#87 by 藤原定長
村雨の 露もまだ干ぬ 槙の葉に
霧立ち上る 秋の夕暮れ
たぶん中3の時に受けた駿台の模試で、誰だか偉い文学者のおじさんが2人で和歌の解釈について論戦になった話が、国語の長文の問題で出た。
で、「秋の夕暮れ」というのは秋の時期の夕方ではなく晩秋の意味だという初歩的なことを知らなかった側のおじさんが、そのことを知らされてほうほうの体で逃げ帰った、そんな話だった。
なんでだか、30年以上経った今でも、その部分だけ覚えてる。
でも。
その時も今もそうなんだけど、僕には秋の終わりの景色というのが、今ひとつピンと来ない。
温暖化だ何だかんだって騒ぐ人がいない頃から、僕は10月中ぐらいは夏の名残を楽しんでいる。
基本、Tシャツ。
11月にはいるとさすがに袖のあるシャツを着るようになるけど、次に季節の移り変わりに気づくのは、クリスマスが近づいてダウンジャケットが恋しくなる頃。
だから僕には、秋の終わりなんて季節はない。
秋そのものすら、あやしい。
なので当然、秋の終わりの景色もなければ、それが物悲しいものだという印象もない。
僕には、この歌が何を詠んでいるのか、さっぱりわからない。