Ⅰ-[2]
『付き合ってるの?』とかよく訊かれるけど、
付き合おうなんてことはお互い口にした事はないし、
好きな人がいるとかいないとか、そんな話もした事はない。
だけど、生まれた時からずっとそばにいて、それが当たり前なんだから、
今さら付き合うとか言葉にする必要なんて、無い気がする。
自分で言うのもなんだが、僕はなかなかイケてる方なんだと思う。
背は・・まだこれから伸びる予定として、スポーツは大体得意だし、
髪の毛は自毛なのに栗色でサラサラヘア(寝癖が付き易いのが難点)、
上級生のオネエサン方には、『かわいい♡』っていつも言われてるし、(ただ、『かわいい』は、男のホメ言葉じゃないと思うが。)
下級生の女のコからは、どうやら憧れられているみたいだし、
同級生の女子からも人気らしい。(あくまで自論だけど。)
そんな僕の隣にいつもいる美羽は、品行方正って言うの?
少し気が強そうだけど整った顔立ちで、
セミロングのサラサラストレートヘアに、“天使の輪”が出来てる。
そこらのアイドルよりよっぽど魅力的で、ヤローどもがいつもこっそり美羽を盗み見てる。
おまけに僕と違って成績優秀、フルートも吹けるし、ピアノも得意だ。
・・・ただ、運動と数学が大の苦手なんだけど。
けれどそんな所が全て僕のポイントを押さえている。
というより、美羽が理想のタイプなんだ、きっと。
この先もずっと、僕の隣には、美羽しか考えられない。
なんたって、『双子みたいだけど、お似合い』なんて周りから言われてたら、
イヤでもその気になるっての。(照)
だけど、そんな僕らが少しずつ変わり始めていた、14歳、中学3年生の、夏。
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二時限目の後の休み時間中。
今日の三時限目の英語は、日付から絶対僕が当てられる日だったので、
クラスが違う美羽の所へ教科書を借りに行った(単に忘れたという理由もある)。
美羽の教科書は細かく書き込みがされているので、僕にとってはスバラシイ参考書だ。
「翼!ちょうど良かったっ行こうと思ってたんだっ」
そう言って笑顔で『はいっ』と手渡されたのは、
学校の向かいの商店で売ってる、僕の好物ヤキソバパン。
「!?」「朝ごはんどーせ食べてないんでしょ!?」
「・・・サンキュー!美羽!!」
(ダイスキだ!!美羽もヤキソバパンも!!)
あぁ、なんてよく出来た女房なんだ・・・。
早速教室に戻って頬張っていると、ツレのケンイチが恨めしそうに眺めていた。
「・・・いいよなぁ~・・オレもそんなカノジョ欲しいなぁ~・・」
「へっへっへ~愛の力ってヤツよ!」
正式には彼女ではないが、あえて否定もしない。
そんな風に喜びを噛み締めていた僕が、教科書を借り忘れた事に気付いたのは、
始業後1分経過時だった。
しまった・・・。放課後、美羽の教室を覗いてみる。
よかった、まだ居る。
「あっ!!」
僕を見付けて、美羽が大声を上げた。
席を立って、こっちに小走りでやって来る。
僕は『あはは・・』と頭を掻いた。
「今日、英語当てられたでしょ!?ごめんね!?渡しそびれてて!!」
「・・・や、美羽は悪くないし。」
「・・・・・。そっか。そうだよねぇ。」
妙に納得したようだった。
なんで勉強出来るのに、天然なんだよ。
かわいいだろ、くそぅ。
廊下を行き交うヤツらにちらちら見られる。
中にはお決まりのように冷やかしてくるヤツもいる。
でも、僕らはそんな事には動じない。
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*写真素材サイトサマ*