甜茶
○甜茶
甜の文字の意味は、「甜い・旨い」であり、甜茶は文字通り甘いのであるが、それは味覚だけ出なく、甘い言葉というときの甘さのニュアンスも込められているという。その甜茶には、牛白藤(アカネ科)、土常山(ユキノシタ科)、多穂石柯葉(ブナ科)の3種類があることが中薬大辞典に記載されているが、最近わが国で優れた特性が注目されている甜茶は、そのいずれとも異なるバラ科キイチゴ族の甜葉懸鈎子という植物である。
この正式名称は日中共同の「日本と中国南部の常緑広葉樹林構成植物の化学分類学的細胞分類学的比較研究(1994年)」において確定された。
甜葉懸鈎子は、葉柄に刺を持つ高さ2~3mの潅木で中国南西部の広西壮族自治区の山岳地にのみ産し、特に瑤族の人々に愛され、桂林では開胃茶とも呼ばれて食欲増進、去痰、咳止め、解熱に効くとされてきたもので、「中国本草図録」、「広西薬用植物名録」などにその記載がある。
わが国への招来当初は”肥満しない甘味料”として、砂糖の75倍にもなる甘み成分(本来の化学名はルブソシド)が注目され、酵素反応によりさらに味質と甘味度を改良する方法が研究される一方、日常的な新しい健康茶としての飲み方の工夫やエキス化も実現したが、開発の過程で抗炎症作用、抗アレルギー効果、ミネラルバランスの良さ(ナトリウムに比してカリウムが圧倒的に多く、カルシウム、マグネシウムの含有量が多い)などが次々に見つかった。
すでに多くの基礎研究、臨床試験が報告されているが、目覚しいものとして抗炎症、抗アレルギー効果があげられよう。くしゃみ・鼻水・鼻づまり、嗅覚障害、目のかゆみや涙目などで毎シーズン話題を呼ぶ花粉症もそのひとつであるが、三重大学医学部の鵜飼幸太郎らは喉の異常を含めたこれら諸症状に通念的に苦しんでいる患者を対象に、甜茶エキス飴(1粒に40mg、1日3粒)を投与して、4週間の全般改善では著名改善を含む中等以上の改善47.6%、軽度以上の改善76.2%という好結果を得ている。投与全平均1日5.3回だったくしゃみ発作回数が、2週間後4.1回、4週間後3.3回になったという数字は、患者にとって福音であろう。
アレルギー反応は、体内の肥満細胞(マスト細胞)から分泌されるヒスタミンが引き金となるI型アレルギーの例が多いが、このことを逆に利用して甜茶の活性成分(ヒスタミンの分泌抑制成分)がGOD型エラジタンニンのポリマーであることも明らかにされた。
そのほか、難治性の湿疹やアトピー性皮膚炎などへの効用(起炎物質の生成抑制)や、ダイエットに冠してデンプンの消化酵素であるα-アミラーゼの働きを阻害したり、脂肪分解酵素リパーゼの働きを阻害することで肥満を防ぐ作用のあること、あるいは歯周病の原因菌が歯に付着するのを強くブロックする(歯周病や口臭を防ぐ)作用なども報告され、広範な需要に応えてそれらの働きを相乗的に高める食材をブレンドした製品も市場に出ている。
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コンドロイチン硫酸
○コンドロイチン硫酸
動物の細胞、線維、組織、器官の間を結び付けて、それらの支持、保護、栄養補給の役目をする組織を結合組織といい、その主要成分はムコ多糖体と呼ばれる粘性物質(ネバネバ成分)であるが、コンドロイチン硫酸はその重要な構成成分のひとつで、骨の形成、傷の治癒、感染防止(免疫体の産生)などの生理作用を持つ物質である。
19世紀半ばに動物の軟骨の研究から発見された物質にコンドロイチン(軟骨という意味のギリシャ)という名が与えられたあと、ようやく1946年になってその化学構造が決定されたが、その薬理作用については早くから注目が集まり、すでに1936年には偏頭痛、抗潰瘍の薬剤として臨床実験が行われたという古い歴史を持っている。
コンドロイチン硫酸は、体内ではタンパク質と結びついたコンドロムコ蛋白という形で、主に皮膚、血管壁、軟骨、人体、関節、眼球、角膜、粘液、各臓器などに分布して、後述のような様々な働きをする。しかし、若い成長期には体内でも生合成されるのであるが、加齢とともに産生されなくなり、欠乏症を招いたり、例えば皮膚の保水性や潤滑性が失われて老人性の皺やカサカサ肌の原因となったりするので、どうしても外部から補給しなくてはならないのである。
コンドロイチン硫酸の体内における生理作用としては、1,線維(コラーゲン、エラスチン)や細胞群とともに結合組織を構成し、体細胞が正常に生存できる基盤となる、2,組織に保水性、潤滑性、弾力性を与え、栄養分の消化吸収・運搬・新陳代謝を促進する、3,カルシウムの代謝に深く関与して、骨の成長、骨折の回復、骨粗しょう症の防止する、4,傷ついた皮膚や組織の参照を補修する、5,血液中のコレステロールや過酸化脂質を除去し(脂血清澄作用)、動脈硬化や高血圧を予防する、6,関節軟骨の成分の27~43%も占めて、関節・靭帯・腱の弾力性、円滑性を保つ、7,皮膚のみずみずしさ、若々しさを向上させる、8,目の角膜や水晶体の透明性や弾力性を保持する、9,細胞の増殖を促進し、精子を増殖する(造精作用)、などがあげられ、こうした作用が実証されていく過程で、コンドロイチン硫酸は動脈硬化、解毒、代謝異常、腎疾患、難聴、炎症などへの薬理効果が次々に明らかにされ、わが国でもすでに腎炎、ネフローゼ、リウマチ、神経痛、腰痛、五十肩、肩こり、夜尿症、眼疾患、脱毛症などを適応症とする医薬品に用いられている。
一般の食物として植物性、動物性を問わずネバネバしたもの、例えば納豆、山芋、オクラ、なめこ、海草、フカひれ、ツバメの巣、スッポンなどに若干含まれており、植物性よりも動物性のほうが体内の効率は高いのであるが、いずれにせよ含有量がそれほど多いわけではない。そこでこの優れた機能性を誰もが日常的に享受して、老化防止や健康の維持回復を図りやすくした健康食品も各種開発されており、原料にはサメの軟骨、牛の軟骨が用いられている。
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エキナセア
○エキナセア
エキナセア(エキナケア、エヒナセアとも呼ばれる)は、北アメリカ平原一帯に分布するキク科の多年草植物で、和名をムラサキバレンギクという。夏から秋にかけて紫色の美しい花を咲かせ、観賞用ハーブとしても人気が高い。
ネイティブ・アメリカンの間では古くから薬草としてつかられてきた歴史があり、根の部分を噛んで風邪の予防や歯痛・喉の痛みを治したり、石ですりつぶして液上にしたものを傷・火傷の外用薬として用いてきた。19世紀末になって、その薬効は医療関係者にも広く知られるようになり、20世紀初頭にはアメリカの医者が最も良く購入する薬草にまでなった。
エキナセアはヨーロッパで知られるようになったのは1895年頃で、ドイツの科学者が自国へ持ち帰り、ヨーロッパでの栽培が始まってからである。その後、ミュンヘン大学などが中心になって臨床研究を実施、経験的に知られていた風邪やインフルエンザなど感染症の予防と治療、抗菌性などから、気管支炎、尿路感染症、疝痛、浮腫、鼻粘膜の乾燥、アレルギーなどに対する作用、免疫力賦活作用、抗バクテリア、抗ウイルス作用(抗生物質作用)、抗炎症作用などが認知された。
含有成分の分析も早くから行われており、今日では、エキナセアの有効成分としてシコリック酸(多糖類)、アルカミド(ドデカ四酸イソブチルアミド)、ポリサッカロイド、フラボノイド、グリコプロティン、コーヒー酸などが同定されている。特に免疫促進作剤としての可能性に焦点を当てた成分研究では、ミュンヘン大学薬学部のH・ワグナーらによって、エキナセアに含まれるフコガラクトキシログルカンと酸性アラビノガラクタンの2の多糖が、好中球やマクロファージなどの免疫細胞を活性化させ、免疫応答物質として知られるインターロイキンなどの産生を促進することが報告されている。
現在、エキナセアはドイツで最も人気のあるメディカルハーブとして、280種類を超える関連製品が作られている。ドイツではハーブから抽出した成分が規格に定める量含まれる製品をフィト(植物性)医薬品と呼び、適応症に対する効能が認められているが、エキナセアのエキスやチンキ製剤は風邪やインフルエンザ、感染症の緩和と予防に、また、細胞の免疫力を促進し安定させる非特異的免疫作用促進剤として感染症の治療にも使われている。エキナセアの軟膏は、傷やただれ、湿疹や火傷、日焼けなど炎症性の皮膚疾患に良く使われている。
エキナセアは原産国アメリカでの人気も高く、ハーブ市場では風邪予防や免疫力向上に有効なハーブとして売り上げトップの位置を維持している。最近は、わが国でもメディカルハーブとしての地歩を固めてきており、1997年にはH・ワグナーが来日し、日本薬学会で特別講演を行っている。
フィト医薬品は品種やエキスの抽出法によって効果が大きく異なるため、ドイツでは成分含有量の厳格な規格化が行われているが、エキナセアについても1990年代に規格化の検討が開始され、97年には一連の検討結果が公表されている。
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