サラリーマン時代、私の仕事のスタンスは、「全請け」(頼まれた仕事は断らず優先して対応していた)でした。
他部署からの依頼や相談は、どれほど業務を圧迫するものであっても、まずは引き受ける。それが私の仕事における「当たり前」のスタンスであり、困っている人から声がかかれば優先して応えるべきだと考えていました。
私自身、月100時間を超える残業をこなしていましたが、それは苦労というより、仕事が終わらないから仕方がないと捉えていたのです。
全請けを続けた結果、他部署との連携は深まり、現場と共に行う業務は格段に増えていきました。しかし、その裏側で、一番大切にすべき「自分のチーム」の状態を、私は完全に見落としていました。
■ 「自分基準」で進めていた、コミュニケーションの欠如
他部署との連携が増えれば、私自身はもちろん、チーム全員の業務量も増大します。 それにもかかわらず、当時の私は「部下とのコミュニケーション」を決定的に軽視していました。
・「自分がこなせているのだから、他のメンバーも同じようにできるだろう」
・「周りも残業しているのだから、当然ついてきてくれるだろう」
そんな風に、自分自身の仕事の基準を無意識に部下にも当てはめ、彼らが今どんな状況にあり、どんな思いで働いているのかを確認することを怠っていたのです。
「自分がいなければこの関係性は維持できない」という過信もありました。しかし、現場の声を聞かずに「自分基準」で突き進むスタンスは、部下たちを逃げ場のない状況に追い込み、チームを内側から崩壊させていきました。
■ マネジメント不足が招いた、部署からの離脱
その結果、起きたのは部下たちからの拒絶でした。
日々のコミュニケーション不足と、私の強引な仕事の進め方への不満。一人のメンバーが中心となり、部下たちが一致して「この上司の下では働けない」という意思を会社に示しました。
組織を整える立場にある人事部の人間が、自分の組織をマネジメントできず、部下から拒絶される。これほど情けなく、恥ずかしい経験はありません。会社が下した判断は、私を人事部内の別の役割である「労務課」へ異動させることでした。
そこで過ごした3ヶ月間、私はこれまでの価値観を揺さぶられる経験をします。
異動先の労務課は、仕組みと役割分担が明確で、ほぼ残業なしで業務が回る環境でした。一方、元いた部署は営業側との連携が多く、柔軟な対応が求められるため、どうしても個人の能力に依存しがちな側面がありました。
当時の私は、その「個への依存」を組織としてどうカバーするかを考えず、すべて自分基準の「個人の能力」で解決しようとしていた。
つまり、マネジメントを放棄していたのだと、異動して初めて気づかされたのです。
■ 3ヶ月後の復帰と、課せられた「新体制」
私が去った後、元の部署では声を上げたメンバーが業務を引き継いでいましたが、一人で抱え込んでいた複雑な調整や柔軟な対応が回りきらなくなり、部署が回らなくなってきておりました。結果として、3ヶ月という短期間で私は元の部署に戻ることになりました。
しかし、現場のメンバーには「たった3ヶ月で何が変わるのか」という強い不安がありました。そこで会社が下した決断は、かつての私のような「個人に依存した体制」を物理的に解消することでした。
・マネジメントの補完: 私のすぐ上に、統括役としての「人事副部長」を置く。
・業務の適正な分担: 私と同列のポジションに2名の担当者を新たに配属し、仕事を分ける。
「自分がいなければ回らない」などという考えがいかに身勝手な思い込みであったか。会社が用意したその新体制を見て、私は自分のマネジメント不足と、組織としての在り方を心の底から考え直さざるを得ませんでした。
■ この経験値を、今の活動に活かすために
この手痛い経験は、私にとって非常に大きな「経験値」となりました。
「上司が一人で背負い、部下と同じ視点に立たずに突き進むこと」は、決して正義ではありません。それは時に部下を追い詰め、結果として組織を壊すことにもなり得ます。
正直に申し上げれば、「部下とどう向き合い、どう信頼を築くべきか」という問いに、今でも明確な正解を持っているわけではありません。 私自身、今も日々試行錯誤を続けています。
ただ、自部署を壊し、居場所を失った痛みを知っているからこそ、実体験を伴ってお伝えできること、共に考えられることがあると確信しています。
・「個人の能力」に依存しがちな現場を、どう体制で支えるか。
・リーダーとして、どうやって現場と対話を重ねていくか。
もし、組織運営や働き方に迷いを感じていらっしゃるなら、私のこの「手痛い失敗」を反面教師にしていただければ幸いです。
私がなぜ、ここまで「舞台の裏方」としての役割にこだわるのか。 その背景にある想いや、仕事への向き合い方を以下のページにまとめています。ぜひ一度、覗いてみてください。
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