なぜアマがプロに勝てるのか。
勝てるわけないのに、なぜ勝てるのか。
ほんとなら、勝てるわけない。
情報量が全然違う。
「インターネットの発達でアマチュアでも容易に情報を得られるようになった」などと言う輩もいるが、そんなアホなことはない。
金融市場では、ニュースというのは通信社から発信された直後の数秒間だけ価値がある。
テレビでもラジオでもインターネットでも、2次配信されたニュースになど何の価値もない。
別の表現をするなら、タダで儲け話が得られるわけがない。
100万円の儲け話は、極論すれば、99万円払わないと得られない。
チャートにしたって、アマチュアがタダで見られるものに正確なものなどない。
正確なチャートを入手するのは、実はプロでも困難。
僕のようにほぼ市場で最高の情報環境にいたって、たとえばNZDJPYの正確なチャートなんか手に入らない。
USDJPYのチャートですら正確なものを持っていない銀行もあるぐらい。
インターネットでタダで入手できるチャートなんか、ほぼ正確、という域を出ることはない。
チャートの中の1ポイント(1銭)の誤差は、時として大きな判断ミスにつながる。
1銭ずれたチャートの上に引いたトレンドラインは、チャートポイントを5銭も10銭も間違えて示すことがあるし。
外為証拠金取引会社のスプレッドや手数料もずいぶん安くなったけど、それでもまだプロの条件のところまでは届かないはず。
僕らは、まあ、相場環境にもよるけど、ドル円なら2千万ドルぐらいまでは1銭のスプレッドで売買できるし、手数料もほぼゼロ。
じゃあ、なんで勝てるのか。
端的に言うと、プロはリスク管理をするけど、アマチュアはリスク管理をしないから。
たとえばドル円をロングにしていて、下がったらどこで損切るかを考えるのがプロ、下がったらナンピン買いを考えるのがアマ。
プロは決められたロス・リミットの中で勝負している。
普通は、年間ロス・リミット、月間ロス・リミットだけでなく、デイリーのロス・リミットにも縛られている。
このロス・リミットは、ものすごく厳格に守られる。
基本的には、リミット以上の損失を出したら、クビだ。
で、このロス・リミットというのは、実現損だけでなく、評価損にも適用される。
「ここを耐えれば反転上昇する」と想っても、評価損がリミットを越える前には損切らないといけない。
なぜこういうリスク管理をするかと言えば、それが経験的に有効だったからに他ならない。
だけど、一昨年9月以降の、「何でもかんでも買っときゃいい、下がったところは買い増しときゃいい、どうせまた上がる」というような極端な相場では、このリスク管理は機能しなかった。
まあ、このへんにしておこう。
これ以上言うと、ただの負け惜しみになる。
僕がプロを代表して負け惜しみ言うのもヘンだし、そもそも僕自身は負けてないし。
いずれにせよ。
つい2年ほど前まで、そう、僕がだいまんさんのFXラジオなんかに出させてもらった頃までは、FXで勝ち残るために一番大事なことはと訊かれると、誰もが一様に「きっちりストップ・ロスを置くこと」と答えていた。
実際、勝ち残っている人というのは、ストップ・ロスの上手い人だった。
サイコロ転がして相場張ったって、勝つ時は勝てる。
難しいのは、きっちり負けること。
ところが、去年ぐらいから、「ストップ・ロスは置いてはいけない。我慢してれば、あるいは買い増せば、必ず相場は戻ってくる」という声のほうが正論として受け入れられるようになった。
そしてそれは、過去2年だけを振り返れば、正しかった。
ただ、正しかったのは、30年ほどの変動相場の歴史の中の2年だけ、しかも対円で外貨をロングにした場合にだけ当てはまること。
あくまでも例外的に正しかっただけだ。
いつまでも続く法則ではない。
だけど、僕は、ストップ・ロスを置くべきだとか置くべきでないとか、そんなことを誰かに指南するつもりはない。
そんなこと、個々の投資家が決めることだ。
で、1つだけ。
もしも仮にストップ・ロスを置くというストラテジーでやる場合。
ストップ・ロスは、ポジションを構築したら、できるだけ早い段階でストップのレベルも決める。
そして、たとえばロングの場合、その後の相場状況しだいでストップを引き下げるのはいいけれど、意に反して売られてきたからといって、ストップのレベルを下げるようなことだけは、絶対にしてはいけない。
なぜなら。
たとえば、NZDJPYのロングを90円で作ったとして。
その作った直後と、85円に落ちてきてしまった時とでは、どちらのほうが冷静に相場を分析できるか、考えてみればわかるというもの。
ストップ・ロスをどこに置くか、それはできる限り冷静な時に考えないといけない。
これは利喰いについても当てはまることだけど、利喰いはちょっとぐらいヘタクソにやっちまっても大した問題にはならない。
冷静さを失ったアタマや精神状態で損切りすることほど危険なことはない。