金沢文庫です。日本最古の図書館です。
金沢文庫には実際に書庫があり、その貴重な蔵書を閲覧することができるなんて、ぜーんぜん知りませんでした。
たまたま金沢文庫に鎌倉の観光史の展示を見に行ったら展示室の隣に資料室があって、日本国史関連の書籍がビッシリ。
思わず小躍りしてしまいました。
閲覧に来る人が少ないようで穴場ですよ。ここは。
閉館30分前に滑り込んだので、前々から機会があったら調べようと思っていた幾つかの書籍だけをチェックして、その間に司書の方に閉架書庫内の資料を探しておいて頂きました。
《和名抄》の地理部には不入斗の記載はなし。
《國史大辞典》には、
・かぞえあげるほどにもない村
・一村とするにたりない小聚落
・かつて貢租徴収の対象とならなかった地
を挙げた上で
被差別部落の領域を道路里数に含めず、駅と駅の距離長しとしたところからこのように称した旨が説明されています。
また同書の不入斗の項の参考文献には、
《古事類苑》地部一
《新編武蔵風土記稿》四三
《大日本地誌大系》
が挙げられています。
また、現代の調査史料として昭和三十七年に横須賀文化協会によってまとめられた《横須賀の地名》には、
「不入斗の文字にのみ地形の起源を求めるわけにもいかないのではないだろうか。」
とし、【不入斗=不入の免租地】説を挙げた上で、
「しかし今のところこれを解く史料とて無く判然としないのである。」
と結んでいます。
さらに、横須賀市の不入斗の由来については、《佐野不入斗両町ノ沿革》(昭和十七年)に、
「横須賀市不入斗町は往昔入山瀬郷の一小部落にして康平年間三浦氏一族衣笠城に拠り三浦を領地としたる頃、其豫備地として年貢免除の地となりしを以て之を不入斗村(年貢米を計りに入れずの意)と称し~」
という記述を見つけました。
と、いうことは横須賀の不入斗は何処かの神社に寄進した神田ではなく、非常時への蓄えという治政面の理由から免租地としていた訳ですね。
しかしこれも元は入山瀬郷と呼ばれていたことから、イリヤマズと発音する地名が先にあって、後から意味が通じるように免租地の扱いにした可能性も捨て切れません。
同じ事がこの度、新たに発見した《イリヤマズ》の土地についても考えられます。
千葉県松戸市下矢切字入山津
「矢切の渡し」で知られる矢切駅の構内のあたりがちょうどその地名の住所です。
さて、この地図の右端にもう一箇所、青い目印がありますね。
ここは、
千葉県市川市国分の《不入斗》です。
江戸川沿いにあるこの二つのイリヤマズの距離は僅か1.5km足らず。
もとは同じ由来の地名であった可能性は高いです。
私自身、谷口集落の地形に由来する「入山津」と、免租地や神田などの税制上の扱いを示す「不入斗」は別のものと捉えていましたが、もう一度調査し直す必要がありそうです。
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