曲のサウンドが融合し、独特の様式美を醸し出す1曲。



尚、ベースのほとんどをゼノン石川和尚が担当しているが、ここで聴けるサウンドは和尚ならではの滑らかなタッチでは無く、ガリガリと引っ掻くようなプレイが多く聴かれる為、楽曲の世界観やサウンドを考慮し、ピックで演奏しているのではないかと推測できる。



初期の聖飢魔Ⅱの楽曲を多く手掛け、聖飢魔Ⅱというバンドの方向性、世界観を決定付けたダミアン殿下だが、本作で聴けるサウンドは、初期の聖飢魔Ⅱそのものでは無い。ヨーロッパのクラシック音楽、バロック音楽を思わせる旋律や展開が全面的に添加され、更にキーボードのサウンドも楽曲内で非常に重要な役割を果たしている事から、より洗練された様式美へヴィ・メタル作品という感じに仕上がっている。本作は発表当時、一般のCDとは流通ルートが違っていたのか、一部のレコード店にしか置かれておらず、当時はまだインターネット通販は普及していなかった時代であった為、誰にでも簡単に入手できる作品ではなかった。よって、今となっては伝説の作品と言える1作だ。



因みに、ダミアン殿下の話によると、この「照魔鏡」以前にも、御自身の作品を3作発表していたが、それはカセット・テープという形態で、各200本ぐらいしか生産されていないとの事。あと、デビュー前の聖飢魔Ⅱの持ち曲の中に、ダミアン殿下作の「MidNight Soldier」という楽曲があり、この曲は結局、教典には収録されなかった完全未発表曲である。なぜデビュー後に本曲が取り上げられなかったのかは不明だが、曲自体は「怪奇植物」風のダークなイントロから、「STORMY NIGHT」「THE END OF THE CENTURY」を思わせる疾走感溢れる正統派へヴィ・メタル曲で、楽曲そのものは実に素晴らしい内容の作品だ。「なぜ、PSYCHO村上氏はその曲を知っているの」という問い合わせは御遠慮下さい・・・。





では、その「照魔鏡」より「灼熱の蜃気楼」↓↓




http://www.youtube.com/watch?v=EGG9XCy9ceM




ゾッド親分が歌う「ANOTHER…」↓↓




http://www.youtube.com/watch?v=9s0QZq1jZ9s




デーモン閣下が歌う「失楽園はふたたび」↓↓




http://www.youtube.com/watch?v=63RnhTYKFJ4