意外にハードな呼吸法
前回の記事では白隠禅師が禅病になった時の波動について
説明しました。
彼の場合は、
断食やハードな修行による肉体の危機的状況により
先天の気が覚醒。
↓
グラウンディング(地の波動とのつながり)が出来て
いないため頭部にエネルギーが集中。
↓
頭部のチャクラ(百会)が閉じているため、エネルギーが
行き場を失い脳(自律神経)がダメージを受ける。
という流れで、エネルギーのアンバランスが肉体・精神に
ダメージを与えました。
これに対して、以前の記事で紹介した65年前の中国人気功修行者
陳寛金さんの体験は以下のような内容になります。
三十歳になった1947年、友人に勧められて静養し、一日に三回、座功
(静座の気功)をやるようになった。
しかし、座っているときは雑念がどんどんわいてきて、呼吸はかえって
荒くなり、胸がなにかにふさがれたように堅くなった。
ちょうどその時、漢口の名医で、気功専門家の祝先生が北京から漢口に
もどってきたので、、さっそく訪ねて教えを求めた。
そして小周天の気功練習法を身につけ、それ以後ずっと練習をつづけた
のである。
彼が体調を崩した時の波動にシンクロすると、みぞおちから胸にかけて
筋肉の中に鉄板が入っているような硬い感覚が伝わってきます。
これは同じ修行法を行って症状が悪化した2人の気功修行者も同様で、
みぞおちの辺りで任脈が塞がっています。
(症例の1)
胡北省人民公社の陳某は日本の藤田静座法に倣って気功を練習したが、
コツ、秘訣にしたがわなかったどころか、肝臓の範囲に意念を集中した
ため、日が経つにつれて、気血が滞り、気がふさがって、座骨神経痛、
不眠、夢精などの症状が現われた。
(症例の2)
黄某は公社員であるが、もとは身体障害の軍人で、十二、三年前から
高血圧、胃病などの病気にかかっていたが、小周天の気功練習法を
三週間練習しただけで、胸がふさがってくさくさし、両足がだるくて
しびれるという自覚症状があったので、わざわざ教えを求めにきた。
わたしが独習していた時も、この「胸がなにかにふさがれたように
堅くなった」という症状に悩まされました。
この主な原因は2つあります。
1つは、腹式呼吸によって胸の筋肉に無理な力がかかったため
筋疲労で硬くなることです。
これは俗にいう肩凝りと同じものです。
「胸の筋肉が凝るのか?」と驚く人がいるかもしれませんが、
実際にわたしはこういうケースを何人も見てきました。
人間の身体は筋肉によって全身が繋がっていますから、1カ所の
筋肉の凝り(硬結)が全身に広がっていきます。
例えば、肩の筋肉の凝りが「肩→背中→胸」と伝わって
いったりします。
特に、強刺激の指圧やマッサージを毎日のように繰り返している人は、
筋細胞が潰されてまるでーフジャーキーのように硬くなっていきます。
こうなった人に体の状態を聞くと、
「首から肩、背中、胸にかけて重い鎧を着ているようだ。」
と答えたりしますが、ここまで全身の筋肉が凝った状態を元に戻すというのは
へたな内臓疾患を治すよりも難しいと言えます。
このように疲労やダメージで硬くなった筋肉は、ちょっとした動作で簡単に
壊れてしまいます。
10年ほど前の話しですが、当時わたしが勤めていた病院に首が動かなくなった
という30歳前後の男性の患者が通院していたことがありました。
彼はその数年前に交通事故で軽いむち打ちになったのですが、当時は
「多少、首が重苦しい感じになったな。」くらいの症状しかなく、デスク
ワークの仕事を問題なく続けていました。
それがたまたま職場の年末掃除で2時間ほど脚立に乗って天井を拭く
作業をしてから首が動かなくなってしまいました。
病院では彼に対してブロック注射・抗炎症剤・電気治療を行ったのですが
症状は改善せず、そのせいで長時間のパソコン作業が続けられなくなり
仕事を辞めてしまう結果となりました。
彼の場合は、本人に自覚はありませんでしたがむち打ちで首の筋肉に
ダメージが蓄積していたわけです。
一口に首の筋肉と言っても、胸乳鎖突筋、頭板状筋、脊柱起立筋、
僧帽筋、三角筋、肩甲拳筋、、棘上筋、棘下筋など、部位によって
様々な筋肉がそれぞれ異なった動きを分担しています。
彼が事故で痛めたのは上を見上げるときに働く筋肉だったため、
デスクワークでは特に問題は起きませんでした。
それがたまたま数時間行った天井を拭く動作による疲労がトリガーと
なって、事故で蓄積していたダメージが一気に噴出したわけです。
このように一見すると無自覚な筋肉の損傷が思わぬところで表面化
することがあります。
例えば、TVでスポーツコメンテーターとして時々見かける元巨人軍の
投手、宮本和知氏は追突事故によるむち打ち症が原因で引退しました。
医学的には手術が必要になるような目立った外傷はなかったのですが、
投手というデリケートな筋肉の操作が必要となる職業では、追突事故に
よって受けたダメージが球威やコントロールに致命的な影響を与えて
しまったわけです。
ちょっとした追突事故のダメージ一つでデスクワークが続けられなく
なったり、スポーツ選手が選手生命を絶たれたりします。
人間の肉体というものは意外と簡単に壊れるものなんです。
ただ、こう書くと、
「交通事故によるむち打ちならともかく、呼吸法で筋肉がダメージを
受けるのか?」
という疑問を持つ方がいるかもしれません。
この疑問に対するヒントとして「能に学ぶ深層筋トレーニング
」
という本があります。
作者である安田登氏は能楽師であると同時にロルフィングという
西洋のボディワークを学び、能の動作や呼吸法について解剖学的な
見地から解説しています。
彼の解説によると、一見するとゆったりとした動きにしか見えない能の
1つ1つの所作は、実は体の深部にある大腰筋・前鋸筋といった深層筋を
軸とした合理的な身体動作となっています。
この深層筋はここ数年注目されていて、ピラティスのようなダイエット法
(もともとはリハビリ運動法)や、アスリートのトレーニングにもコアトレ、
体幹トレーニングなどという名称で取り入れられています。
この中でわたしが注目したのは「骨盤底呼吸」です。
この呼吸法は正しい姿勢で骨盤の位置を調整した上で、イメージと
腹式呼吸により横隔膜と骨盤底筋群を動かします。
「能の所作で深層筋を鍛える」
呼吸に横隔膜が関係していることについては知っていましたが、
「骨盤底筋群が呼吸で動く」というのは意外でした。
実証主義のわたしは本に書いてある通りにイメージしながら骨盤底呼吸を
試してみたところ、確かに骨盤底(性器と肛門の中間の会陰付近)の辺りが
動いている感覚が伝わってきます。
「これまで腹式呼吸を行っていた時はこんなことは無かったのに、
イメージひとつでこうも人間の体の動きは変わるものなのだな。」
と感心したことを覚えています。
骨盤底筋群について興味がある方はこちら
をクリックしていただきたいの
ですが主な働きとしては、
骨盤底のすべての筋群は膀胱や尿道、子宮、直腸などのお腹の臓器を
下からしっかりと骨盤内臓器を支える。
(特に産後の女性の尿漏れ・直腸脱・子宮脱、男性はEDに関係が
深い。)
とされているのですが、神秘行の観点から見るとクンダリ二ー覚醒に
関係するムーラダラ・チャクラ(会陰)の部位と重なります。
わたしも先に述べたように骨盤呼吸を行っていた時には、やたらと会陰が
熱くなりクンダリ二ーが活性化したことを覚えています。
この骨盤底筋群を鍛えるもう1つの方法が「スクワット」です。
実はわたしは受講者にはスクワット(膝を痛めないハーフスクワット)を
日課とすることを勧めています。
今までクンダリ二ーが上昇した、もしくは活性化した受講者を見ていると、
わたしのアドバイスを守り、真面目にスクワットを毎日続けていた人が
多い傾向があります。
わたしもあまり無理な強制はしたくないので 実行しない人には、
それ以後は何も言いません。
ただ、わたしの意図としては、スクワットによって骨盤底筋群が鍛えられ、
ムーラダラ・チャクラ・内臓機能の活性化によりクンダリ二ーのエネルギー
量が増大することを狙っているわけです。
再び呼吸法に話が戻りますが、能で行われる骨盤底呼吸法は武息や
火の呼吸のようなハードな呼吸法に比べると、非常にソフトかつ静的な
メソッドです。
それでも体の深部にある深層筋をコントロールするだけの強い作用を
もっています。
逆に言えば、間違った方法で行えば体が深部からおかしくなってしまう
わけです。
そのため、能では呼吸法は代々師匠から弟子へと一子相伝に近い形で
伝えられてきたそうです。
そう考えると、一般に行われている調息のようなソフトな腹式呼吸法でも、
力の入れ具合によっては胸の筋肉が硬くなってしまう事は十分ありえます。
それにしても、一見するとかすかな呼吸でありながら、肉体に深いレベルで
作用する能の呼吸法は、まるでジョジョの奇妙な冒険1部・2部に出てくる
波紋法の呼吸のようで興味を惹かれます。
(最近、コメントでジョジョ・ネタばかり書いている影響がここでも出て
しまったようです。)
つづく
※次回の記事更新日は2月1日になります。

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