Googleで「ソニー 事業形態割合」を調べによると
ソニーグループ内
エンタテインメント・テクノロジー&サービスの
営業利益割合 (概算)は約18%
金融サービスは約29%・・・
ソニー自体が
実質家電・オーディオメーカーではなくなったので
出展取りやめは必然かと・・・
「ソニー撤退」「EV台頭」 なぜCESは“家電の祭典”をやめたのか? 技術主権の“下剋上”が始まった
1/3(土) 19:51配信
「家電見本市」の終焉と地殻変動
2026年1月6日から9日までの4日間、米国・ラスベガスにおいて、全米民生技術協会(CTA)が主催する世界最大のテクノロジー見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES) 2026」が幕を開ける。
CESは、1967年にニューヨークで産声を上げ、1995年からは毎年1月にラスベガスで開催されてきた。かつては家電業界の関係者が一堂に会する「発注の場」として機能しており、完成品メーカーが製品を提示し、流通業者や小売業者が買い手として情報優位性を持つ構造が成立していた。
当時は製品そのものに付加価値が集中していたため、流通側が価格決定権を握り、業界をけん引していたのである。こうした環境では、技術の差別化は完結した製品として評価され、内部の部品やソフトウェアは製造コストの一部として処理されるに過ぎなかった。
大手企業は巨大な出展ブースを構えて集客に心血を注ぎ、大々的なプレス発表や基調講演を通じて消費者のブランド想起を独占してきた。注目度が資金力のある大企業に集中するこの構図は、長年にわたって業界の定石とされてきた。
会期中のメディア露出が短期間での広告効果に直結し、投下した費用に対するリターンも明確であったため、出展規模は市場での支配力を示す指標となった。各社は競うように広大な面積を確保し、視覚的なインパクトを重視した装飾によって自社の存在感を誇示してきた。
しかし、現代においてこの形式が曲がり角を迎えたのは、産業の付加価値がハードウェアの組み立てから、その制御を司る知能や提供される体験へと移行したからに他ならない。完成品が主役だった時代から、それらを構成する技術レイヤーの重要性が高まる構造変化が起きている。かつてのように「箱」としての製品を並べるだけでは、産業の最前線を示すことが困難になっているのである。
コモディティ化する家電
直近の十数年間に、テレビや白物家電を中心とした家電業界は劇的な変化に直面した。平均粗利率は長期的に低下し、機能の多寡はもはや差別化の決め手ではなくなった。代わって価格競争が激化し、CESのような技術を競う場で提示すべき付加価値は希薄化していった。製品を展示することが直接販売に結びつくという関係が崩れたことは、企業をCESから遠ざける大きな要因となった。
同時に、企業が情報を発信する経路は多様化し、CESの存在意義を根底から揺さぶり始めている。自社主催のイベントやオンライン発表、SNSを駆使した直接的な発信により、製品を訴求する場は日常の中に広がった。
年1回の開催を待つ必要性は薄れ、新製品を投入する最適な時期に合わせて情報を届ける方が、認知の獲得において有効かつ効率的である。大規模見本市への出展には莫大な費用を要するため、投資に対する経済的な合理性が保てなくなっている側面は否定できない。
この背景には、消費者の価値観が「所有」から「利用を通じた体験」へと移り変わったことがある。購入した時点で価値が固定される製品は、常に最新の機能が追加されるサービス型の製品にその地位を譲りつつある。ハードウェアを売り切ることで収益を上げるモデルが限界を迎えたことは、産業界全体に共通する課題を浮き彫りにしている。
モビリティへの主役交代
一方で、2010年代後半からCESで存在感を高めているのが、電気自動車(EV)を含む自動車関連企業である。車両原価に占める電子部品や制御システムの比率は拡大しており、自動車を電子機器の進化の延長線上にあるものと捉える向きが強まった。電子分野を核とするEVは、家電見本市として始まったCESの性格と高い親和性を示している。
メーカー各社の競争力の源泉は、駆動や制御、精密部品の差別化へと移り、それに伴ってサプライヤーの交渉力が強まっている。特にソフトウェアによって車両の機能や価値を定義するSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の進展により、サプライヤーが基礎技術を担う領域は飛躍的に増えた。技術的な優位性を証明する場において、彼らは主要な役割を演じるようになり、その企業価値はかつてないほど高まっている。
近年の出展傾向は、製品そのものの披露から技術仕様の提示へと明確に変化した。CES2026には、
・ジャトコ(静岡県富士市)
・ミネベアミツミ(長野県御代田町)
・現代WIA(韓国)
といった自動車関連サプライヤーが初出展を果たす。量産を前提とした新技術を実証する機会として、また受注や提携を左右する判断材料の場として、この舞台の重要性はさらに増していくはずだ。完成車という枠組みを超え、それを構成する技術スタックの優劣を競う段階に入っているのである。
「外部化」された技術探索
CESには数多くのスタートアップが出展しており、その数は年々増加している。これにより、商談を通じて売上を立てる場という従来の役割に加え、企業間の新たな関係性を構築する場という機能が備わった。スタートアップは大企業が自社内だけではカバーしきれない未知の領域を探索するための受け皿であり、将来の技術的な選択肢を確保するための枠組みとして高く評価されている。
CES2026では、全出展社の約3割を占める1400社程度がスタートアップとして名を連ねる。日本からも31社がジャパンパビリオンを形成して出展し、スタートアップが集積する「エレウカパーク」での活発な意見交換や交流が期待されている。会期中にはステージイベントを通じた技術発表やデモが行われ、自社の可能性を広く世に問う機会が設けられている。
大規模な見本市では、個別の技術は埋没しやすい。しかし、集積展示によって可視化を高めることで、その存在をより際立たせることが可能になる。ここで求められる付加価値は、現時点での完成度にとどまらず、将来の産業構造をいかに変えうるかという期待値に裏打ちされている。自前主義に固執せず、外部の知見をいかに取り込むかが、企業の存続を左右する重要な鍵となっている。
「全社表現」の合理性消失
ソニーは、1967年の第1回開催から58年連続でCESに出展し続けてきた。毎年、メイン会場となるラスベガス・コンベンションセンターの同一地点に広大なブースを構え、その圧倒的な存在感によってブランドの象徴としての役割を果たしてきた。
しかし、同社がCES2026からの撤退を決断した背景には、巨大なブースの運営コストに見合うだけの価値を回収できなくなったという現実がある。家電製品の展示が、直接的な利益の押し上げに貢献することを証明しにくくなったのである。
さらに、ソニー自身の事業構造が「家電を大量に販売する」形態から、「エンターテインメントを軸に、コンテンツとそれを支える技術を提供する」形態へと移行したことも大きい。同社の付加価値の源泉は、ゲーム、映画、音楽、エンタテインメント・テクノロジー&サービス、そして半導体の5部門へと移っている。
こうした変化を受け、ソニーによる出展は、本田技研工業との合弁企業である「ソニー・ホンダモビリティ」へと引き継がれる。かつてグループ全体で占拠していた場所は、EV車両という成果物にリソースを集中させる場へと変わる。これは、企業が全事業を一括して誇示する場としてCESを利用する合理性が失われたことを示す象徴的な出来事であり、産業の焦点がハードウェアから特定の機能領域へと絞り込まれた結果といえる。
「中期提携」への機能転換
CESの出展に価値を見出すためには、個別の技術を提示するだけでなく、具体的な用途や提携先を同時に提示する姿勢が不可欠となっている。短期的な収益のみを重視するのではなく、中長期的な契約を前提とした説明能力が求められる。見本市を実利を伴う商談装置として活用し、その成果を組織の成長に組み込める体制を整えることが、新たな参加要件となっている。
これらの要件を満たせない場合、出展に関わる費用は収益を生まない広報宣伝費に終わる。技術的な優位性が実際の商談において価格交渉力に結びつかなければ、出展の継続は企業にとって重い負担となる。こうした状況を放置すれば、投資の対価を得られないまま消耗する結果を招きかねない。
個別の製品による差別化に固執し続ける企業にとって、完成品に依存したモデルは維持すべき選択肢に映るかもしれない。しかし、利益率の低下を規模の拡大で補う旧来のモデルが限界を迎えていることを認識すべきである。見本市の機能は、製品の展示会から、将来の産業標準を確立するための提携交渉の場へと完全に移行している。来場者と出展企業の目的が一致しなければ、投資の効果を説明することは困難になるだろう。
問い直される付加価値の集積地点
企業が生み出す付加価値の源泉が、完成した製品から、それを構成する技術単位、あるいは将来を見据えた選択肢へと移動している事実を冷徹に見極める必要がある。CESという場についても、単なる披露宴なのか、それとも実利をかけた交渉の場なのか、その役割を精緻に分析しなければならない。
ソニーの撤退という決断が、他の家電メーカーに波及する先行事例となるのか、あるいは特殊な例外にとどまるのかは、今後の出展動向によって明らかになるだろう。この地殻変動が突きつけているのは、出展の是非そのものではない。企業が自らの付加価値を、産業構造のどのレイヤーに集積させ、誰と手を結ぶべきかという本質的な問いである。
成家千春(自動車経済ライター)
最終更新:1/3(土) 19:51
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