前回の第2外国語への手引き(第23回:ロマンス語の規則動詞とは何か,イタリア語編)http://ameblo.jp/prof-hiroyuki/entry-10591700945.html
の続きです。学習者にとって、スペイン語はまだ良心的(?)かもしれません。
(1)スペイン語、イタリア語では第3活用規則動詞はどう扱われているのか。
イタリア語もスペイン語も規則動詞として第1,第2,第3活用規則動詞が有り、それぞれの基本形(不定形)は次の様な形をしています:
<イタリア語><スペイン語>
第1活用 -are -ar
第2活用 -ere -er
第3活用 -ire -ir
但し、イタリア語の第3活用規則動詞にはA型とB型との2種類が有り、その境目が曖昧という非常に困った問題が有りました。
フランス語では第3活用動詞に相当するものは全て不規則動詞扱い。
そして、スペイン語では第1,第2,第3活用規則動詞はそれぞれ1パターンで、それから外れるものは全て不規則動詞扱いとなります。
これならば、イタリア語とは違って「規則動詞の考え方」は明確であると言えます。
しかし学習上で問題となってくるのがフランス語・スペイン語における不規則動詞の多さです。
それでもスペイン語は不規則動詞とはいえども規則性の高いものが多く、まだ対処の仕様が有ります。
(2)日本語の不規則動詞「来る」「する類」は他の言語でも不規則。でもスペイン語は・・・
英語come, do、ドイツ語sein, tun、フランス語venir, faireの例を挙げるまでもなく、日本語の不規則動詞「来る」「する」に相当する動詞は一般的に不規則動詞、しかも不規則性の高いものばかりとなります。
一般に「使用頻度の高い動詞ほど不規則」という事が言われますが、使用頻度の低い動詞が不規則ですと誰も使えなくなりますので的を射ているとは思います。そして、間違いなく「来る」「する」はどの言語でも使用頻度の高い動詞。ですので、不規則動詞なのは致し方ないと言えましょう。
もちろんスペイン語でも「来る」venir「する」hacerは不規則活用です。では、どの様に不規則なのか、規則動詞と併せて見てみたいと思います。
不規則動詞venir「来る」 第3活用規則動詞abrir「開く」
直説法現在
1人称単数 vengo abro
2人称単数 vienes abres
3人称単数 viene abre
1人称複数 venimos abrimos
2人称複数 veni's abri's
3人称複数 vienen abren
下線部が活用語尾なのですが、全く規則動詞と同じですね。実はこのvenirで、スペイン語の主な不規則パターンの2つが含まれてしまっているのです。
まず不規則パターンの一つ目は「青」で示した「幹母音(語根母音)変化」。[e→ie]になっていますね。
他にも[e→i]や[o→ue]のパターンが有り、この種の動詞は「複数1・2人称以外」は母音が変化してしまいます。
※venirの場合は1人称単数で母音変化していませんが、decir(言う)の1人称単数digoの様に通常はここも母音変化をします。
もう一つの不規則パターンは1人称単数の「-go終わり」。
これに関しましては、「する」に相当するhacerを見てみるのが良いでしょう:
不規則動詞hacer「する」 第2活用規則動詞creer「思う・信じる」
直接法現在
1人称単数 hago creo
2人称単数 haces crees
3人称単数 hace cree
1人称複数 hacemos creemos
2人称複数 hace'is cree'is
3人称複数 hacen creen
このhacer、実は1人称単数形以外は規則的です。1人称単数形の重要性がお分かり頂けると思います。
この様に、「幹母音(語根母音)変化」「-go型」を把握する事で大抵の不規則動詞の活用も見当がつく・・・これがスペイン語動詞がフランス語・イタリア語よりも「まだ」学習しやすいと言われる所以です。
取り敢えず、不定形とともに1人称単数(-go終わりかどうかを判断)と2人称単数(語根母音変化かどうかを判断)もセットで覚えてしまう事が結局は近道の様です。
不規則パターンを2つとも持つvenirは確かに不規則性が高いですし、ser(英be)やir(英go)の様に2つの不規則パターン以上の不規則性の有る動詞も若干数は有ります。でも、何とかなりそうな気がしませんか?