男性Aは自分の部下である入社2年目の男性Bのファッションが派手であり、そのことを何度注意しても男性Bが就業規則を盾にして直そうとしないことで悩んでいる。
男性Bは常に営業成績がトップだが、その男性Bの所為で社内での服装の乱れが目立ち始めてきた。これを危惧した男性Aは「服装の乱れは生活の乱れを生むことになるからスーツをきちんと着ろ!」と言うも男性Bは「どんなファッションをしようと個人の自由だ。」と反論する。
果たして、会社は個性的なファッションを禁止出来るか?
北村弁護士の見解:禁止出来る
「これは禁止できます。会社の上司は、業務について部下に対して、指揮命令監督権を持っています。どういう命令をするかについては、会社の上司は広い裁量権を持っています。本件では、仕事の内容は営業です。営業っていうのは何が一番大事かって言うと、初対面で排除されないことが一番営業大事なんですよね。みんなが平均的に営業ができなければ、会社の業績が下がってしまう。つまり、平均点を上げなければいけないというのが、上司の使命なんですね。となった時にはやっぱり他の人達に悪い影響を与えているということは、これを禁止する十分な合理性がありますから、問題ない、ということです。」
大渕弁護士の見解:禁止出来る
「はい。一律に従業員全ての服装を規制するというのはやりすぎだと思いますけれども、接客をする営業職に限って、そのような派手な服装を禁止するというのは必要かつ合理的であり、相当な範囲内というふうに考えられます。」
北村・本村弁護士の見解は合理的。北村弁護士が指摘している通り、本件は営業職であり、営業において最も重要なことは「初対面で排除されないこと」や「数字を上げること」などである。社内だけで済むならまだしも社外の人達とも仕事をしていかなければならないとなれば、ある程度は服装について規制を強める必要性も高くなる。そういう意味において派手なファッションを禁止する必要性や合理性は極めて高いと考えられる。再三再四注意していると言うこともあって場合によっては減給程度の懲戒処分も有り得るだろう。
菊地弁護士の見解:禁止出来ない
「まず最初にですね、就業規則には常識の範囲内、これかなり幅が広いです。で、文房具メーカーっていうことになると扱っている商品もカラフルですしね、個性がそこで認められてよろしいと。しかも彼は営業成績が常にトップできたと。つまり、何かに支障があるから困るんだとはもう言えないんです。」
本村弁護士の見解:禁止出来ない
「はい、これはもう簡単な話で、スーツを着てもらいたいのであればちゃんと会社の規則を作って決めればいいんですよ。で、過去に実際に起きた裁判を紹介しますね。例えば、社員が口ひげを生やして出勤した。あるいは髪の毛を黄色に染めて出勤した。いずれのケースでも会社がその社員を解雇しました。しかし裁判の結果、会社側がいずれも敗訴しています。」
菊地・本村弁護士の見解は基本的には合理的ではあるが、今回の相談者が所属している部署が営業ということもあるので、それを踏まえると少しVTRの状況を甘く見ている感が否めない。しかし、それを理由に解雇することは流石に無理だろう。営業成績も常にトップであることを考えると、この男性Bは会社にとってはなくてはならない存在になっていくことは間違いないだろう。また、時代の流れと共に服装ももっと個性的なファッションが認められる時代も来るだろう。しかし、現時点ではそういうことを認めない世代の人間がいる以上、自分の個性と社会の趨勢を上手く天秤に掛けて自分がどう行動していくべきかを常に考える必要があるだろう。