もうだいぶ昔の話になってしまいますが、大手塾で10年近く専任講師をしていたことがあります。

毎週10クラスくらい(通常授業+特訓講座)+志望校別コースを担当するので、年間で300人近い生徒を教えていた計算になります。

集団授業ですから同じクラスの生徒には同じことを教えています。

クラスが違うと多少扱う内容や問題が変わりますが、同じクラスなら条件は同じです。

なのに同じクラスでも成績の差が出てくるのです。

成績別クラス編成ですから基本的には同じレベルの学力を持った生徒の集団です。

生まれつきの能力の差だとか、早生まれだとか、親の経済力の差だとかを全否定するわけではありませんが、成績でクラス分けをおこなっているので基本的には上のクラスに行くほどみんな能力(ポテンシャル)は高くなると考えられます。

つまり、同じクラス内においてそういうアドバンテージはないと考えていいと思います。

※ クラス数がある程度多い校舎の場合です。

 

それにもかかわらず成績の差が出てくるわけですが、それは塾講師の指導力とかテキストの精度では説明がつきません。

差があるとしたら家での勉強の仕方ではないかと思うのですが、それは塾講師にとっては”ブラックボックス”なのです。

おそらく保護者どうしでも他の子が家でどのような勉強をしているかはほとんどわからないと思います。

 

そんな中で、急に成績が伸びてくる子というのがときどきいるのです。

成績(偏差値)の上下というのは誰でも多少の幅があります。

クラス内でも上下で5~10ポイントくらいになることもありますし、科目別にみたらもっと差が出てきたりもします。

しかし、継続して成績が上がっていくとか、反対に下がっていくというのはかなり特殊なケースなのです。

 

例えば入塾して間もない子の場合、劇的に成績が伸びることはよくあります。

今まで通塾経験がなければ最初は下のクラスになりますが、その後数ヶ月かけてどんどん周りに追いつてくるのです。

テストの受け方や宿題のやり方などを身につけ、高得点を取れるようになるのに少なくとも1~2ヶ月はかかります。

公開テストなどの実力テストは過去数ヶ月間に習った内容からよく出題されるので、数ヶ月間真面目に勉強しているとだんだん点数が取れるようになってきます。

しかし、入塾から半年もするとだいたいどこかのクラスで落ち着きます。

それ以降はほとんど変化しなくなります。

 

転塾してくる子もいます。

塾によってカリキュラムにずれがあるので、習ってない範囲が多ければ成績が伸びるまでに時間がかかります。

逆に先に進んでいれば最初から成績が取れたりします。

実力がある子は最初から上の方のクラスでスタートします。

塾の勉強には慣れているので比較的安定して成績をとります。

最初のクラス替えでは多少上下することもありますが、それは入塾テストの出来次第です。

そのうちどこかのクラスで安定します。

 

少しでも上のクラスに入りたくて入塾テストに力を入れてくる子もいます。

しかし、数ヶ月もするとだいたい実力に見合ったクラスに落ち着きます。

クラスが大きく変動する人は入塾テストの結果と実力が乖離していたというだけの話です。

 

※ ここでいう実力というのは公開テストや復習テストなどの合計、つまり毎月の成績のことを意味します。

毎月の成績に見合うクラスになるようにクラス替えが行われているわけですから、当然ですね。

 

じわじわ下がってくる子の典型としては急に宿題をやらなくなった、親が関与しなくなったなどの原因が多いです。

急激にクラスが落ちていく子は少ないのですが、よくよく調べてみるとカンニングが原因ということがよくあります。

どこまでも落ちていくわけではなく、たいていはどこかのクラスで落ち着きます。


人数が多く、クラス数の多い校舎になるとクラス替えのたびにかなりの人数が入れ替わったりします。

ちょうどクラスの狭間となる順位の人は何度もクラスが上下したりします。

その一方でずっと同じクラスをキープする人もいるのです。

最上位クラスや最下位クラスになるとほとんど変動はありません。

 

 

というわけで、そう簡単にクラスが上がるほど成績が伸びるということは非常に起こりにくい現象なのです。

 

 

なぜか急に成績が伸びる人

 

そんな中で急に成績が伸びてくる人がいます。

大きく分けると、

1.公開テストなどの実力テストの成績が伸びるケース

2.復習テストなどの毎週のテストの成績が伸びるケース

3.その両方が伸びるケースがあります。

 

2のケースが一番多いと思います。

1週間単位で変化するので、学習範囲も量も少なく、短期間で結果が出るため比較的取り組みやすいのです。

特に科目別に見たときに、特定の科目だけ急に伸びてくるケースが目立ちます。

おそらく家での勉強の仕方が大きく変化したのでしょう。

 

1の場合はもう少し長いスパンが必要になります。

どちらかというと毎週のテストの成績アップから取り組む人の方が多いと思います。

 

3は極めて少ないです。

復習テストの方が先に結果が出てくるからです。

 

急にとはいっても、実際は1~2ヶ月かけてじわっと伸びてくるというのが正しい表現かと思います。

1科目に絞ればもっと早く結果がでることもありますが、クラスが上がるほどの点数にはなりにくいです。

 

ある日から急に満点近い点数を続出するようになる子がいます。

塾講師であればまずカンニングを疑います。

点数の取り方でその手口もわかります。

イレギュラーな席替えがおこなわれたときは塾にバレているということです。

 

何らかの方法でテストの過去問を入手して対策してくる子もいます。

しかし、塾では年度ごとに問題を入れ替えたりしているので難易度は高いです。

しかも家でしっかり覚えていかなければなりません。

これでは公開テストの点数が取れないのでクラスアップは難しいですね。

 

 

急に成績を伸ばす方法

 

今までに見たり聞いたりした方法をいくつか紹介しましょう。

基本的には勉強時間を増やすことが前提になります。

しかし、それを子どもが自力でやるのはかなり難易度が高くなります。

 

1.親が家でつきっきりで勉強を見る

 

仕事を辞めたり休職して子ども勉強にすべてを注ぐ人がいます。

たいていは母親ですが、思い切った決断をするお父さんもいます。(小6)

※ そこまでする前に早めに手を打とうという発想はないようです。一夜漬けタイプですね。

 

リビングを模様替えして勉強する場所を作るというのもよくあります。

親が横にいる方が勉強時間が長くなるのです。

今ならリモートワークの人もいると思います。

親が仕事をしている横で勉強させるのもいいかもしれません。

 

虐待にならないように気をつけてください。

 

 

2.引っ越しをする

 

勉強時間を確保するために塾に近いところに引っ越す人もいます。

入試が終わるまでウィークリーマンションを借りたりする人もいます。

中学入学を見据えて学校や塾の近くに家を購入する人もいます。

 

最難関志望の場合、コースを受講する校舎が異なる場合があります。

そこで、その校舎に移籍してしまう人もいます。

これは通塾時間よりも、周りの環境を優先するケースですね。

ライバルが多い方が緊張感は高まります。

 

 

3.塾・個別・家庭教師の掛け持ち

 

塾の掛け持ちは最難関トップレベル層によく見られます。

他塾で無料や格安の講座を受講したり、Web講座を受講したりします。

誰が掛け持ちしているかは子どもたちがよく知っています。

 

個別指導に通ったり、家庭教師をつけている人も最難関志望だと多くなります。

塾では質問する時間が少なかったり、対応できる講師が少なかったりするからです。

親が教えられる人はいいですが、最難関レベルを教えるのは難しいと思います。

もちろんそれに対応できる個別指導・家庭教師も数が限られます。

 

トップ層はもっと早いうち(小4くらい)から動き始めています。

 

 

4.不登校

 

受験学年の年末が近づくと不登校になる人が出てきます。

詳しくは書きません。

兵庫県内の私立中は欠席日数が多いとまずいですが、正当な理由があれば大丈夫だと言われています。

今年は新型コロナにも気をつけなければならないので、それも正当な理由になり得るかもしれませんね。

 

5年生以下は無理に学校を休んだりしない方がいいと思います。

 

 

5.封印

 

勉強の妨げになるものをすべて封印するという人もけっこういます。

テレビ、ゲーム、スマホ、PC、マンガ、人によっては読書すら封印します。

家にテレビがないという人の話もたまに聞きます。

 

封印するのはいいのですが、それを解禁するとすべての災いが飛び出してきます。

中学入学後に再度封印される話はよく聞きます。

一体何と戦っているのでしょうか。

 

 

 

 

とにかく勉強時間を確保するには勉強以外の何かを減らしていかなければなりません。

いずれにしても勉強時間が増えなければ何をやっても効果は期待できません。

単に時間を増やせばいいというわけでもなく、そのレベルに応じて内容や質も高めていかなければなりません。

 

ダイエット、禁煙、禁酒などもそうですが、少しずつ何かを減らすというのが一番困難です。

やるなら一気にスパッと生活を変えてしまう方が手っ取り早いです。

それを3ヶ月くらい継続すれば、それが日常になってくるのです。

上手くいけば「なぜか急に成績が伸びる人」になれるかもしれません。