ニューヨーク(NY)市長選で34歳のゾーラン・マムダニ氏が勝利した。

 

マムダニ氏はイスラム教徒で自ら民主社会主義的な政策を掲げている。

 

目玉として打ち出している政策は以下のようなものだ。

 

・家賃の値上げ凍結

・今後10年間で20万戸の公的補助付き家賃規制住宅を新たに建設

・バスの無償化

・無料の保育サービスを、0歳から3歳未満の乳幼児にまで拡大

・5つの行政区それぞれに1店舗ずつ、市が運営するスーパーマーケットを試験的に設置

 

これらの予算を主に富裕層や法人への課税強化で賄うとしている。

 

結論から申し上げると、これらの政策を実現するのはかなりハードルが高いと考えている。

 

まず市長の権限だけで実現できるものは少なく、市議会や市運営委員会との調整が必要もなものが多い。

 

また富裕層や法人への課税強化という財源についても、既に富裕層がフロリダやテキサスなどに流出するのではないかという懸念がささやかれている。(ニューヨークの市の所得税収入の約4割は、保有資産が100万ドルを超える上位1%の富裕層が負担していると言われている)

 

マムダニ氏はかなりエッジの効いた政策を打ち出して、当初は泡沫候補だった立場からNY市長になった。

 

実現はかなり難しそうな感じはあるものの、NY市民の支持を集めたのである。

 

その背景を説明していく。

 

◆若年層の支持

 

こちらは今回のNY市長選の各地域別の結果だ。

 

 

細かくは割愛するが、富裕層が住む地域はクオモ氏が勝ち、ミドル層や低所得者層が住む地域は

マムダニ氏が勝ったという構図である。

 

年齢別で見ると40代以下は圧倒的にマムダニ氏、それ以上はクオモ氏が強いといった感じだ。

 

特徴的なのは日本円で年収2,000万円ぐらいのアッパーミドル層(今のNYで本当にアッパーミドルか微妙だが)もマムダニ氏を支持しているという点だ。

 

それぐらいニューヨークは普通の人が暮らすのに住みにくい街になっているということである。

 

ニューヨークの家賃の平均は月3,800ドル(約58万円)になっていると言われ、これもNY市民の家計を圧迫している。

 

マムダニ氏が当選したのは、生活が苦しい、とにかく何かを変えて欲しいというマグマがNY市民に溜まっていたとうことだろう。

 

◆ 動画やSNSを使った選挙活動

 

マムダニ氏を勝利させた大きな要素はYouTubeやTikTokなどの動画メディアやSNSなどでの選挙活動である。

 

特に動画はかなりの影響力を発揮したと言われている。

 

 

動画メディアやSNSの影響が大きいというのは最近の日本の選挙でも顕著になっているが、日本と異なるのは人口分布が日本ほど高齢層に偏っていないため、若年層が選挙に与える影響が日本よりもはるかに大きいという点である。

 

若者を無視すると選挙で落ちるという流れが出来てきている。

 

昨年の大統領選挙でもトランプ大統領が当選したのは、暗殺されたチャーリー・カーク氏のようなインフルエンサーが大きな影響を与えたと言われており、もう動画メディアやSNS(それに加えて米国ではPodcast)を無視して選挙で勝てる時代ではなくなったということだろう。

 

ただ、大資本を敵視しているかのような政策を打ち出しているマムダニ氏が、大資本であるアルファベット傘下のYouTubeやTikTokなどを使って支持を劇的に伸ばしたというのは悲しい現実でもある。

 

 

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AI・半導体関連銘柄一極集中相場
バンドワゴン効果はどこまで続く?

10/31、日経平均株価は1,085.73円高の52,441.34円で引けた。

同日の売買代金は8兆5,646億円(億円以下を四捨五入、個別銘柄も同じ)だが、売買代金上位銘柄は以下のとおりとなっている。

1 レーザーテク(6920)5,874億円
2 アドテスト(6857)4,999億円
3 SBG(9984)4,918億円
4 フジクラ(5803)3,028億円
5 キオクシア(285A)2,614億円
6 ニデック(6594)2,405億円
7 日立(6501)2,350億円
8 三菱重(7011)2,153億円
9 ディスコ(6146)1,787億円
10 東エレク(8035)1,643億円

売買代金上位10銘柄のうち。ニデック、日立、三菱重以外の7銘柄がAI・半導体関連銘柄になっている。

7銘柄の売買代金の合計は約2.5兆円で、東証全体の売買代金の約3割を占める。

日経平均の上昇に対する各銘柄の寄与度を見てみると、9/8の終値4万5,000円から10/29に5万1,000円を超えるまでの期間で、SBG、アドバンテスト、東京エレクトロンの3銘柄だけで上昇に対する寄与率は8割弱となっている。

極めて少数の限られたAI・半導体関連銘柄が株価を押し上げているのが分かる。

◆ バンドワゴン効果

「バンドワゴン効果」という言葉をご存じだろうか?

 

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10/30、トランプ大統領と習近平主席の韓国で会談した。

 

・米国側は中国が合成麻薬フェンタニルの違法取引を取り締まることを条件に対中関税を10%引き下げ、47%とする。

 

・中国側は米国産大豆の購入を再開し、レアアース(希土類)の輸出を継続する。

 

上記の内容で合意した。

 

会談の成果についての評価はいろいろな見方があるが、中国側はレアアースという強力なカードを交渉材料に使っている。

 

◆ レアアースとは何なのか?

 

レアアース(希土類)は以下の17元素から構成されている。

 

ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)

 

重希土類と軽希土類に分けられ、軽希土類の方が比較的多く産出され、重希土類の方が産出量が少なく高価とされている。

 

レアアースは電気自動車のモーター、風力発電、スマートフォンなど、現代のハイテク産業に不可欠な資源として重要だ。

 

以下、各レアアースごとにどのような用途に使われているかを記載する。

 

軽希土類(Light Rare Earth Elements, LREE)      
1 ランタン La   光学ガラス、カメラレンズ、NiMH電池
2 セリウム Ce   触媒、研磨剤、自動車排ガス浄化
3 プラセオジム Pr   磁石、着色ガラス、航空機用合金
4 ネオジム Nd    高性能磁石(EV・風力発電)
5 プロメチウム(放射性) Pm  原子電池(非常に稀)
6 サマリウム Sm   強力磁石(Sm-Co磁石)、原子炉制御材
7 ユウロピウム Eu   蛍光体(ディスプレイ・照明)
8 ガドリニウム Gd  MRI造影剤、磁性材料、原子炉制御材

 

 重希土類(Heavy Rare Earth Elements, HREE) 
9 テルビウム Tb    高温磁石(磁気安定化)、蛍光体 

 

10 ジスプロシウム Dy    高性能磁石(高温でも磁力保持) 

11 ホルミウム Ho  レーザー発振材料 
12 エルビウム Er   光ファイバー増幅器、ピンクガラス 
13 ツリウム Tm   医療用レーザー、放射線源 
14 イッテルビウム  Yb   光ファイバー、合金添加剤 
 15 ルテチウム |Lu   PETスキャナー、触媒、医療用途 

 

その他(同様の性質を持つ元素) 
16 スカンジウム Sc   アルミ合金、燃料電池 
17 イットリウム  Y  蛍光体、超伝導材料、セラミック 

 

下記の様にレアアースの精算量の70%弱を中国が占めている。

 

 
また精製・分離精錬については90%以上を中国に依存している状況だ。(その他はオーストラリアやマレーシアなど)
 
◆ 中国依存から脱却できるか?
 
レアアースを中国に依存しいている限り、米国を始めとした他国は経済安全保障上の懸念を抱えることになるし、中国は外交のカードに使い続けてくるだろう。
 
それではレアアースの中国依存からの脱却は可能なのか?
 
かなり難しい道であることは間違いない。
 
しかしながらこれだけリスクが顕在化してしまうと、徐々にでも依存度を下げていく流れにならざるを得ないだろう。
 
中国依存度を下げていく方策としては、以下の3点が考えられる。
 
1. 採掘、精製・分離精錬のバリューチェーンを中国以外の他国に作っていく
 
レアアース自体は中国以外でも埋蔵されており、例えば日本においても南鳥島沖の海底に埋蔵量世界3位となる約1600万トンのレアアースが眠っていることが確認されている。
 
問題はコストや環境負荷などだ。
 
先進国では採掘に対しての労働コストが高く、環境規制が厳しいなどの問題がある。
 
結果として中国よりもかなり高いものとなってしまう。
 
精製・分離精錬はもっと深刻で、中国以外に国は精製・分離精錬する設備そほぼ持っていない。
 
技術については日本企業は持っているので、資金と期間を掛けて日本企業が中国以外の国に提供すれば可能かもしれないが
かなりの時間が掛かる。
 
これだけ一国に依存したバリューチェーンを変えていこうというのはかなりハードルが高いことは間違いない。
 
2. 都市鉱山を利用する(リサイクル)
 
既に製品に使われているレアアースを回収して再利用する方策だが、これも回収するコストや製品からレアアースを取り出す技術も確立する必要がある。
 
2010年に閣諸島沖の日本の領海で、中国漁船による海上保安庁の巡視船への衝突事件が起きたことでレアアースショックが起きた。
 
レアアースを中国からの輸入に依存しているリスクが顕在化したことから、日本では再利用はかなり進んでおり、技術も確立されている。
 
但し、量的にはまだまだ中国依存を代替できるものとまでは言えない。
 
3. レアアースを利用しない技術(レアアースフリー)に切り替えていく
 
これは日本ではかなり技術開発が進んでいる。
 
例えば、モーターなどに使う高性能磁石であるネオジム磁石を製造するにはレアアースのネオジム(Nd)が必要だが、大同特殊鋼などがレアアースフリーの高性能磁石の製造に成功している。
 
技術が進んでいけば、レアアースフリーの製品が増えてくることで、レアアースの中国依存のリスクを軽減することができるだろう。
 
いずれも直ぐに中国依存が凄く下げられるというものではないが、数年~10年単位で取り組むことによって、中国依存を下げていく必要はあるだろうし、間違いなくやらざるを得ないだろう。
 
日本の上場企業では、1については双日東洋エンジニアリング、2についてはDOWAホールディングスアサカ理研、三菱マテリアル、3についてはTDK、大同特殊鋼などに注目している。