ヒート/ヒート
ひと言で「ロック」と言っても、それは国によって異なったサウンドを形成し、地域によって育まれた独自の音像が確立されている。かつては流行の発信地といえば、アメリカやイギリスであったが、最近は北欧で誕生し確立したサウンドを、今度は逆にアメリカやイギリスのアーティストが取り入れる傾向も見られるようになった。つまり北欧には、その地域や国特有のサウンドが確立されているという事である。北欧の国々といえば、クラシック音楽やバロック音楽をルーツとし、そういった音楽のメロディや精神が受け継ぐ、澄んだサウンド、水晶のような透明感、美しさなどが、北欧らしい音像を形容する言葉として使われている。
今回、紹介したいのは2009年にデビューしたスウェーデンのバンド、ヒートである。このアーティストは、メロディアスでポップ、そしてコンパクトでキャッチーなハードロック・サウンドを披露する若きバンドであるが、そのサウンドにはやはり、北欧らしさが貫かれている。ここで取り上げているのは、そのヒートのデビュー作「ヒート」(2009年発表)だ。本作をレコーディングしたメンバーは、ケニー・レクレモ(Vo)、エリック・リヴァース(g)、デイヴ・ダロン(g)、ジミー・ジェイ(b)、クラッシュ(ds)、ヨナ・ティー(Key)という6人編成で、レコーディング当時、皆20代前半と、正に将来の音楽シーンを背負う若手バンドである。
本作は飛行機の離陸音を使用した短い「イントロ」から、「ゼア・フォー・ユー」で幕を開け、この瞬間からヒートの素晴らしさが凝縮されている。80年代のロックを想起させるリフや、楽曲を彩る重層なコーラスが印象的な「ネヴァー・レット・ゴー」「レイト・ナイト・レディ」、優雅なギタープレイが炸裂する「キープ・オン・ドリーミング」、力強いドラミングに始まり、シャープな雰囲気も演出する「ストレイト・フォー・ユア・ハート」、泣きのバラード「クライ」、ブルージーなムード感漂う「ストレイト・アップ」他、全編に渡り、透明感と美しさで彩られたヒート流のロック・サウンドが展開される。
日本盤にはボーナス・トラックとして「ステイ」が収録されているが、これがまた、質の高い1曲なので、可能なら日本盤を入手する事をお勧めしたい。優雅に歌い上げるヴォーカルと、適度にテクニックを交えつつもメロディ重視のプレイに徹するギタリストも素晴らしい。
さて、次に本作のジャケットに注目したい。メンバーがバンド名が書かれた飛行機に乗り込もうとしている絵が使用されている。ここに掲載したジャケットだけでは判り辛いが、CDを手に歌詞カードを見ると、実はこのジャケットのアートワークには続きがあり、空港に集まった大勢のファンに見送られながら、メンバーが飛行機に乗り込もうとしている様子が描かれているのだ。
勿論、当時のヒートはデビューしたばかりの新人バンドであり、専用の飛行機を持っているとは思えないし、まだ空港を埋め尽くす程のファンを獲得しているとは考えにくい。これはつまり、このバンドが成功した時の姿を思い描いたアートワークであり、「キープ・オン・ドリーミング」の精神が宿っているのだ。バンドが成功し、空港に集まったその地のファンに見送られながら、専用機で次の公演地へ移動する。
本作発表後、ヒートは日本のメタル・フェスティバルに出演し、ライヴでその姿と楽曲を披露した。2010年には2作目「フリーダム・ロック」を発表し、本作で披露した音楽性に加え、新たな手法も交えたサウンドを提示した。その後、ヴォーカリストの脱退というハプニングに見舞われるが、新たなシンガーか加入し3作目「アドレス・ザ・ネイション」を発表。今のところ、この3作目が最新作となっている。へヴィなサウンドが未だ高い人気を誇っている現在の音楽シーンにおいて、ヒートが披露しているような正統派ロックで勝負をするのは厳しい。だが、バンドは信念を貫き、本作のジャケットで描かれた、その「夢」に向かって一歩一歩、前進している最中である。
では、ヒートのデビュー・アルバムより「キープ・オン・ドリーミング」↓↓
http://www.youtube.com/watch?v=FX8_A1BNlWs&playnext=1&list=PLD808E925C4F2CA79&feature=results_video
シャープな雰囲気を兼ね備えた「ストレイト・フォー・ユア・ハート」↓↓
http://www.youtube.com/watch?v=ZmLBCdemtkY
日本盤のみに収録「ステイ」↓↓
http://www.youtube.com/watch?v=PtTfnkyHzQ8
という訳で、今回はLucika angelさんに紹介したいバンド特集でした。既に御存じのバンドだったりして・・・!??