NHK講座の英語に変化?:~ sucks は留保付き | DVD放浪記

NHK講座の英語に変化?:~ sucks は留保付き

今年のNHKラジオの語学講座「中高生の基礎英語 in English」の英文スキットに接してちょっと面白く感じたところがあった。

 

 

 

 

 

 

最近の英語教科書の内容など私の知るところではないし、私が見聞きする英語教材の量などわずかなものだけれど、学生向け英語教材の会話スキットには暗黙の枠組みが感じられるような気がしている。たとえば兄弟姉妹なら、勤勉なAに対してグズグズしがちでややルーズなBといった対照的なキャラのあいだで会話が交わされながらも、最終的には穏当な方向で話が落ち着くといったパターンである。

 

「中高生の基礎英語 in English」の第1週の会話でもそのパターンが踏襲されているのだけれど、特にBの役まわりのキャラが従来より若干色濃く描かれているように感じられたのだ。

 

“悪ガキ” とまではいわずとも、“文句をブーたれる” なかに(昨年にはあまり見かけなかったと思う)、俗語っぽい Meh. とか、Humph! といった、強めの間投詞、感嘆詞の類いがさし挟まれることで、どこかリアルさが増したような気がするのだ。

 

 

 

 

人気講座として知られる「ラジオ英会話」にも、おやおやと思うところがあった。~ sucks. という表現が登場していたのである。

 

 

 

 

ロックコンサートの会場に遅れてきたため、大のお気に入りの曲の演奏が終わってしまっていたことを知った男性が “That really sucks!” と嘆く場面である。

 

その昔、“Disco sucks!” というフレーズについて、英語教材としては絶対に許せないと主張した中年のアメリカ人男性がいた。たまたま居合わせた、やはりアメリカ人の(推定30代?)女性は「私はかまわないと思う」という。

 

私は、「英語学習者としてみずから使うことは避けるとして、何が話されているのか理解するうえでは、知識として知っておいて悪いことはないのではないか」と思ったのだが、その中年男性(敬虔なクリスチャンだった)は納得しなかった。

 

それはもう何十年も前の話で、さすがに今日では英語母語話者のあいだでもひろく許容されるようになった表現なのかと思ったのだが、番組内でも大西講師は以下のように注意を促していた。

 

“That really sucks!” (笑い)ひどい表現が来ましたね。もちろんね、使っちゃいけないというわけではないんですが、目上の人とかご両親の前で使うといやがられる表現のひとつですね。

 

テキスト上では、“That really sucks!” に「がっかりした」という訳が当てられ、訳注でも suck は単に「最悪である」と記されているだけなので、万一この回の放送を聴き逃したり、大西センセイの補足説明をいいかげんに聞き流していると、不適切な場で使ってしまいかねないだろう。

 

では、なぜそんな “要取り扱い注意” 表現を教材内に導入したのだろうか? 大西講師たっての願いでというよりは、大のロックファンが失望落胆した状況で吐くフレーズとしてはこれが自然だと英文作成担当者が考えたのだろうと私は妄想するのだ。

 

 

今年NHKの英語学習講座では、より “日常” に近づいた英文素材を提供していくことになるのだろうか?

 

 

以上、春の夜に見た夢である。(^^;

 

 

 


“Disco sucks!” でもうひとつ思い出すのは、アンディ・ウィアー『火星の人』である。興味のある方は、以下をご覧ください。

なんでSF小説が?