活動報告(アッシュ・J・ケニーの日記、マター1 その6) | とあるアークスの日常

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さて、ここまでマターボードの凄さというか、恐ろしさの鱗片を書き記したつもりだ。

気の遠くなるような広大な宇宙を旅するオラクル船団、そこで培われた技術は様々な奇跡を生み出した。

だがそれでも、時間を遡る境地に至るには、まだまだ時間が必要だろう。


・・・時間を遡るのに時間がいる。・・・自分で言ってて妙な気分になった。


何はともあれ、普通ならそう思う。

俺のような体を動かすことしか能がないような男なら、考える事もしなかったことだろう。

だが、マターボードの凄さと恐ろしさはまた別のところにある。


また、修了任務を例として出すことになるが、俺は先に二つの選択肢を選んだことを説明した。

北、東、西、その三択の内の二択だ。

1、北に進み、ゼノに救出される。2、東に進み、マトイと出会う。

この二つ。

まず、先に結論から話そう。

どちらの選択肢を選んでも、最後まで俺と行動することになったアフィンはどういうわけか、ゼノに助けられたことと、マトイと出会った事、両方の事を覚えていた。

だが、よく考えれば・・・いや、よく考えなくても、普通に考えれば、それはおかしな事実だと直ぐにわかる。


例えばマトイと出会う選択肢を選んだとしよう。

そうなると、北へ進むことはなくなり、ゼノに救出される事もなくなる。

マトイの命を救う代わりに、ゼノとエコーとの出会いを失うことになる。

反対もその然りだ。

・・・そのはずだ。


だが、ゼノとエコー、そしてアフィンは覚えていた。

俺の事、俺とアフィンを手助けしたこと。

そして、メディカルセンターではマトイが待っていた。


なんと言えばいいのか・・・。

まるで、俺が選んだ選択肢がそのままつながって、一つの事実になっているような気がしてならない。

ゼノに救出された後にマトイを発見したか、マトイを発見した後にゼノに救出された・・・そんな形に・・・。


整理しようと思ったら余計にわからなくなってきた。


とにかく、彼らは・・・もちろん当事者の俺も加えて、お互いの事を知っていた。

そして、俺が感じているような違和感は誰一人感じていない。


説教好きのジャンも、軽いノリのレダも、『見捨てられた少女』の話は忘れていた。

その代わり、『謎の人影』の噂話を俺に語りかけてくる。

アフィンは若干、彼が持つ記憶に違和感を覚えているらしい。だが、あまり気にしていない様子だった。

前向きで大らかな性格がそうさせるのか、あるいはマターボード自身の性質なのか。

・・・それはわからない。


ともあれ、俺は一枚目のマターボードを探索し尽くした。

そして、またショッピングモールのあの場所で、再びわけのわからない言葉と一緒に新しいマターボードが手渡された。

難しく、ほとんど理解のできない言葉の中で、彼女は言った『運命は替えられた』と。


・・・運命を冒涜する装置。


俺はその光の板を恐るようになった。

過去の出来事をまるごと改変してしまうのだ。恐れ戦くのが普通だろう。

ただ、それでもマターボードを手放すことはできなかった。

これも先に書いたが、このマターボードの示す先に、俺の『望む物』があるような気がしてならなかった。




だが、二枚目のマターボードを手渡された時、直ぐにそれを進める気にはなれなかった。

・・・なんの事はない。、ただ、恐ろしいと思った。その小さな板切れが抱える計り知れないパワーを。


しばらくは、ショップエリアにいる人たちの個々の依頼・・・クライアントオーダーを受け、アークスとしての経験を積もうとしていた。

中には、アフィンやゼノ、エコーの依頼もあった。

そして、それなりに親睦を深めることができたと思う。

・・・ダーカーが再び現れたにしろ、知り合う事になった彼らと行動を共にするのは楽しかった。

その時の俺は、マターボードの存在を忘れていたと思う。

そのまま、忘れていれば幸せだったのかもしれない。



・・・いや、それでも結局は思い出していたんだろう。




程なくして、再びマターボードを地図のように道しるべとして、あちこち歩き回り、飛び回る日々が始まった。

そして、マターボードは新しい可能性を提示した。

終了任務で分かれていた三つの選択肢、その最後の一つ。

岩に閉ざされた西へ続く道だ。


結局、マターボードを十一枚も抱え込む事になった今、俺は今でも思う。

この不思議な板は、俺をどこへ連れて行こうとしているのだろう。


もちろん、ただの『アイテム』であるそれは、何も答えてはくれなかった。