「円借り取引」と訳されるキャリートレードの規模については、欧州系金融機関が「20兆円前後」と試算したり、元財務官が「数十兆円」と表現したり、かと想えば「そんなものは存在しない」とのたまうエコノミストが現れたりで、いまいちはっきりしない。
それもそのはず。
キャリートレードの定義や測定方法に一定のコンセンサスがないのだから、語る人の立場や考え方によって数字
がブレるのも当然。
ただ、はっきり言えるのは、海外のファンド勢の円の調達金額なんか調べてみたところで何の意味もないということ。
いちばんシンプルなキャリートレード、具体的に例を挙げるなら、たとえばGBP/JPYをロングにして日々ロールするようなものは、円の調達には反映してこない。
あるいは、たとえば円を10億円調達してドル転し、それをアメリカで証拠金として差し出して10倍のレバレッジをきかせて米株取引をしている場合、これを10億円のキャリートレードとみるのか、それとも100億円ととらえるのか。
さらには。
安い円金利で集めた資金を海外の高金利で運用するのがキャリートレードだとするなら、たとえば本邦生命保険会社の外債投資だって、広い意味ではキャリートレードではないか。
そんなこんなで、確定的なことは言いようもないのだけれど、もっとも広い意味で捉えた場合には、キャリート
レードの総額は数十兆などというはしたガネでは全然ないということだけは間違いない。
こんなもの、本気で巻き戻しが入ったら、80円まで下がってもまだ止まらない。
もちろん、そこまで本気で巻き戻すなんてこと、おきるはずもないのだけれど。