(前回の関連記事は「邪気の防護服 」
です)
邪気のスカウター
前回の記事では、
的確に患者の邪気の部位を探し当て、そこに正確に鍼を刺し
邪気を100%抜き去ることができる。
さらに邪気が患者から抜けたき去った程度を自覚化できるのが
優秀な鍼灸師である。
ということは、優秀な鍼灸師であればあるほど、患者の邪気を
100%全て吸収する。
という事について説明しました。
わたしは病院に勤務していた時代から気功を行っていたのですが、
当時、気功の研究の一環として東洋医学関連の書籍をヒマな時に
よく読んでいました。
仙道研究家 高藤聡一郎氏の著書『タオ健身法』を読んでからは
湯液学(漢方薬)、鍼灸(特に経絡治療に関する本)なども読むように
なったのですが、その時、不思議に思う事がありました。
それは病人から邪気を抜く方法しか書かれていないことです。
これはちょっと考えたらわかることだと思いますが、職場の同僚鍼灸師が
治療している時の波動の変化を子細に観察していたところ、鍼を通して
病人から邪気を抜くと、当然抜かれた邪気は鍼灸師の肉体に移動していました。
治療を続ければ続けるほど邪気は鍼灸師に蓄積していくわけです。
それなのに、鍼灸の書籍では鍼灸師が吸収した邪気の行方に
ついては全く触れられていません。
ここで、鍼灸師が治療で邪気を吸収して蓄積する流れについて、
例えを出して説明してみます。
ここにぎっくり腰で動けなくなった30代の会社員Aさんが
いたとします。
彼は仕事で扱う重さ20kg程度の機材を運んでいる時に
ぎっくり腰を発症して動けなくなりました。
そこで休みを取って自宅で1日休んでいたら何とか歩けるように
なったのですが、痛みが取れないので近所の整形外科に行きました。
レントゲンやMRIをとってもらい検査しましたが、特に異常は
見つからず、筋肉の疲労という事で痛み止めの薬と湿布をもらって
帰ってきました。
そうして1日様子を見てみましたが、仕事で機材を運んだり出来る
ほどには症状が回復しません。
そこで同僚から紹介された鍼灸院を訪ねました。
ここでAさんの痛みの原因となっている腰痛の原因の邪気を数値化して
100とします。
Aさんを治療した鍼灸師は意図的に鍼を通して邪気を抜くことが
出来る優秀な治療家で、初回の治療で80の邪気を抜くことが出来た。
すると痛みも8割軽減して20の軽い痛みになり、Aさんは
「多少の痛みは残っているが、これで仕事にも復帰できそうだ。」
と喜んで帰っていきました。
しかし、職場に戻って体を動かしているうちにまた腰の調子が悪くなって
痛みが20⇒60まで戻ってきた。
このままではぎっくり腰が再発しそうなので再び来院しました。
そこで2回目の鍼治療を受けると痛みがまた20に戻りました。
まとめますと、
最初は100の痛み
↓
初回の治療で20に下がる (-80)
↓
仕事にもどったら痛みが60まで戻る (+40)
↓
2回目の治療でまた20に下がった (-40)
と変化しました。
そして、鍼灸師は、
「仕事を一ヶ月ほど休んで自宅で安静にしていれば腰痛は完全に治る。」
と言うのですが、そんなことをすれば閑職に回されてしまいます。
結局、Aさんは1週間に1回程度の頻度で定期的に来院して、完治は
できなくてもいいから、腰の痛みを20程度に抑え込む選択をしました。
一般の鍼灸院に通ってくる患者さんって大体こういう感じです。
まるっきりの病人と言うわけでもないのですが、腰や肩などに局所的な
痛みを抱えていて、鍼灸師は定期的に邪気を抜くことになります。
このケースでは、初回の治療で鍼灸師は80の邪気を吸収しました。
そして、2回目以降は平均して40程度の邪気を抜いています。
このままAさんが定期的に週に1回のペースでで来院しつづけるとして、
鍼灸師が1年間に彼から吸収する邪気量を計算すると、
最初の月⇒初回の邪気量80+2回目以降(邪気量40×3回)=200
以降の月⇒(邪気量40×4回)=160
これを1年分で合計すると、鍼灸師はAさんから合計1960の邪気を吸収する
ことになり、
1年間に月4回で、計48回治療を受けるとすると
1960÷48=1回あたりの治療で平均40程度の邪気を受ける
ことになります。(正確には40.8)
(もちろん、実際に治療で受ける邪気の数値はその時々で変動しますが、
ここは思考実験として平均化して40と考えます。)
すると次に、
鍼灸師って、1年間で何人位の患者を治療して、トータルでどの位の
邪気を吸収するのかな?
という疑問が生じました。
そこで、「開業した鍼灸師が1年間に治療する人数」について考えてみました。
ちなみにここで言う鍼灸師とは、鍼灸師の資格と柔整師の資格を
両方持っている柔整鍼灸師ではありません。
純粋に鍼灸1本で開業している鍼灸師です。
保険を使わない自費治療の鍼灸院の治療費の相場は
大体3000~4000円くらいです。
ここで平均治療費を間をとって3500円とすると、
鍼灸師の平均年収÷治療費(3500円)=1年間に治療する人数
となります。
ここで現在の鍼灸師の平均年収がいくらか?という疑問が湧いてきます。
ちょうど、受講者で鍼灸師の資格を持っている方(実際の治療は手技による
経絡治療を行っている)に訊いてみたところ、開業して成功した鍼灸師の
平均年収は大体400~500万円ということでした。
しかし、それは20年前の話で、現在は規制緩和で専門学校が乱立して
鍼灸師がどんどん増えているそうです。
調べてみたところ、20年前の鍼灸の国家試験合格者数は2098人でした。
これが2013年度の合格者数は5157名と2.5倍に増えています。
ちなみに、最近マスコミなどでよく「弁護士が余っている」という
話をよく聞きます。
司法制度改革で急増して競争が激化した結果、2012年の弁護士のうち、
年間の所得額(収入-経費)が70万円以下の弁護士が全体の約20%
⇒5508人もいるそうです。
高学歴かつ難関の司法試験を合格した人間の2割の年間所得が
一般のフリーター以下というのは衝撃的です。
ちなみに平成25年度司法試験の合格者は351名でした。
弁護士は鍼灸師の10分の1以下の合格者数でも飽和状態になるわけです。
ただ、弁護士という職業の特殊を考えて別の業界と比べてみます。
そこでコンビニ並みの過当競争と言われている歯科医師について調べてみると、
2013年国家試験の合格者数が2366人です。
ここでも鍼灸師は歯科医師の2倍以上の割合で増えています。
次に、
という事は、20年前から鍼灸師ってどのくらい増えているのかな?
と、この20年間の鍼灸資格取得者の総数を計算してみたら、なんと
63382人になっていました。
この20年間で鍼灸師は6万人も増えていたんですね。
ここでさらに、鍼灸師が営業するうえでライバルとなる柔整師(整骨院)の
合格者数も調べてみました。
すると、柔整師は20年前の国家試験の合格者数963人に対して、
2012年の合格者数5227人と、何と5倍以上も増えていました。
街を歩いていると、やたらと整骨院を目にするのは当然だったんですね。
わたしが住んでいる地域では、ここ数年、TVや映画館の予告の合間に
医療専門学校の柔整科・鍼灸科の学科案内のCMが流されています。
それを目にしていると、
鍼灸も一般的に知名度が上がって鍼灸師を目指す人が
増えたんだな。
などと思ってしまいます。
というのも、わたしが小さい頃は、
鍼灸師⇒目が不自由な人がなる職業
という見方が一般的だったわけです。
そう考えると鍼灸師を目指す人が増えたのはいいことかもしれません。
ただ、逆の見方をすれば、マイナーな職業で目指す人が少なかったために
卒業後の病院への就職先も確保出来たし、開業後の競争率も低かったわけです。
また、鍼灸学校もわざわざCMなど流さなくても必要な定員数は確保できました。
それが規制緩和で専門学校が増えると定員割れを防ぐために、学校側もCMを
出すようになりました。
そして、そのCMを見て鍼灸師や柔整師を目指す人が増えて、業界全体を見ると
鍼灸師→2.5倍
柔整師⇒5倍
のペースで資格取得者がどんどん増大しているわけです。
結果、資格を取るために400~500万円の学費をかけたのに、開業後は
ろくに食べていけない鍼灸師が増えていくという現状になりました。
こうして見てみると、規制緩和が業界全体をどれだけ破壊するかという事が
よくわかります。
しかし、TPPを考えるとこれはコップの中でさざ波が立ったようなもの
なんでしょう。
将来、TPPによる国家規模の規制緩和で日本全体のあらゆる業種が
徹底的にやられるのは確実です。
今回の記事は邪気について書こうと思っていたのですが、
鍼灸師⇒2.5倍
柔整師⇒5倍
の割合で急増しているという事実の方が、わたしにとって邪気より
インパクトがありました。
話を邪気に戻しますが、以上の事実を考えると20年前のように
鍼灸師の平均年収⇒400~500万円
はあり得ないと思います。
ただ、患者Aさんを治療した鍼灸師は腕がいいので、鍼灸という職業への
リスペクトの意味も込めて、治療による年間収入を500万円としておきます。
すると
年収500万円÷1回の治療費(3500円)=1年間で1428回治療する
となります。
ということは、
月換算で119人
営業日を月25日とすると1日5人程度(正確には4.7人)を
治療することになります。
確かにわたしが知っている治療家を見ても、柔整師の資格を持たずに、
鍼灸一本で、かつ保険も使わずに1日5人程度の患者さんを維持している
鍼灸院はかなり成功している部類だと思います。
(それでも収入が500万円で、ここからさらに経費や税金が引かれる
わけですが。)
先ほどのAさんの例では、1回あたりに吸収する邪気量は40程度です。
そう考えると、
年間1428回の治療×邪気量40⇒57120の邪気を受けることになります。
こうして客観的に数値化して見ると驚きの結果になりました。
肩こり・腰痛の患者から1回の治療で鍼灸師が抜き去る邪気量を40として、
1年間で5万7千以上の邪気を吸収することになるわけです。
普通の肩こり・腰痛の一般人の邪気量を100としても
鍼灸師→57000
とまるでドラゴンボールの一般地球人とサイヤ人の戦闘力の差になります。
ドラゴンボールでは戦闘能力をスカウターという機械で測定します。
もし、邪気のスカウターが存在したら、鍼灸師はベジータ並みの高い
数値を示すのだと思います。
(もしかしたら、爆発するかもしれません。)
しかも、鍼灸に来る患者さんは肩こり・腰痛のみではありません。
西洋医学では効果が出なくなった末期の症状で代替治療として
鍼灸治療を受ける方もいます。
場合によっては、1回の治療で受ける邪気量は200、300、もしかしたら
1000まで行くこともあると思います。
するとサイヤ人どころか、ギニュー特戦隊やフリーザ・第一形態くらいまで
上がるかもしれません。
以上のように考えると、
鍼灸に関する書籍を読んでいて不思議に思う事がありました。
それは病人から邪気を抜く方法しか書かれていないことです。
と疑問に思うのは当然なのではないでしょうか。
しかし、こういった事を真剣に考えている鍼灸師ってあまり見たことが
ありません。
わたしはここに矛盾を感じます。
ただ、世の中を見ていると、みんな社会のいろいろな根本的矛盾に
目をつむって生きていますから、これはこれでいいのかもしれません。
しかし、鍼灸師と邪気の関係は興味深いので、次回の記事でも
引き続き説明します。
(もし、鍼灸師の方が今回の記事内容について質問してきても、
個別のメールに詳しく回答する時間がないため対応できません
のでご了承下さい。)
※次回の記事更新日は2月20日になります。
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