ビーチィ ヘッド | AIRPLANE NUT

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ブログタイトルは「ヒコーキきちがい」という意味です。航空ショーや航空博物館を見に行くのが趣味です。

現在、飛行可能なアブロ・ランカスターは英国に1機、カナダに1機存在します。近い将来英国のもう1機が加わりそうで、世界の政治情勢や経済とは裏腹にいわゆるウォーバードの世界からはうれしいニュースがたくさん聞こえてきます。映画、「ロード・オブ・ザ・リング」の監督、ピーター・ジャクソンさんはヒコーキ好きで、かつての「ダムバスターズ」をリメイクしたいという構想をお持ちだそうですが、飛行可能の「ランク(ランカスターの愛称です。)」が3機になればますますその話も現実味を帯びてくる気がしてわくわくしてきます。

 

そのカナダの1機が2014年の夏から秋にかけて大西洋を横断して英国を訪問、英国BBMF(バトル・オブ・ブリテン・メモリアル・フライト、英国空軍の正式部隊です。)のランクと合流して2機で英国各地のエアショーに姿を見せました。私は8月の終わりに英国南部、ショアラムのエアショーを訪れることにしました。

 

私はエアショー前日、割と早い時間に英国南部に到着、時間がたっぷりあったので有名なドーバーの白亜の岸壁を見に行くことにしました。英国南部にはセブン・シスターズという美しい岸壁を見られる場所があり、私が到着した駅、ブライトンからはバスで行けます。駅を出るとすぐにバスの発着所があり、路線図を眺めていると背の高い案内係のおじさんが「どこ行くの?」と声をかけてくれました。なんとなく話をしているうちに私がAirplane Nutだと気づいた彼は「ビーチィ・ヘッドに行くといいよ。」と教えてくれました。

 

2階建てのバスにずいぶんゆられて私は風の吹きすさぶビーチィ・ヘッドに着きました。なだらかな丘を海岸に向かって歩いていくと小さな碑が建っていました。それは第2次大戦中に命を落とした爆撃機の乗組員たちを追悼するためのものでした。

ここ、ビーチィ・ヘッドの上空を通ってヒコーキ乗りたちは出撃していったそうです。そしていわずもがな、多くの若者たちが2度とこの海岸を見ることができませんでした。これは他国のはるか昔の話ではありますが、外国人である私の胸にも深くしみこみました。爆弾を落として他国の人々を殺傷するのは悪いことです。ですが忠実に危険な任務を遂行した名もない若者には罪はありません。いつの世も犠牲になるのはそういった市井の名もなき善良な人々です。この寂しげな場所を教えてくれたバス会社のおじさんに私は感謝しています。