UnsplashWaldemarが撮影した写真

 

今回は短く。アメリカの大学における外国語の履修者数のデータを見つけましたので見てみることにしました。

 



Modern Language Association "Enrollments in Languages Other Than English in US Institutions of Higher Education, Fall 2021" 

(https://www.mla.org/content/download/191324/file/Enrollments-in-Languages-Other-Than-English-in-US-Institutions-of-Higher-Education-Fall-2021.pdf)

  • アメリカで最も人気がある外国語はスペイン語であり、全外国語履修者数の半数程度を占めています。実際、スペイン語はアメリカで生活していると最も身近に感じる外国語で、地域にもよると思いますが、職場や大学等でも多くのスペイン語話者がいて、日常生活の中でもスペイン語が耳に入ってくることは多いです。
  • この10年程でアメリカにおける外国語履修者の数は減少しており、特にドイツ語、イタリア語等の減少幅が顕著になっています。日本語の履修者数を見ると2013年以降はほぼ横ばいとなっており、これは相対的にはかなり健闘している方なのではないかと思います。他の言語を見ると韓国語が急増していることが目につきます。
  • 実際にはアメリカの大学の外国語教育は傍目で見る限りかなり充実しており、他大学との連携等により、かなりの種類の外国語の学習機会を(カタログ上は何十言語も)用意していることが多いです。但し、その中で「専攻」まで進める外国語の種類はぐっと少なくなります。


UW Undergraduate Advising: List of Undergraduate Majors

ワシントン大学の人文系専攻の一覧。かなりたくさんの語学の専攻が提供されています。特に北欧系の言語がたくさん用意されており、これは他大学と比べてもかなり充実している方なのではないかと思います。「ギリシャ語」「ラテン語」「ロマンス諸語」等のコースがあるのもアメリカらしいですね。なお同大学で学習できる言語自体はもっと多く、こちらを見ると約30の言語がリストアップされています。

  • アメリカの大学の語学教育の特徴は、レベル別のコース設定が充実していることです。例えば何らかの理由でその外国語について多少のバックグラウンドがある人(例えば移民2世等)が語学力をブラッシュアップしたいような場合にも、個々のレベルに合わせたコースを選べるようになっています。
  • もう一つの特徴はカリキュラムの柔軟性で、アメリカの大学は1年生の時点から専攻を決めているわけではないので、入門のコースを受けた後、興味がある人はさらに上級のコースを履修していき、十分な単位数を揃えられれば専攻として認められる形になっています。外国語を勉強している人は、他に何か別の分野と2重専攻していることが多いです(そこまでやるのは、もちろんかなり大変だと思いますが)。

大学で外国語を勉強した最近の有名人を一人挙げるとすれば、米国大統領副補佐官を務め、アメリカの対アジア外交を主導したマット・ポッティンジャー氏だと思います。同氏はマサチューセッツ大学(理系の名門MIT…、ではなく、地元の州立大学です)で中国語を学び、卒業後はロイター(後にWSJ)の記者として中国に駐在、帰国後は軍歴を経て政治キャリアに進んだのでした。

 

いずれにせよ、英語を母語とし、世界中から移民や留学生が集まるアメリカの外国語教育を、日本に持ってくるのはなかなか難しいと思います。例えば中国・韓国等はかなり外国語教育に力を入れているようですので(筆者の職場にもそうした国から来た方がいますが、語学力は凄いですね)、そちらの方も興味あります。

 

(2024/2/7追記)中国の日本語教育事情に関するレポート。ここには書いていませんが大連には中学校ぐらいから日本語を勉強できるコースがあるらしく、その修了者はかなり流暢なビジネスレベルの日本語を話します。しかしいずれにせよ、語学教育の主役は大学の外国語学部です。