古来、戦の中でも、撤退戦がいちばん難しいとされている。
たとえば、金ケ崎の戦い。
北近江の浅井長政に妹を嫁がせてまで背後の備えを盤石なものとし、信長は越前の朝倉義景討伐に向かう。
ところが長政の寝返りによって一転、大ピンチに陥る。
窮地を脱すべく大撤退戦を演じるが、逃げながら、つまり敵に背中を見せながら追撃を交わすのは用意なことではない。
まさに必死の覚悟だし、兵の統率も必要だし、臨機応変に敵と対峙しなければならない。
俗説では、この殿の大役をみずから申し出て全うしたのが、木下秀吉。
信長軍は命からがら逃げ伸びることができ、秀吉はこれを機に出世の足を速めることとなった。
そう。
撤退戦、殿を任されるのは、信頼と能力の証。
期待に応えることで、自分自身を一気に上のステージに進めることができる。
おもしろいじゃないか。