短歌はわずか三十一文字でものごとを表現するから、その対象をギューッと圧縮したり、あるいは一部だけを切り取ったりする。
ことが、多い。
でも、「ありまやま」について言えば、内容があるのは「人を忘れやはする」だけで、残りは前分おまけ。
おまけったって詩的おまけだから不要とかってわけじゃないけど、でもおまけ。
おまけというか、あそび。
それで良いと思うんだよね。
芸術ってのは、つまるところ、あそび。
「文学の力で分断の壁を打破したい」(イシグロさん自身は、そんなアホなこと言ってないけど)なんてのは、勘違いも甚だしい。
No.44 藤原朝忠
あふことの たえてしなくは なかなかに
ひとをもみをも うらみざらまし
No.58 藤原賢子
ありまやま ゐなのささはら かぜふけば
いでそよひとを わすれやはする
No.75 藤原基俊
ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて
あはれことしの あきもいぬめり
No.99 後鳥羽天皇
ひともをし ひともうらめし あぢきなく
よをおもふゆゑに ものおもふみは