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「愛はいつも近くにいるよ。たとえ、だれかがすぐ近くにいなくてもね」
アミは言った。
それはとても美しい言葉に聞こえた。たぶん、あるていどほんとうだと思う。
でもぼくにとって、ビンカと遠くはなれていながら幸せを感じるのは、半分不可能なことだった。
それは彼女も同じだと言った。
「きみたちはひとりぼっちでいると、人生の魔法や、
その一瞬いっしゅんにこめられたすばらしさに対して心を閉ざしてしまうんだよ。
こうして、人生を楽しむことを見失ってしまうんだ。
ちょうど、"彼か彼女が自分のそばにいなければ、幸せになりたくない"と言っているようなものだよ。
よろこびのかわりに悲しみを選ぶなんて、おろかだと思わない?」
ビンカは別の見方をした。
「悲しみを選ぶわけじゃないわ、ただ、愛している人がそばにいないとそれはひとりでにやってくるのよ」
「愛している人がそばにいないと、悲しみが"ひとりでにくる"ように、きみたちが選ぶんだよ」
とアミは笑って、
「でも、中にはひとりだろうとふたりだろうと、いつもよろこびのほうを選ぶひとだっている。
こういうひとはたしかに賢者だよ。だれにも、なににも、たよることなく幸せになれるんだからね。
どんな中毒にもなっていない」
「中毒?」
「そう、だって、なにかに、あるいはだれかに依存しすぎるっていうのは、それがたとえ双子の魂でも、
お母さんでも、子どもでも、おばさんでも、ネコでも、好きな虫でもなんでもよくないことだよ。
だって、それは人々を奴隷化して、魂の自由をうばってしまうことになるからね。
でも、魂の自由なしには、ほんとうの幸せなんてありえないからね」
「じゃ、愛は中毒なの?」
とぼくはひどく混乱して聞いた。
「もし、幸せになるのがほかのひとしだいだとしたら、そうだよね」
「でも、それが愛というものよ? アミ」
そうビンカが言った。でもアミは同意しなかった。
「それは執着だよ。依存だし、中毒だよ。ほんとうの愛はあたえるものだよ。
愛するひとの幸福に、幸せを感じられることだ。いつも自分のそばにいることを強要したり、
ひとりじめしたりすることでなくてね」
【「アミ 3度めの約束」エンリケ・バリオス著/石原彰二訳 】
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“無条件の愛”は、いつも近くにある。
恋人や家族はもちろん、空気より、もっと近くに。
ひっきりなしの思考にほんの少し穴を開けて、それが流れ入るのを受け容れれば。
“感謝”は「それを受け容れます」という宣言だよ♪
それか、愛する人の幸せを心から祈っても、それは入ってくるよ♪