オンラインMBA。こちらでも少し取り上げた通り、アメリカではコロナ以前から、パートタイムMBAの代替として少しづつ広がりを見せていました。そして、コロナ期間を経て、このオンラインMBAは一気に普及したようです。以下の記事によると、なんと2020-21 Academic Yearにおいては、米国ではオンラインMBAがフルタイムMBAを超える履修者を集めていたそうです。

 

 

 


上記の記事より引用、データ出所AACSB(2020-21年度のデータ)

上記によれば最も多いプログラム形態はパートタイムMBAであり、それに続いて米国ではオンラインMBAの履修者数がフルタイムを上回っています。

 

以前の記事でもランキングを紹介しましたが、オンラインMBAを従来から提供していたのは、有力校の中ではCMU Tepper、UNC Kenan-Flagler、Indiana Kelly等、比較的地域にある学校が中心でした。しかし最近はMichigan Rossも提供を始め、さらに以下の記事ではUCB HassとNYU Sternが、パートタイムMBAの一部としてオンライン・オプションの提供を開始したことを報じています。また、ビジネススクール長の大半が、MBAランキングのトップ5校がこの数年のうちに提供を始めるのではないかとの見通しを示したとの調査結果もあるそうです。

 


(2022/10/19追記)

この記事を書いた少し後で、早速トップ校の一角、Whartonがオンラインプログラム(Global EMBA)の立ち上げを発表したそうです(提供は2023年度~)。

 

 

 

(2023/8/2追記)

Haasのプログラムの紹介記事です。

 

 

こうしたプログラムはパートタイムで、主に平日夕方・週末に授業を行っており、修了までには2年半~3年程度かかるのが普通です。また、限定的なスクーリング(直接授業)を要求しているケースもあります。特に最近提供を開始した2校はパートタイムMBAに準じた授業料の設定をしているらしく、オンラインとはいっても授業料は極めて高額です(今の為替レートでは特に…)。また、上記の記事では、履修の柔軟性から女性の応募者をかなり集めているとの情報も伝えています。

 

上記の記事によれば、オンラインMBAの急速な拡大には以下のような背景があるとされているそうです。

  • オンラインMBAに対する学生・雇用者・学校側の認知が高まった
  • 技術革新により、オンライン学習の効果が高まった
  • オンラインプログラムの一部として、対面で教育を提供する場合が増えている
  • 仕事を辞めることによる機会費用の削減しつつネットワーキングの機会が得られること

記事上では、オンラインMBAの認知度が上がり、多くの学生がプログラム修了後の給与増等の恩恵を得ているとの調査結果も取り上げられています。また最近、アメリカの雇用環境は良くなっているため、フルタイムのプログラムに行くことの機会費用はますます高まっています(アメリカに既に住んでいても、フルタイムのプログラムであれば引っ越し等を伴うことも普通ですし、コストはかなりかかります)。

 

一方、こうしたプログラムは、特に学生層等の面で従来のパートタイムMBAとも少し異なっているのではないかと思います。従来のパートタイムMBAはとてもローカルなもので、各地域で働いているプロフェッショナルが、会社での昇進条件を満たす等のために志望し、通える範囲内の大学院に集まってきて勉強するものでした(ランクの高いパートタイムMBAに受かったので会社に願い出て近くに異動した、という人もいましたが…)。しかしこうしたオンラインMBAであれば、そのような地域的な制約はかなり緩和されます。パートタイムのプログラムに入って仕事を継続しつつ、同時により多様な同級生と交流を持つことができるというのは、学生側にとってもフルタイムとパートタイムのいい所取りのようなもので、場合によってはかなり良い体験になるのではないかと推測します。

 

今後は、仕事から手を離せないエグゼクティブ向けの教育等も含め、こうしたオンラインプログラムはますます増えていくのではないでしょうか?

 

最後に外国人の目から見ると、こうしたプログラムではアメリカでの就業機会を(ビザ面での優遇等を含め)得ることは難しいため、大学院に行くより前の段階で機会をつかんだ後、アメリカで働きながら履修することが多いのではないかと思います(普通の日本人には容易ではありませんが、世界的にはアメリカでの就業機会を得るために留学する人は多いです)。また、日本から受けるのは時差の面からも苦労することが多いでしょう(3年続けることを考えても…)。ただ、以下の記事を見ると、実際には既にかなり海外からの学生を集めているプログラムもあるようです。

 

How International Students Can Find the Right Online MBA in the U.S. | Online Colleges | US News

 

残念ながら筆者自身は自分でこうした教育を受ける年齢ではもはやないわけですが、ご興味がおありの方は是非、調べてみてください。