順調だった予備校生活だったが、

何をきっかけに崩れてしまったのか?まともに通えなくなっていた息子。


やらなければ、という焦りもあったのか夏期講習を申し込んだものの、全ての講座に参加出来なかったようだった。



「予備校にちゃんと行ってるよ。」


と息子は言っていたが、


息子の表情を見れば、なんとなく上手く行っていないらしい様子は手に取るように分かる。




この頃から、予備校から電話が掛かってくるようになっていた。



仕事から帰ると、留守番電話にメッセージが残っていた。


聞くと、予備校からで、

《予備校の出席記録がない》

という事だった。


息子に聞いても、

「出席カードのタッチを忘れただけ。」


そう息子に言われれば、それを信じるしかなかった。



そういえば



高校生の時にも、担任から頻繁に電話が掛かってきていた。


その頃の事を思い出してしまい、予備校からの電話を取るのが怖くなっていた。



良い話だった事は無いのだ。



聞きたくない話を聞かなければならない。




仕事から疲れて帰ってきて

洗濯物を取り込んで畳んで片付けて

夕食の準備や、入浴の準備。


一番忙しい時間に

一番疲れている時間に


一番聞きたく無い話を聞き、

「お手数をお掛けしてしまい、申し訳ありません。」


といつも謝っていた。




こんなにお金を掛けたのに

行きたい大学へ行くって自分で言ったのに


なぜ予備校に行かないのか。


なぜ私はこんな思いをしなければいけないのか。




私は、息子にこの浪人時代を無駄にして欲しくないと思っているだけだ。




しかし




息子は、浪人出来るこの恵まれた環境に感謝する事もなく、予備校に行っている様子も無い。




私の望む行動を息子がしない事で、


《裏切られた》


そう感じていた。





私は息子を《信じたい》と思っていたが、


実際には


信じたいのではなく、ただ


《勉強を頑張って良い大学に入学する事を期待している》


だけだった。





私の期待と実際の息子の行動の乖離が


《裏切り》


という言葉で埋め尽くされていた。




私の期待に応えられない息子は、


恐らく彼なりに苦しんでいたに違いなかった。