政策金利を年2.75%に据え置いたタイ中央銀行が懸念する金融緩和による「金融システムの不安定化」 | アジアで競う企業と人材を応援するブログ

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バンコクでお世話になっているFA

(ファイナンシャル・アドバイザー)と昨夜食事をともにした。

実はFA、めでたいことに近々誕生日を迎える。

その誕生日の祝宴として、前祝いではあったが、

バンコクではよく利用しているトンロー8の「katana」でお会いした。


19時から22時過ぎまでさまざまな話題で盛り上がった。

金融業界で働いたことがない私は、

当然のことながら金融知識が不足している。

よって、FAと会うときは、日頃疑問に思っている金融事情について、

私が疑問や質問を呈し、いつも勉強させて頂いている。


昨夜もタイの金融の動向に関していろいろ尋ねた。

ちょうど昨日開催されたタイ中央銀行 の金融政策委員会。

そこで、政策金利 を現行の年2.75%に据え置くことが決まった。

昨年11月、今年の1月、2月の会合に続く据え置きである。


ある記事によると、タイでは政府がバーツの高騰を懸念している。

ただ、タイの中央銀行 としては、金融緩和によるバーツ高の抑制が、

金融システムの不安定化を促す副作用の方が大きいと判断したようだ。


そこで、「金融システムの不安定化」とは、

具体的に何を差しているのか尋ねたところ、

FAが語るに、「銀行経営の不安定化」と置き換えられるとの返答。

銀行が不安定化するのは、その資産が痛んだ場合で、

保有する株や債券の価格下落や貸付の不良債権化が挙げられる。


前者としては、ギリシア国債などを保有していた銀行が

資産の劣化で不安定化した欧州危機が挙げられた。

後者としては、不動産向け貸し付けの不良債権化で

公的資金の受け入れを余儀なくされ、

実質的な破綻に追い込まれた日本のバブルが挙げられた。


簡潔で明瞭な解説を受けるなか、さらにFAが続ける。

金利が低いと借り入れの需要は高まり、

銀行は貸付を膨らませることとなる。

信用創造で実際には存在しないお金が

市場にどんどん流れ、いわばバブルへと変容。

景気が悪化したときの資産価値下落と

それに伴う信用収縮で貸付は不良債権化して

銀行の資産は痛み、経営が不安定化する。


自己資本を食いつぶして債務超過の状態、

またはそれに近い状態になれば、取り付け騒ぎが起こって、

銀行は閉鎖せざるを得なくなり、

金融システムは機能しなくなるという説明。

非常にわかりやすい解説であった。

タイの銀行は、車や不動産に過大な担保評価を付け、

タイ国民に対してお金を貸し続けている。

今の金利水準でも確実に将来の不良債権になりそうな資産を

銀行はどんどん膨らませているといえる。

いざとなれば国が銀行の失敗の肩代わりをしてくれるとの思惑で

タイの銀行に歯止めがかかっていない現状は、

日本のバブル崩壊前の銀行と、

一面的にはそれほど大差がないようにも感じられる。


タイ中央銀行 は、そんな銀行を苦々しく見ていて、

金利の引下げには抵抗があるということなのかもしれない。