(前回の関連記事は「治療ノート
」です)
一流の条件
前回の記事では、わたしが病院に勤務していた時に治療ノートを利用して、
患者ごとに自身が受ける邪気量を記録していた話を紹介しました。
記録を開始した当初に邪気を測定する目安としていたのは、
(1)会陰のあたたかさ
(2)手のあたたかさ
(3)足のあたたかさ
という3つの項目です。
ただ、3つのみの体感覚チェックを行うだけでも
患者ごとの邪気量の違いが把握できます。
例えば、
〈治療前〉
(1)会陰のあたたかさ⇒50
(2)手のあたたかさ ⇒60
(3)足のあたたかさ ⇒30
であれば、
温感の合計は
(1)+(2)+(3)=140となります。
さらに
〈治療後〉
(1)会陰のあたたかさ⇒20
(2)手のあたたかさ ⇒40
(3)足のあたたかさ ⇒10
と変化していれば、
合計(1)+(2)+(3)=70となります。
この治療前と後の変化の差を計算すると
治療前の温感(140)-治療後の温感(70)=70
結果、治療によって70の温感が消失したということが
わかります。
わたしがこう書くと、
「そんな細かい温感の違いがわかるわけないだろう!」
という人がいるかもしれません。
しかし、人間は精密機械よりも微妙な誤差を感じ分ける
能力を有しています。
「きさげ加工」という言葉があります。
これはノミのような工具を使い金属を削ることで、精密機械でも
作り出せない完全な平面を作り出す技術です。
↓は「「きさげ加工」の関連記事です。
愛知県豊橋市にある本社工場を見学させてもらった。
巨大な工場の一角では、「きさげ」という作業が行われていた。
まったくの平面にしか見えない金属片2つを擦り合わせると、
ほんの少しだがすき間ができる。
これを完全な平面にするため、髪の毛ほどもないわずかな
歪みを手作業で削っていく。
擦り合わせ、あたる部分を削る―繰り返すことおよそ半日、
一分の狂いもない平面に仕上がる。
「愛知の名工」にも選ばれたその熟練工は造作なく
作業を進める。
勤続59年、75歳。その手は1000分の1ミリ単位の調整を
可能にするという。
普通一般的な考えでは、機械で金属を削るのと、ノミを用い
人力で削るのなら、機械を使った方が断然、平らな金属面を
削りだせる気がします。
しかし、実際は逆で、機械では完全な平面は削れないわけです。
また、その金属を削る精密機械自体にも職人が手作業で
作り出す部品が使われています。
工場で大量生産されるものはすべて「金型」から
生み出されています。
「金型」があるから工場では同じモノをどんどんつくりだすことが
できるのです。
とはいえ、精密な金型は1000以上のパーツから成り立つものが
ほとんど。
機械化できない手作業で、簡単に組み上げられるものでは
ありません。
しかも、組み立てには1000分の1ミリ(ミクロン)単位の精度が
必要です。
組立工は、自分の指先で1000分の1ミリの違いを感じ取り、
パーツを取り付けていきます。
以前、わたしは治療家の手の感覚の鍛錬法についての
記事を書きました。
例えば、わたしが知っている指圧師が見せてくれた手の平の
感覚の鍛練法があります。
その方法は、ます最初に電話帳のベージの上に髪の毛一本を
置きます。
次にその上に1枚ページを重ねます。
そして、目をつむった状態で手のひらの感覚だけで、重ねたページ
の上から髪の毛がどこにあるかを探し当てるわけです。
これを1枚ずつ増やしながら手の平の感覚を磨いていきます。
彼の場合は10枚以上重ねた上からでも余裕で髪の毛を探し当てて
いました。
これも「自分の指先で1000分の1ミリの違いを感じ取る」能力に
共通した超感覚と言えます。
ただ、わたしから見るとどんな分野でも1流の人は、常人では
不可思議に思えるような超感覚を持っています。
例えば、イチローが150キロのスピードで不規則なシュート回転が
かかっているボールをバットでとらえて、二塁手とライトのちょうど
真ん中あたりの空間にポトン!と落としてヒットにする。
この時のイチローがスイングのスピードやバットの角度、手首のの返しと
いった動作を微妙にコントロールする感覚には、職人が1000分の1ミリの
違いを感じ取りながら金属を削る精密さと共通するものがあります。
逆に、この感覚が無い打者は打球がバットに当たっても、
ただの外野フライに終わってしまいます。
こうして年棒5億円を稼ぐイチローのような1流選手と、打率2割台で
解雇される2流以下の選手の差がつくわけです。
これはどんな分野でも同じです。
一流の投資家は一般人が見逃すような市場の微細な変化を
感じ取り投資に反映させる。
一流のギタリストは音色やテンポに微細な揺らぎを与えることで
聴くものに独特のグルーヴ感を与える。
一流の俳優は絶妙な間の取り方で、演じている役に応じた
存在感を観客に感じさせる。
このように一流の人間は普通人が理解できないレベルで勝負している
わけですから、同じ分野のライバルたちが勝てるわけがありません。
要するに、一流になるためには自分の内部感覚を研ぎ澄まして
超感覚まで高めることが必要不可欠な条件となるわけです。
それではどうすれば微細な変化が感じられるようになるのか?
以下は、指先で1000分の1ミリの違いを感じ取る金属組立工に
「どんな人が向いてるのか?」という質問をした記事です。
(手先の不器用な人は無理?)そんなことはありません。
むしろ、手先の器用さは必要ないと、今回取材した
企業のベテラン組立工は言います。
手先が器用でなくても経験を積めば誰でも覚えられる、
と言うのです。
「やる気」や「前向きに挑戦しよう」とする気持ち、
「自分の頭で考えよう」とする気持ちこそが大事だと
いいます。
わたしも気功指導をして伸びていく人を見ていると
上記と共通した特徴を感じます。
伸びるタイプの人間には、
「自分の身体感覚を感じ取ろう。」
という意思(やる気)があります。
例えばわたしが、
「会陰のあたたかさ、手のあたたかさ、足のあたたかさの
違いを数値化して感じ分ける癖をつけるといいですよ。」
とアドバイスをするとそれを実行します。
それも
「この前、○○温泉に行ったら、その後3日間は
会陰の温感が+5アップしていました。」
「また、機会があったら温泉に行ってきます。」
とか、
「いつも会社に近づくと手足の温感が-3下がります。」
「会社の中の人や場所に注意して原因を探ってみます。」
という感じで、前向きに取り組みながらも楽しんでいる
雰囲気があります。
おそらく各分野で一流になる人達も、このように前向きに
日々の作業をに取り組みながら感覚の変化に意識を
向けることで超感覚を開いていったわけです。
ただ、こういったことがどうしても出来ないタイプの人がいます。
わたしがよく受講者に例えとして話すのですが、
イチローが素振りをする際に、身体感覚に意識を研ぎ澄ませ
ながら、さまざまなケースをイメージして一振り、一振り、微細に
フォームを変化させながら練習するのに対して、
何も考えず、イメージも身体へのフォーカスもなしに、ただ1時間、
ひたすら素振りを続けて、
「今日は1000回素振りしたから自分はうまくなった。」
と自己満足しているタイプがいます。
わたしは受講者には、
「神秘行で結果を出したいのなら、イチロータイプを目指した方が
いいよ。」
と話したうえで、
(1)会陰のあたたかさ
(2)手のあたたかさ
(3)足のあたたかさ
という3つの項目を数値化する癖をつけるように勧めています。
(熱感を感じにくい人は、替りに帯電感や圧力感を
数値化するように言います。)
これが一流の条件を身に付けるための、最も簡易、かつ
効果的な方法です。
「数値化する。」と言っても、温感というものは主観的な感覚ですから、
その人が感じるままに数字にすればいいだけです。
これは職人が1000分の1ミリの違いを感じ分けるのに
比べればどうってことない簡単な事です。
わたしから見れば、本人にやる気があるか、ないかだけの
問題です。
しかし、これだけの事がどうしても続かない人がいます。
例えるなら、何も考えないでひたすら素振りを1000回するのが
好きなタイプです。
わたしはこういうタイプの人がいた時は、
これはもう、その人の性格だからしょうがないな。
と割り切ることにしています。
※次回の記事更新日は3月20日になります。
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