ムーブ
劇団 「前回の記事は『贅沢な楽しみ』ということで
古武術の歴史的な変遷に触れながら、
この国もいつ壊滅するかわからないし
自分で情熱を傾けられる好きなことを
するのが一番だと思います。
古武術は現代日本では
あまり役に立たないけれど、
そういうものに時間と情熱を注ぐのは
逆に贅沢な生き方だと
わたしは感じるわけです。
とCSさんの感想を述べていたんですよね。」
CS 「ハイ、そうです。」
劇団 「ボクしてはCSさんの、
40,50代の男性受講者が
筋力や反射神経が
必要な空手やボクシングでなく、
古武術に興味を持つ。
というのが印象的でした。」
CS 「こう言っては失礼ですが、
一般的に古武術家の身体は
ショボいです。」
劇団 「(驚異のカラダ革命)と言いながら
ガリガリの老人のカラダです。」
劇団 「それに比べて
さすがボクシング世界4階級統一王者
井上尚弥の身体はモノが違いますね!」
「でもミスディレクションとか
古武術の技を使って
総合格闘技のリングで
蹴りや寝技もありなら
甲野善紀が古武術の体術を使って
井上尚弥に勝てる確率は
どのくらいあると思いますか?」
CS 甲野が勝てるわけ
無いじゃないですか!
「甲野善紀なんて井上尚弥のジャブ一発で
吹っ飛ばされて終わりですよ。」
「猪木アリ戦みたいに、甲野が寝っ転がっても
横っ腹に蹴り入れられてジ・エンドですよね。」
CS 「井上尚弥のフットワーク技術はスゴイから
甲野は絶対に捕まえられない。」
劇団「そんなスゴイんですか?」
CS 「わたしは
WBA世界ジュニアフライ級のタイトル
防衛記録13回を持つ
具志堅用高が好きで
たまに昔の試合動画を観たりします。」
「以前、パダワンFさんに具志堅用高の話をしたら
(この人、お笑い芸人だと思っていましたぁ~。)
と言われて驚いた思い出があります。」
劇団「ボクもそう思ってましたよ(笑)」
CS 「特に具志堅がロープ際に追い込まれた時に
フワッと浮き上がるようにして
一瞬で身体を入れ替えるムーブが好きなんです。」
(具志堅用高・動画↓)
CS 「そんな全盛期の具志堅が
階級が4つ上の井上尚弥と
スパーリングしたとしても
今の井上尚弥のフットワークには
ついていけないでしょうね。」
(井上尚弥・動画↓)
CS 「それだけ井上尚弥のムーブは素晴らしい。」
「彼がそれぞれの格闘分野の専門家をつけて
タックルの切り方とか
ローキックの対処法を研究したら
一流の総合格闘家でも手を付けられないでしょう。」
劇団「でもCSさん、古武術はミスディレクションを
使うから強いって言ってたじゃないですか?」
CS 「強さの質が違います。」
「古武術の動きも色々あるのですが、
ミスディレクションを使った
独特のムーブがあります。」
「例えば、↓の①動画の武術家の動きは
ボクシングのような筋力主体の
フットワークを使わずに
脱力と重心移動で気配を消しながら
間合いをいきなり縮めることで
トリッキーな動きを実現しています。」
①動画
CS 「さらに↓②動画の7:00~の部分では、
筋肉の力を使わずに脱力と遠心力を利用して
相手の体勢を崩す動作が紹介されています。」
②動画
劇団「うーん、確かにこれなら
ロードワークや走り込みしたり、
筋トレして鍛える必要ないですね。」
「それであんなショボい老人の身体に
なっちゃうわけか。」
CS「見方を変えれば、
これこそが筋力を使わない日本古来の
古武術のムーブの素晴らしさとも言えます。」
CS 「①②動画の武術家の方は素晴らしい技術を
伝えているわけです。」
「ただ、こういった技術に
さらにミスディレクションを足すことで
効果を増している流派もあります。」
劇団「どういうふうに効果を増すんですか?」
CS 「例えば、
ミスディレクションを使う流派の武術家が、
立会(闘い)で相手に歩いて近づいて行く。」
「その時点で相手は術にかかっています。」
劇団「歩いて近づいた時点で術にかかっている?」
CS 「武術家が歩いて相手にまっすぐ近づいていく。」
「でも、まっすぐじゃないんです。」
劇団「意味がよくわかりません。」
CS 「右に10度という感じで
微妙に角度をつけて歩きます。」
劇団「なせ角度をつけるんですか?」
CS 「人が目で見た景色は網膜に映り
視神経を通して脳に送られるのですが、
目(=網膜)自体は
平面的な視覚情報としてしか
受け取れません。」
CS「その平面的な視覚情報を
脳が瞬間的に処理して
奥行きのある立体感のある映像として
脳内で再生しているわけです。」
「例えるなら、
キャンパスに描かれた絵を
AIがカメラで取り込んで
3Dプリンターで造形化する
みたいなものでしょうか。」
CS 「脳は平面的な情報しか取り込めないため
微妙に歩く角度をズラす事によって、
相手の脳は
実は右に10度ズレて近づいてくるのを
自覚できず正しい距離感(=間合い)を
把握できなくなる。」
「これが歩いて近づきながら相手にかける
ミスディレクション(=術)です。」
劇団「角度がズレて歩いてきたら
相手もわかりそうな気がしますが。」
CS 「例えば、
10度右にズレて歩くとしたら
ズレている10度の分
微妙に顔や肩を傾けながら歩く。」
「もちろん、歩幅も微妙に左右で調整します。」
「それを見ている相手の脳は
真っすぐ歩いているように
脳内補正しながら映像を再生します。」
「結果、距離感(=間合い)がズレて
攻撃を避けたつもりで
やられてしまうんです。」
「もちろん術者はこういう歩き方を
自然と出来るように
何千、何万回と練習します。」
劇団「こんな事考えたこと無いな!」
CS 「わたしはこの現象に興味があり
調べてみたのですが、
強制遠近法という原理を
利用していると考えています。」
「劇団さん、こんな写真を見たことありませんか?。」
劇団「昔、友だちとふざけて
こんな写真を撮った覚えがあります。」
CS 「これは脳が実際の正確な距離を
目視で測れない構造を利用した
錯視の一種で強制遠近法といいます。」
CS「映画『ロード・オブ・ザ・リング』では
この強制遠近法を利用して
小人族(=ホビット)のフロドが、
魔法使いガンダルフよりも
小柄に見えるような特撮効果が
演出されています。」
CS「網膜の仕組みや脳の機能を全く知らない
数百年前の日本の武術家が
強制遠近法による錯視を利用した技を
生み出していたわけです。」
「海外でこんな細かい技を使った古武術は
今まで見たことが無いです。」
日本人ってスゴイと思いませんか?
どんな分野で何をしても
ミリ単位以下の
細かい差異にこだわって
最後は職人になるわけです。
まさに『職人民族・ニッポン』ですよ!
※次回の記事更新日は2月10日になります。
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