息子は県立トップ高校に通っていた。


中学時代のクラスメイト達やその母親達、近所の人々も


「あの高校に行ってるなんて、凄いね。」

と、息子を褒めてくれていた。



しかし現状は



勉強に遅れをとり、成績は低迷していた。




当然の事ながら、

高校の担任からは心配されていたようで


頻繁に家に電話が掛かってくるようになった。




電話が掛かってくるのは、決まって夕方で

私が1人で居る時間だった。



仕事から帰宅して、洗濯物を取り込んで畳んで仕舞ったり、夕食の準備をしていたり


そんな多忙を極めている時間に掛かってくる電話。




初めて電話が掛かってきた時は「何事か!?」と驚いた。


その時は、体育の授業で息子が転んで腕を骨折したという事で

「車で迎えに来れませんか?」

という電話だった。



二度目の時は、一度目の事もあり

《また怪我をしたのか?!》

と電話を受けると


「息子さんの家での様子を聞かせてください。」

と言うではないか。


《怪我じゃ無くて、良かった》

と思ったが、何かおかしい・・・とも思った。



面談で話すような内容を


何の前触れも、約束もなく、唐突に、

一番忙しい夕方に電話をしてくるなんて。



不意打ちを喰らったような感覚になり

答えに窮してしまった。



確かに


懸命に勉強している様子は、ない。



ない、けれど

それは私の目線での話であって



もしかしたら

息子自身はやっているつもりでいるかもしれない。



なぜ、担任は息子本人ではなく私に聞いてくるのか?


なぜ、面談をセッティングせず突然夕方に電話をしてきたのか?



色んな考えが一瞬頭の中を駆け巡った挙句、


「机に向かっている様子は見ますけど、、、。」

と、絞り出すように言った。



すると担任は


「えっ?あれで?」

と言ったっきり、黙り込んでしまった。



「えっ?あれで?」とは失礼だな。



一瞬カチンときたが、

やってないだろう事は私も同感だったので


返す言葉が見つからず、私も黙り込んでしまった。




しばらくの沈黙の後、担任はこう言った。



「昨日やった数II の授業の振り返りを今日やったのですが、ほとんど解けていませんでした。」


「普通にやっていれば満点が取れるはずなのに。」


「勉強、やってないでしょう?」




やってないと思ってます。



でも、だからと言って、



母親の私に何が出来るのだろう。




勉強するのは、息子本人だ。



なんなら



勉強するのもしないのも、本人の意思に基づくものだ。



勉強しないのには理由があるだろうが


《それは親の責任でなんとかしろ》

とでも言いたかったのだろうか。